32話 スキルの特性
-----(大島視点)-----
流石は自衛官、清みんが立ち上がる間に皆がスタンバイしていた。清みんが、持ちやすいように作られた取手を掴んだ。
「清みん、ゆっくりでいいから、引っ張って進んでみて」
「ふぁ……い」
「あ、力まなくていいぞ。重くない仏間を持つイメージで」
「うん……? うん」
「すみません、皆さん。お願いします」
仏間がスムーズに動き始めた。
「え? あ、動く……ね」
仏間の中に自衛官を入れても仏間は動いた。
もちろん清みんひとりでは無理だ。60キロないとは言え、清みんには引きずって進むのは厳しい。
だが、自衛官達が仏間の前から引いている。
「なるほど、そうですか」
絹田3佐は完全に理解したようだ。
言い出しっぺであった清みんはポカンとしている。
「空間スキル持ちは、自分の所持する空間を持って移動出来る。清みんは重さは感じないと言ってただろ?」
「うん……」
「そのスキル持ちがソレを持っている間は、ソレ及びその中の物は重さが無になる。しかしソレに人間は含まれない。人間の重さは無にならないんだ。だから人が中にいる、屋根に乗ると清みんにはその重さが運べなかった」
「けれど、清見君には運べない隊員の重量も、我々自衛隊にとっては軽い荷物です。清見君には重くない仏間でも我々には運べませんがそこに乗った重量分を一緒に引く事は出来る。出来た、と言う事だ」
自衛官達もざわざわと、だが嬉しそうな表情だった。
「60キロ無い上村を俺ら10人が引いたんだ。ひとりあたり5〜6キロ。軽いもんだ」
「つまり、空間スキルの空間内に人間が居ても、運べる事がハッキリしましたね」
「そうだな。清みん、それわかってたのか? だから1番軽い人に乗ってほしいって言ったの?」
「あー、うん、なんか、動きそうな気がして。でも重くて無理だったけど。まさか手伝ってもらえると動くとは思わなかった。大島氏凄いなぁ」
空間スキルのチート機能がまたひとつ増えた。
空間スキルの特性。
①セーフティゾーン。魔獣、魔虫が入ってこない。
どの程度の強さまでその『セーフ』が適用されるのかはまだ不明。
②深夜0時に再生される物資がある。
いつまで再生してくれるのかは不明。
③空間内の物資が破損した場合、転移時と同様の物が新規で発現する。
これもいつまで、もしくはどのくらいかは不明。
④人が運べる。ただし、その重量を引けるのが条件。スキル持ち本人でなく他の者の補助可能。
俺のスキルは完全防御で自分ひとりだけが助かるスキルだ。もちろん「箱型」の特典としてその中に入った者は守られるが、狭い上にはみ出やすい。意外と使い勝手が良くない。
物理攻撃や体力などのスキルも、本人のみ有効のスキルだ。
あの日、地球に(日本に?)何かが起こり、何者かの手により俺たちはこの世界へと転移した。
俺たちにスキルをくれたのはその『何者か』なのだろうか?
転移した世界はそのスキルでは耐えられないくらい厳しい世界だった。いや、厳しい世界だからこそスキルが必要なのだろう。
ただ、『空間スキル』は、その『何者か』とは別な気がする。
空間スキルはスクロールガチャで選んだわけでなくいつの間にか持っていたと言っていた。
それも今のところ幼い子供とセットだ。
そう、空間スキル所持者は子供とセットだったんだ。空間スキルの特性を考えても、子供を守り生かすためとしか思えない。
何となくだが、子供達が育った時、その時には空間スキルが消滅する気がする。
「交代で乗って、引いていこうぜ」
「いいな、何キロまで引けるか、何人乗る?」
「隊長、訓練も兼ねて重めに引きましょうよ」
「あの、あのっ! 重くするのやめて!」
清みんが珍しく大きな声を上げた。涙目だけどな。
「大丈夫です! 清見さんは手を添えているだけで」
そうは言うが見ると仏間の中では自衛官が畳に寝転がっていた。
「ずるい……」
清みんが小さな声で抗議をしていた。
仏間を掴んだ清みんを背負った自衛官が森を進む。
仏間のこちら側には10人ほどが仏間を掴み引いている。後方では10人仏間を押している。仏間の中には10人が居る。そして周り警戒する10名。
周りを警戒しているのは精鋭の前衛職だ。彼ら以外の30名は30分ずつ3交代で『前引き』『後ろ押し』『中休み』をローテしていた。
ちなみに清みんを背負っているのは体力スキル持ちだった。俺はその横を歩いている。もちろん自分の足だ。
ポヨンさんは清みんの花笠の上。他の3体のスライムは仏間の屋根にいる。魔虫を見かけると飛んでいってるようだ。隊員のスライムも2体、屋根に出ている。
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陽が出てからあそこを出発して6時間、思ったより早くに最初の避難所(救助先)へと到着した。
俺たちの『ニッポン』の地上部から森を突っ切り9時間ほどの距離。途中忘れ物(仏間)を取りに戻ったので、野宿になり日を跨いだ。
そこへ着く少し前から木が減り始めて岩場が増えていった。俺が最初に居た荒地の岩版みたいだ。
結構大きな岩がそこかしこにある。スライムが居そうだ。岩の陰とかに隠れるのが好きそうだもんな。隊長や皆へ注意を促した。
岩が増えてくる。足場が平らでないと仏間が進みづらい。
足場が石ばかりになると仏間から全員が降りた。なるべく平らそうな場所を進むが、流石に前進が難しくなる。
「ここから先は仏間は難しいですね」
「杉田さん、避難所はまだ遠いのですか?」
3佐が杉田さんに問いかけた。
「いえ、もうすぐです。あの大きな割れ岩の……」
「杉田さん、あそこ!」
杉田さんが指差した先と同じ方向を見ていた乃木さんが、杉田さんの言葉を遮り叫んだ。
「ほら、あそこ! おぉーい、ここだ! おーい! 戻ったぞお」
割れた大岩の向こうから幾つかの頭がひょこひょこと出てきた。




