40話 テイムと空間
-----(大島視点)-----
俺たち一行は本営へ向けて救助に向かう途中で思わぬ足止めをくらった。大量の魔虫と魔獣に襲われたのだ。
しかしスライムの活躍で魔虫は退ける事に成功し、さらに魔獣のテイムにも成功した。
魔獣はコアラとパンダを掛け合わせたような獣だった。テイムしたコアラパンダは牙と爪は必要に応じて出したりしまったり出来るみたいだ。
全部で8体。かなりの戦力だ。
これから向かう予定の本営まで、危険な森を静かに進んで3日。
だが、仏間を引いて行くとなると大音響を轟かせて森を進む事になり、さっきのように上空から襲われる事になる。
そんなタイミングで魔獣のテイムに成功した。しかも8体だ。
「このまま予定通り森を進んで行きましょう」
絹田3佐の指示に自衛官達が一気に動き出す。
救助した被災者と自衛官、それから今の戦いで負傷した自衛官は仏間の空いた空間へと入ってもらう。
狭いと口にする者はいない。旅館に宿泊するわけではないのだ、充分な広さだ。
ミニバンには運転席と助手席に自衛官が乗っている。エンジンがかかるわけではないので、ただ座っているだけだ。
後部座席には長谷川さんとチャイルドシートにおさまったお子さんだ。
空間スキルの持ち主である長谷川さんが車内に乗っている。では、バンはどうやって動かすのか。
今までは長谷川さんが引いていた。
今は、桜さんと小菊さんが引いている。
桜さんは、最初にテイムした割と大きめのコアラパンダ。小菊さんは、その後にテイムした少し小型のコアラパンダだ。
「えっ、嘘、マジ? えええ! あんなんアリなんだぁ。俺もテイムすればよかったぁぁぁ」
隣で清みんが大騒ぎをしている。
まさか、テイムした魔獣に空間スキルを引かせる事が出来るなんて、誰も思いつかなかった。
「ポヨンさん達は? 仏間引いてくれるんじゃないか?」
「何言ってんの! ポヨン君達はちぃサイズだからダメ。無理させて身体が千切れたら大変じゃん。仏間が引けるもっと大きな魔獣、ゾウとかマンモスとか出たら、今度は頑張ってテイムする!!!」
あれほどビビリまくってたくせに、本当かぁ? まぁ、頑張れ。
時に自衛官のコアラパンダ6体のうち、一体は仏間の後ろを守って貰っている。
残りは仏間の前方で巨大な爪を出し、自衛官が引いていた持ち手に爪かけて5体で引いている。
ただ、残念ながら清みんのテイム魔獣ではないので、魔獣だけでは仏間を動かせなかった。
正確にはうまく伝わらなかった。もう少し軽い物体を魔獣一体が引くぶんには、力任せに引いて行ける。
だが複数の魔獣で動かす場合は少しでも魔獣同士の方向に差異が出た場合、途端に動かなくなる。それが空間スキルの物体ではなく普通の物体だった場合、2体で物体を引き裂くイメージだ。仏間は空間スキルの防御力があるので避けたり千切れたりはしないが、空間はそこに鎮座してしまう。
今までどおり、清みんが外で触れている必要があり、従って清みんは仏間へは入れず、外を歩くしかない。
仏間を運んでいた自衛官達はだいぶ楽になった。
清みんは何度もミニバンを見ながら「いいないいな」を繰り返していた。
さすがにマンモスは木に登らないと思うし、仮に登ったとしてもマンモスが落ちてきたら仏間も潰れるんじゃないか? とは言わないでおく。
「休憩ー」
絹田3佐がこまめに休憩を挟んでいる。清みんを気遣ってだな。
「3佐……休憩の時にポヨン君たちを自由にしていいですか?」
「かまいませんが、30分休憩なので出発までにお戻りいただけますか?」
「清みん、ポヨンさんはどうやって時間を知るんだ?」
時計など持ってるわけないが、つい聞いてしまった。
「あ、そっか。どのくらいの範囲まで俺の声が聞こえるかな」
「かなり離れても大丈夫かと思われます。あの遺跡地下2階でミノタウルス的な魔物に襲われた時、ポヨンさん以外もかなり離れた場所から飛んでこられましたよ?」
「そうなの? ふうん」
「清みん、何かしたいんだ? ポヨンさんの自由行動? 食事か?」
「それもある。持ってきた食事だと少ないから適当に食べてきてほしいのと、あと、出来れば進行方向にいるやつをなるべく食べちゃってほしい」
「なるほど! それは有り難いです」
「絹田3佐、それなら進行方向が直線になる前に休憩をとる事にしてはどうですか?」
「そうですね。とりあえずこの先は真っ直ぐなので清見君に指示を出してもらいましょうか。あちら方面の敵を倒しておいていただけると進みやすいです」
「わかった。あ、ポヨン君は一緒にいて。次は交代にするね。他はあっち方面でご飯食べてきてえええええ」
清みんがどちらへ向かうでもなく大きな声で叫ぶと仏間の屋根から木の上の枝へと飛んで行く幾つかの姿が見えた。
実際は見えてはいない。シュっと残影のような音だけ。
絹田3佐はスライム持ちの自衛官にも指示を出していた。
「パンパンはどうしましょうか」
パンパン……きっとテイムしたコアラパンダ魔獣の名前だろうな。清みんより酷くないか? あの自衛官、命名センスがマイナスだな。強く生きろよ、パンパン。
「……パンパン、か? この近辺での自由行動で」
「はい! パンパン、呼ぶまで近場で何か食ってろ」
グアース
今のは……返事か?
パンダもコアラも、のそっとした動きしか見た事がなかったから、てっきりコアラパンダもそうだと思ったが、素早く木を登り移動していった。そうだった、元から上にいたもんな。
もうひとりの自衛官は5体テイムしたので、一体はここらの防衛として残して、他は散っていった。
本当に戻ってくるのか?そもそもスキルに『テイム』はないんだよな?
『友達になったけどお昼ご飯だから帰るね、バイバイ』だったら、もう戻ってこないんじゃないか?
30分休憩が終わった。
ちゃんと戻ってきた。『テイム』の謎は深まるばかりだな。




