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俺たちYOEEEEEE?のに異世界の迷宮に居るっぽい  作者: くまの香


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25話 要救助者、発見?

 -----(清見視点)-----


 とにかくそのふたりの男性にはキチママさんが暖かい食事を振舞っていた。


 泣きながら鼻水を滂沱のように垂らしながら出された食事を口に入れてはまた声をあげて泣き、を繰り返した。

 見ていて苦しかった。いや、見てるだけで苦しいなんて烏滸がましいか。



 俺にとってのこの異世界転移は、仲間やスキルのおかげで辛い事は少なかった。

 だけどこの人達は本当に大変だったのだろう。


 前に大島氏達の話を聞いた時もそうだが、空間スキル、しかも食糧付きが無いと本当に厳しい異世界転移だ。

 ゲームで言うと俺は『イージーモード』を用意されていただが、『ハードモード』しか選べなかった人はたくさんいただろう。


 突然顔にタオルを押し当てられた。



「もぅ〜、清見くんは直ぐにナーバスが伝染しちゃうんだから。ほら拭いて」



 そう言いながらキチママさんにタオルでゴシゴシと顔を擦られた。タオルに付いた湿り気と粘りで自分も泣いていたのに気がついた。

 ばかばかばか! 俺は泣いていい立場じゃないぞ。キチママさんのタオルに顔をグイグイ擦り付けた。



「な、ないでない、でず……」


「うんうん、そうね。泣いていないわね」



 キチママさんが俺の頭を撫でた。

 ちょっ、まなちゃんと同じ扱い! まなちゃんは4歳、俺は27歳だぞ。


 俺があやされている間に、下から3佐らが上がってきた。


 キッチンでは狭いので、仏間で話を聞くことになった。

 仏間以外はいつもどおりの物資移動の作業を始めた。


 皆が毎朝の作業を行う中、仏間では3佐の他、本部から来た数人の自衛官と、謎の避難民ふたりとの話が始まった。

 俺と大島氏は仏壇の近くで聞き耳を立てていた。あ、大島氏も来たんだ。




 話を聞いて驚いた。いや、そこまで驚いてはいない。だいたい想像はついていた。

 森のあちこちにまだ生き残りが居る事が発覚した。俺らだってこんなに大勢で生き残っていたんだ。他にも居ても不思議じゃない。


 そう言えば俺らが引っ越してきた『ニッポン』の真上の森はまだ探索が行われていない。

 まだまだ引越し作業や街づくりに追われているからな。


 彼らも木の太さと危険が関わっている事に気がつき、魔物を避けながら移動しつつ数箇所に被災者が集まっているそうだ。


 俺らのように何かの建物を見つけては、そこを中心に避難所を作り何とか生き残ってきたそうだ。

 残念ながら再生するような食糧系はなかったそうだ。

 恐らくその建物の持ち主、つまり空間スキル持ちがどこか他所へ移動してしまったか何かだろう。


 空間スキルが消えても空間は残る。しかしチートであった食糧の再生は起こらない。

 建物の残骸としてそこにあるだけだ。とは言え、電車の車両やバス、何かの部屋は避難所としては重宝する。


 聞けば、職場の託児ルームだった場所もあったそうだ。



「託児ルーム! お子さんや親御さんはおられたのですか?」


「ええ、幼い子が数名、それと保育士も。ですが会社が無くなったとかなんとか……」


「ああ、その部屋だけ来たケースですね」



 自衛官が現在知りうる情報を掻い摘んで話して聞かせた。


 彼らは結構な範囲で少数ずつ分かれて転移してきた建物(残骸)を拠点にグループを作っているらしい。

 もちろんそれぞれの拠点には自衛隊や消防などが居てお互いに連絡を取り合っていたそうだ。


 そうして何とか生き残ってきた。

 しかし水と食糧問題。水は、見つけた水場が遠くてもそこまで汲みに毎日往復していた。


 しかし食べ物は中々入手出来ず、餓死者も出ていた。小さい魔物(虫)を何とか倒しても食べられない場合(食べたら死んだ)もあった。草や木の実で今まで生きてきたそうだが、そろそろヤバイと感じていた。


 なので、民間人であった彼らも『何か』を探しに出たそうだ。



「ここは夢のようで……地球に戻れたと思いました」


「いや、俺たちは実はもう死んだんじゃないか?」


「そうだな。でも、それでもいいや。もう辛い我慢しなくてい……」



 わぁぁぁん、うわぁぁぁぁん。

 ダメだ、俺が泣いちゃダメだ。毎日ご飯食べれて布団で寝てた俺が泣いちゃダメだああああ。


 どうしても我慢が出来ず、仏壇前に突っ伏して泣いてしまった。


 大島氏が背中をさすっているのがわかった。キチママさんが頭を撫でているのもわかった。



「ごめっ、ごっ、ごべん、なさいっ」


「うんうん。大丈夫。清みんは普通に生きているだけだ。何も悪いことはない。謝らないでいいと思うぞ」


「そうよぉ。十分頑張っているわよ」


「でもっ、でも」


「逆に自分らが助かったのは、清見くんのおかげでもありますよ。空間スキルの事、物の再生、スライム。清見くんがいなければ我らは早々に詰んでいましたよ」


「そうだよ。清みん。俺だってパツパツだったよ。清みんに会って仏間に来れてよかったぞ?」



 顔を上げると仏間に居た全員が俺を見ていた。

 しまった! 泣いてるとこ見られた。恥ずかしい。

 押入れ、押入れに入りたい。


 そう思った時、大島氏に腕を掴まれ立ち上がらされて押入れへと連れていかれた。

 はぁ、落ち着く。そこ(押入れの中)でまた皆の話を聞いた。


 今度はこちらの自衛官がこの世界の話、地下都市の話をした。



「何だってぇぇぇ!!」


「乃木さん! 俺ら、俺ら助かりますね!」


「あぁ……頑張って生きてきて、良かった」



 あの人達の泣き声が聞こえた。

 けど、今度は嬉し泣きの気がする。押入れの中からは見えなかったけど。

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