24話 あの日の避難民
-----(誰視点?)-----
「……きろ、起きろ! 杉田さんっ、杉田さん、起きてくれっ!」
乃木さんに揺さぶられて目が覚めた。
昨日は久しぶりに熟睡をしてしまったようだ。
ちゃんとした壁や屋根があり、何かに怯える事なく手足を伸ばして眠れるので安心しきってしまったようだ。
水を飲みすぎたせいで夜中に一度トイレに起きたが、トイレがある事もあんなに嬉しいとは。
俺はまだ幸せの余韻に浸ってしたが、乃木さんから揺さぶられてハッと我に返った。
「おはようございます、乃木さん」
「おはようって、それどころじゃない! 杉田さん、見てくれて」
乃木さんが俺の顔に押し付けたものからいい匂いが漂ってきた。
良い匂い、揚げ物の匂い! 甘辛いタレの匂い!
押し付けられた物は弁当だった。プラの蓋から見える中身はフライの入った海苔弁かっ!
「ど、どうしたんですか、これ」
「そこにあった。ほら、他にも」
そう言って乃木さんは胡座をかいた俺の膝にサンドイッチや菓子パンを投げて乗せた。
「棚見てくれ、棚にも色々ある。寝る前は無かったよな。棚は確かにカラだった。いつ誰が置いたんだ?」
驚いた。昨日寝る前は確かにガランとして何も無かった小部屋の棚は、食べ物だけでなく色々なものがキチンと並べられていた。
そして部屋の奥にあったカートには弁当やらパンやお菓子が並んでいた。
「誰か来たのか? 何で起こしてくれなかったんだ? 気が付かなかった。夜中トイレに行った時は……どうだったか」
「私も熟睡していて誰かが来たのも気が付かなかったです」
「もしかして他の建物に居ないか?」
大急ぎで部屋から出て病院から外へとまわる。
畳の無かった部屋の前を通りかかった時、昨日開け放したままだった障子から部屋の中が見えた。
部屋には畳がきちんと敷き詰められていた。
昨日は気が付かなかったが部屋の隅には仏壇もあった。仏壇は昨日もあった気がする。
畳の上に上がり込み、慌てて靴を脱いだ。
畳に寝転がると自然涙が溢れてきた。
当たり前の日常を思い出した。
この世界に来てから思い出さないようにしていた家族の顔が浮かんでくる。
隣で乃木さんも泣き出していた。
嬉しさと悲しさが混ざりぐちゃぐちゃの気分だった。弱音を吐かずにずっと溜めていた何かが溢れてしまった。
ふたりで畳にボタボタと涙と鼻水を落として泣き続けた。
「お取り込み中……申し訳ありません、あの、どちら様でしょう」
-----(清見視点)-----
びっくりした、びっくりした、びっくりした。うちの仏間に知らない人がいた。
荷物の運び出しにと、ひと足先に仏間に向かった自衛官が大声をあげた。
魔虫か魔獣でも出たのかと慌てて仏間に向かった。
仏間の前に立つ自衛官の背後から中を覗くと、そこに男性がふたり、畳の上に突っ伏して大声で泣いていた。
え、どうした?
もしかして、昨日戻れなくなった人かな? ここに泊まったの?
石段封鎖されて焦ったのかな?
でも封鎖って言っても紐をかけてるだけだから戻ろうと思ったら戻れるよね?
あ、人に見られずに泣きたくなって昨日はここで過ごしたのか?
そうだよね、家族を思い出してこっそり泣きたい時ってあるよね。
声をかけずにそっとしておいた方がよかったのではとも思ったけど、自衛隊の方も作業があるからね。
そうもいってられなくて声をかけた。
びっくりした、びっくりした、びっくりした。
何と、このふたり、外から来た避難民だって!
自衛官がひとり、本部へと知らせに石段へと走っていった。
こっちも驚いたけど、このふたりも驚いていた。しかも他にもまだまだ要救助者がいるんだって。
ママさん達も集まって来た。




