3話 俺たちの迷宮
-----(清見視点)-----
俺は明日は遺跡へ戻る。これ以上長居をしたら、あっちに置いてきた仏間が消えてしまうかもしれないからだ。
数人の自衛隊員を残して3佐らも一旦戻るらしい。
「すみません。本当はもっとしっかり、デスエや迷宮を回りたいですよね? 俺ひとりで、…………誰かについてきてもらえれば、先に戻りますよ」
先にひとりで戻ると言いかけたけど、ひとりは無理だな。うん。
「いや、すまん。ついあれもこれもと見たい場所が増えてしまって。しかし仏間が消えては一大事です。我々も一旦戻ります。今回持ち帰った件も早急に色々と話を詰めないといけない」
明日、帰国が決まった。いや、別に海外旅行に来てたわけではないし、こちらに本格的に来る事は決まっているのだ。
でも、遺跡から徒歩で街へ、そこでダイソナーを借りて、デスエまで走り通して到着。
仏間、大丈夫か? 行きに1日、中3日観光、帰りに1日………。やばいな。5日間留守にしている。
帰ったら仏間、消えてるんじゃないか?
いや、消えはしない。スキルが消えるだけ。そしたら多分だが、防災グッズの再生が失くなる。
畳とか布団とかの傷をつけての再生も無くなる。
でも、別によくない? 無くなっても、失くなっても、良くない?
何も無かった転移の当初は、物が再生してくれてありがたかった。おかげで生き延びる事も出来た。とても役に立った。
でも今、新しい住まいになる場所を見つけ、助けてくれそうな街もあり、みんなで頑張れば生きていけそうなんだよ。デスエの宿屋の食堂も美味しかった。
仏間の空間スキルが消えても、大丈夫な気がする。
仏間よ、今まで俺たちを守ってくれてありがとう。
…………あ、でも、一応?まだ有るか確認しておこう。ふん!
スキルあった。よし。帰路の途中でも確認するけど、無くなっても落ち込まないぞ?
仏間自体は消えない。仏壇も親父達のお位牌も残ってるはず。うちの分の畳は確保しよう。
それに他の空間スキル持ちのスキルが消えなければ、思い出の日本食はまだ食べられるしな。うんうん。
そうして俺らは遺跡へ向かいダイソナーを走らせた。行きよりスピード速くない?
3佐、そんな、気をつかってくれなくても……。
猛スピードで走り続け、途中のトイレタイム以外はノンストップだった。昼食も走り続けるダイソナーの上で摂る。無理だった。揺れるし身体は後ろに傾くし食べれる状態ではない。
日が暮れて(いや、地下だけどね)、ようやく野宿可能なセーフゾーンに止まる、街を経由せずにダイソナーで遺跡まで戻る道はちょっと遠回りになるそうだ。
うん、狭いとこあったもんな。遺跡から街までの通路で狭い洞窟が続く場所が幾つもあった。そこを通らないための遠回りだそうだ。
俺の乗ったダイソナーの名前はツィエラだそうだ。文字で書く、頭でイメージするとツィエラだが、口から出るとチェラだ。
「チェラ。お疲れ様。重かったし疲れただろ?」
隊員が水や餌を与える傍らで、硬い背中をなでる。俺らが座っていた座具も取り外される。
鱗みたいな皮で覆われているが、座具が擦れて傷んだように見える箇所もある。そこをコシコシと擦る。
「回復回復………」
キュゥゥ
あ、今、可愛いい声で鳴かなかったか?
擦れたとこに触ったから痛かったのかな?少しだけ手のひらを浮かせてから、手のひらから何かが出るイメージで回復を続けた。(何が出てるか聞かれても困るが)
ツィエラは目をつむっているので、痛くはないのかな?他のダイソナーも寄ってきた。待って、順番ね。
ただ、日中は物凄いスピードで振り落とされないようにしていたので疲れた。眠い。皆は色々話していたが聞いていられないくらい眠い。
「清見君、先に休んでください」
そう言われるが、皆はダイソナーを操縦したり、俺の背後で俺をささえたりと俺よりもっと疲れているはず。
大丈夫、俺だってちゃんと……。
「俺らの迷宮は深度100メートルですか」
へぇ。100メー………。
「なるほど、それでだいたい100と……」
ん〜? へー……。
「デスエとは10階層で? どちらも?…………」
「そのあたりが通路を繋げやすいらしい…………」
「……………ヒンイーンと……そうですか………」
ヒン……?なんだっけ?…………そうです?……。
「清みん、もう寝ろ」
「そうです。明日は早い。もう休んでください」
「うん……うん。まだ……」
結局気がついたら寝ていた。みんなより早く寝てしまい遅く起きるとは、本当に情けない。
今日は一気に遺跡まで突っ走るそうだ。
俺はチェラを撫でた。
「今日もお願いね」
あ、そうだ! スキルチェック。
よっし、まだある。空間スキル仏間。




