30話 突貫
-----(清見視点)-----
仏間の畳の上で気を失っていたのか(寝てただけ)、目を覚ますと誰かにふくらはぎを揉まれていた。
うおっ、自衛官に脚をマッサージされていた。
仏間には自衛官達が下から運んできた荷物を重ねたり固定をしたりしていた。
「清見さん、持ち上がるか確かめてみていただけますか?」
「あ、うん。わかった」
勢いよく立ち上がったつもりがちょっとヨロけた。あ、けれどマッサージをしてもらったおかげか脚が軽く感じた。
仏間の障子を開けた端っこの柱にグルグルと布が巻きつけてある。取手のように掴める部分も作ってくれたようだ。
そこを掴んで持ち上げてみる。特に重くは無い。
「あちらへ進んでみてください。高さを調節しますね」
「あ、はい」
なるほど、持って歩いても疲れない高さか。高い部分を掴むと腕がずっと上げっぱなしなので地味にきつい。
掴んでみた。引いてみる。
柱の下の方に取手を作ってくれたので腕を下げて引っ張れる。
「上にも持ち手は作ってありますので、腕を下げているのに疲れたら上を持ってください」
凄いなぁ。いたせり尽せりだ。
荷物は襖や障子にぶつかって飛び出さないように布団で包んで押入れや畳を外した床板に固定したそうだ。
まぁ、ガラスや障子は破っても翌朝には復活するからな。(それは検証済みだ。傷だけでなく障子ガラスのガラスの部分を1枚割ってみた。復活していた)
いつの間にか兄貴も上にきていたみたいで俺の出発を再び見送ってくれた。
「気をつけて行ってこい。ちゃん戻ってこいよ?」
そっか、暫く留守になるんだった。本営まで何日か聞いてなかったな。
日が暮れた森、夜間の移動は初めてだ。
しかし、置いてきた人らも気になるので俺らは森を進んだ。
大島氏の右に仏間を持った俺、その後ろに護衛がひとり、仏間に手を添えている。大島氏の左には灯りと地図を持った護衛がいる。
俺の頭の花笠にはポヨン君が、背中のリュックにはふるふるさんとぷるん君とパミュンちゃんが居る。
真夜中の森を、ドドドドと木々を薙ぎ倒して進む仏間(と、俺たち)。まぁ、目立つよね。
ギエェェェとか、ギャオースとか、聞いた事のない声が何度も聞こえる。怖い怖い怖い。見えなくて良かった。
大島氏のボックスに体当たりをしているようだが、大島氏は気にせず突き進む。
なんか、仏間の上でも何かの雄叫びがする。
仏間の上に魔獣だか魔虫だかが落ちてきているんだろうなぁ。
嫌だなぁ、虫がいっぱいいたら。
そう思っていたら背中からパミュンちゃん達が飛び出して行った。自衛官がライトを仏間の上に向けた。
「凄いですねぇ。パミュンさん達が魔虫と戦っています。戦って、と言うより瞬殺かなぁ。スライム、敵にまわしたくねぇ」
ちょっと前に花笠からポヨン君を下ろして左手でずっと胸に抱いていた。
「ポヨン君、ポヨン君は一緒にいて。お願い。……ふるふるさん達、大丈夫かなぁ。無理しないで戻ってきて」
「全然無理してないっぽいですね」
俺の背後の護衛の自衛官も上へライトを当てていた。俺は見ない。
「仏間の中に人が居たら動かせないが、もしかしてスライムは大丈夫なのか? 仏間の上に乗ったまま今動かせているからな」
「そうですね。スライムやこの世界の魔物は別なのでしょうかね」
「俺たち人間はどうなんでしょう? 中はダメでしたが上も試しましたか?」
「あ、いや、上は試してない」
「案外上ならいけたりして」
ええ、それって、みんなは乗っていけるけど俺だけ歩いて引っ張るって事か?
ひどい…………。人力車ならぬ人力仏間。
てかそれ、俺が奴隷みたいじゃん。いつもは感謝している自衛隊の人だが、今ちょっとだけ恨んだ。




