29話 戻る
-----(清見視点)-----
「仏間持ってくる?」
言ってしまったあああああ。
仏間を持ち歩けばスキルが消える心配もしなくて済む。遠方でも日数を気にせず救助に向かえる。
が、持っていけるのか? 歩きながらずっと持っていられるのか? また皆の足枷になるぞ、そんなせめぎ合いが心の中で起こっていたが口からはスルンと出てしまった。
3佐や大島氏が無言で俺を見つめた。なんかわからないけど首を縦に振っておいた。
すると突然、絹田3佐が腰を90度にまげて頭を下げた。
え? 何で?何で? なんかわからないけどやめて。
理由は不明だけど、俺たちだってみんな自衛隊には毎日お世話になってる。こっちこそ頭を下げないとだよな。
「清みん。空間スキルは人が乗ると持ち上がらないって言ってただろ? それ、人じゃなければ大丈夫か?」
大島氏に聞かれた。けど、どう言う意味だ?
「つまり、荷物はどれだけ積んでも持ち上がる?」
「あー、どうだろう? 気にして試した事はなかったなぁ。畳とか布団を積み込んでも問題なく移動できたけど、他の荷物はどうだろう。ニッポンへ向かう時って何を積んでたかなぁ……」
「救援物資を仏間で積んで運べるか、試さないか?」
「おお!」
「なるほど」
近場で話を聞いていた自衛官達から一斉に声が上がった。
荷物を背負った30名とそれを守る10名の自衛官達。
もしも荷物を仏間に乗せていけるのなら、40名全員が攻撃と防御の両方に回れる。
いや、そんな恐ろしい行程は嫌ですけどね。
現在は出発して徒歩3時間あたりの場所に居る。ここから一番近い避難所まではまだ徒歩7時間はあるそうだ。
そこまで行きそこで一泊して仏間を取りに戻るか、それとも今戻るか。
今でしょう。
今なら戻るのに3時間。
ここまで3時間、ニッポンに戻るのに3時間、仏間持ってここまで3時間。合計約10時間か……。
だが、ここから7時間の救助先まで歩いて、そこで一泊出来たとしても、10時間かけて仏間を取りに戻ってさらに10時間かけて戻ってくる。いや、日が暮れる。それに無理。
「今戻る。すぐ戻る」
即答した。しかし3時間が短く思える昨今……。人間って慣れるものなんだな。
「全員で一度引き返すのですか?」
「全員で戻るのも森を騒がせて魔虫を呼び寄せやすくなる」
魔虫……最近は呼び方を統一しているっぽい。虫系を魔虫、獣系を魔獣、地球で見た事のない姿形のやつは魔物、かな?
「少し安全なところまで戻って待機はどうですか?」
「なるべく細い木が多い場所、魔虫のサイズが小さめのあたりですね」
「それだと、ここから30〜40分ほど戻ったあたりか」
「そうですね。荷物隊と護衛7、それと自分はそこに待機します。護衛2と大島君は清見君を連れて仏間を取りに戻ってください」
3佐や隊員達、大島氏の話からどうするかが決まったようだ。
俺は大島氏と自衛官ふたりの計4人で仏間を取りに戻るようだ。その前に全員で安全性の高い細い樹木地帯まで戻った。
皆はそのままそこに待機で、俺たち4人はニッポンへと引き返す。
大島氏のボックスに入り、最短ルートを突っ切るのだ。少人数だとそれが出来るのは助かる。
とは言え既に4時間近く歩いた後の俺が出せるスピードなんてたかが知れている。
またしても足引っ張りになってしまった。
けど、昨年までの部屋から出なかった頃に比べたら断トツの運動量なんだよ、俺にとっては。
「ふーふーはぁはぁ」
「大丈夫か? 清みん」
「ふーふーはぁ」
「少し休憩をいれますか?」
「ふぅ、はーは」
「どっちだよ」
「ふはん」
「いらん?」
「ふんふん、はー」
俺らがニッポンの地上部、仏間やら他の建物がある場所へと辿り着いた時には他の建物から物資は地下へと運び出されて空っぽの建物が並んでいただけだった。
俺はそこで倒れるように転がった。
自衛官らは休まず地下へと石段を下って行くのが見えた。
自衛隊凄すぎる。彼らにも休憩をぉぉ……。




