34話 避難民を救助しつつ
-----(大島視点)-----
「他の避難所は?」
「はい。本営の向こう側になりますが、小さいのが幾つかあります」
遠いなぁ。徒歩3日。
その先にも細かい避難所が幾つか。救援物資を配るのもひと苦労だな。
絹田3佐は何かを考え込んでいるようだった。
そして決意をした顔でこちらを振り返った。
「ここで18名、先の避難所で5名、合計23名を連れて本営へ向かいましょう。範囲が広すぎる。気軽に何度も回れる距離ではない。効率よく救助を進めたい。そのためにも大島君、清見君の協力が必要です」
俺の協力はさほど大した事は出来ないが清みんの協力は必須だな。仏間があれば怪我人5名と子供3名を乗せて移動出来る。
3佐は清みんに協力を仰ぐために部下を仏間へ走らせようとしたが止めた。
「3佐、清みんに聞かなくても答えはYESですよ」
あの子供好き清みんがNOというわけがない。3佐は杉田さんらにここの自衛官と民間人に話をするように伝えた。
もちろん移動の話だ。
「あ、お母さんには車を持っていってもらいます?」
「そうですね。動くわけではないが、いや、掴めば動くか」
「再生特典で使える物があるかもしれませんからね」
そうしてあっという間に移動準備がなされた。
自衛隊が大勢いる、自分らと同じような避難民も大勢いる、そして水も食糧もある、何より危険な生物から身を守り休める場所がある、そんな避難場所があるなら今すぐに移動したいと思わないわけがない。
お母さんには、自衛官が赤ちゃんを預かり車を移動するやり方を伝授していた。
移動準備を終えた避難民達も興味津々で見ていた。
車を持って大きな岩を越えるのにはかなり苦労した。どうしても地球の常識に縛られて『出来ない』という思いで手を離してしまう。自衛官が手伝って何とか大岩を抜ける事ができた。
大きな岩が重なる地帯を抜けた先、避難民達はそこに居た大勢の自衛官に驚き、さらには、ドンと置かれた和室(仏間)に驚いていた。
そこから次の救助先へ。
母親はミニバンを運ばないとならない。清みんと並んで進む。清みんの仏間には赤ん坊が転げないように座っている。
車の中にあったチャイルドシートを外して仏間に持ち込み転げないように柱に固定した。母親が見えるように前側の柱に座っている。
清みんは右手で、母親は清みんの横で左手でミニバンを掴んで運んでいる。どちらも自衛官の補助付きだ。
中学生ふたりは寝転がって肘をついた状態で仏間から外を見ている。
9人の民間人は栄養失調で弱っては居たが、母親が車を引いて歩くのを見て皆自分の足で歩いている。時々交代で仏間に上がる。中学生達も途中から自分で歩き出した。
あっと言う間に次の避難所に到着した。
避難所、ではない。
石に寄りかかり地面に座っている人達。
清みんと少年達は仏間の裏側に居てもらう。少年は清みんのスライムを見て大騒ぎだ。
その間に自衛官が5人の状態を診た。自衛官の中に救急救命士の有資格者が居たそうだ。かなり酷いが荷物の中に病院から預かってきた点滴や痛み止めがあったのでとりあえずの処置だそうだ。
5人は仏間の奥に寝かされた。
ここから本営まで徒歩3日だ。重くなった仏間の前後を自衛隊員達がフォローする。前から引き、後ろから押す。
徒歩だけでも1日10時間はけっこうな重労働だ。それが3日。
夜はなるべく仏間へ入るがさすがに自衛官40名、俺、清みん、杉田、乃木、怪我人5名、民間人13名、自衛官5名。無理だな。
仏間は怪我人5名、親子と少年2名だ。物資もあるのでそれでいっぱいいっぱいだ。救助した民間人も畳の上で寝かせてあげたいが狭すぎた。とにかく子供、負傷者、女性を優先で夜を仏間で休ませる。
「仏間の持ち主である清見君には本当に申し訳ない」
「いえ、別に大丈夫ですよ」
「清見君は大島君のボックス内で夜を過ごしてほしい」
そうだな、何かある前に俺の防御内なら安心だ。
「はい。あ、大島氏、ここちょっと掘ってもらえる? ボックスとジャストサイズで。そしたら寝返りしてもはみ出ないだろ。頭のとこ少しだけ高くして、枕っぽく」
はいはい、畏まりましたよー。他の奴ら、そんなに見ててもやってやらんぞ。
自衛官達は3佐の命令で仏間の荷物が置いてある畳をはがして地面に置いた。きっと明日には畳が生えているはずだ。
「増えた畳はどうするんです? これ以上積めませんよね」
「勿体無いが置いて行きましょう。何かの際に通りがかった時にまだあったら持って行けば良い」
「あの……押入れの中でも寝られるのではないですか?」
杉田さんが3佐へとおずおずと進言した。杉田さんらは清みんちの押入れマジックをまだ知らないからな。
出発前に不要と出した荷物だが、いつ復活するかわからないからな。迂闊に押入れで寝ると潰され危険もあるかもしれん。
「一応出した物は仏間が戻るまで触れないように申し付けてありますが、何かの弾みで傷がつかないともかぎらない。しばらくは夜間はカラにします。防災用食糧の押入れは特に。それは必ず復活しますから」
ああ、なるほど。防災用の食糧が入っていた押入れの襖には貼り紙がしてあるな。『毎朝復活 防災水・食糧』
清みんは仏壇のテープを剥がして、小さな茶碗に水を入れて供えてから両手を合わせていた。
そうか、朝晩やってると言ってた。それを見た数名の救助者も仏壇に手を合わせていた。




