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23話 転移②

 -----(誰視点?)-----


 謎の森で避難生活が始まった。


 服は洗濯も出来ず汚れる一方、その中身である自分達も風呂など入っていないのだから服の汚れなぞ気にならない。

 まるで原始人のように草や獣肉を食べる日々。


 自衛官が2人亡くなった。獣を獲る時に負った怪我が原因らしい。

 地面を掘って埋められた。俺たちも手を合わせた。


 俺達は獣を獲ることは出来ないが、探索には出ている。危険な動物や虫が居ないか、他の救助者が居ないか。


 そのうち救助が来る、なんて夢は見なくなった。



 安全な地帯はおおよそ探索し尽くした。

 あの危険な森に少しだけ入り進む事になった。


 なるべく例の虫が居なそうな所を進む。ちょっとずつ迂回しながら進んでいたが、1日で行ける距離は限られる。自衛官に断って、泊まりがけで出てみる事にした。



 バスの運転手も同行してくれた。

 日が暮れる前に身を隠せる場所を探して一晩すごした。無事に朝を迎えられて良かった。




 さらに進んで行く。

 たまに木の上の方にあの虫を見かけるが、静かに進めばなんとかやりすごせた。



 半日くらい進んだだろうか。

 変な道に出た。


 そう、道に出た。

 今までは森でも草原でも『道』はなかった。


 車もバスも動かないし、『道』らしきものは全く無かったのだ。

 この世界には人は住んでいないのかもしれないと思い始めていた。



 しかし、森の中、木が薙ぎ倒された広い『道』が突然現れたのだ。


 『道』と言うにはあまりに広すぎる木々が倒された場所。

 ただそれは向こう方からずっと続き、あちらへと向かっている、まるで巨大な『道』。


 まさかと思うが、あの虫とは比べ物にならないくらい巨大な何か、ゴジラとかガメラのようなモノが通った跡じゃないよな。

 もしそうなら危険すぎる。



「杉田さん、杉田さん」


 バスの運転手に声をかけられた。


「どうしました? 乃木さん」


「これ、鉄じゃないかな。何かの破片。擦れているけどアルファベットと数字がみえる」



 木の根に引っかかったように刺さっていた10cmほどの大きさの金属片には確かにアルファベットと数字があった。



「森を……開墾でもしてるんですかね」


「行ってみますか」



 そうして恐る恐るではあるがその横広の道の隅を、道なりに進んで行った。





「なんだ…………こりゃあ……」


「ですね。いや、その、うん、何だここ」



 広い道なりに進むともっと広い場所に出た。森を切り開いたかのように、さっきの道よりも綺麗に木々が無くなっている。


 その中心に幾つかの建物があった。



 この世界に来てから初めて見た建物、その建物は日本の建物にも似ていた。



「あれ、飛行機の胴体じゃないか? あの鉄片はあれから落ちたのか。飛行機がここに不時着したのか?」


「着陸……ですかね? 翼はほぼ無いしコックピットも尾翼があるはずの尻の部分もないですよ」


「あっちって学校かな。それと、あ、デカいのに目がいってたけどさ、家っぽいのもある」


「家の一部? みたいのもありますね。誰か住んでいるかな」


「そうだ! そうだよ! こんなに集まってるんだから住んでいるよ。俺たちみたいに救助を待ってる人がさ」



 俺らはお互いの顔見合わせて慌ててその建物の方へと走った。


 1番近い場所にあった建物は部屋だった。屋根も何も無いただの部屋。

 障子を開けるとどうやら和室のようで奥に押入れが見えた。

 しかし床の畳は剥がしたようで板が見えていた。


 人は居ない。


 期待しただけにガッカリ感も半端なかったが、なんとなくそんな気はしていた。


 大きな建物があるわりに人の声が全くしなかったからだ。


 恐る恐る上がり込む。

 押入れを開けたが中はカラだった。押入れではない襖の先は外になっていて、そこにも何かの建物があった。



「乃木さん、こっちはなんでしょうね」



 ドアがあったので開けてみるとマンションの一室のようだ。キッチンだろうか? しかしやはり荷物は一切なかった。

 だたガランとした、そう、引っ越した後の部屋のような感じだ。



「杉田さん、驚いた……水道が出ますよ」



 何だって! 水道が生きているって事か。それは住んでいたって事だよな。

 乃木さんが水道をジャーっと出して手や顔を洗っていた。そしてゴクゴクと飲みだした。



「うまい! 水道の水だ!」



 俺も慌ててシンクへと周り手を洗ってから水をゴクゴク飲んだ。


 この世界へ来てからこんなに水分を思いっきり飲んだのは初めてだ。

 普段は自衛官さんらが遠くの川から水を汲んでくてくれてそれを火で沸かして飲んでいた。だから少ししか飲めなかった。


 俺が水を飲んでいる間に乃木さんは部屋を物色していた。



「パントリーもあるが、やはり何もはいっていないですね。ここに住んでいた人はどこに行ったんでしょうね」


「そうですね。水が飲めるこんないい場所を残してとは」


「救助されたんですかね。ここに救助がきたのか。一度救助が来ちゃった場所はもう来ないですかね。水があるからみんなでこっちに越してきた方がいいと思うんですよ」


「そうですね。屋根もあるし。一度戻って自衛隊の人たちに相談しましょう」


「その前に、他の建物も見ておきましょう。もしかして食べ物も見つかるかも」



 建物は残り3つあった。どれも中は空っぽだった。


 ひとつは何と保育園。それから飛行機の胴体、そして1番大きいのは病院だった。


 これだけ建物があれば皆で来ても十分なスペースがある。


 今日は遅いから病院に泊まる事にした。廊下に自販機があったが中はカラっぽだった。残念。


 俺たちは病院の倉庫のような部屋に泊まった。

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