20話 迷宮に?
-----(大島視点)-----
俺たちの身体測定ともかく、組合員の話は進む。
1番気になっていた『ドロップ』についてだ。
迷宮内は魔物が出た場所に鉱石がある事が多いそうだ。1割の確率だそうだ。また魔物自体がスキル石を体内に所蔵している事もある。それもまた1割。
肉、骨、角、牙など魔物自体が使える場合は倒した魔物を運び出す仕事もあるそうだ。放置すると一定時間後には洞窟に吸収されてしまうそうだ。
因みにスキル石だが、長い期間魔力を溜め込んだ魔物ほどレアなスキル石を出す。だがそれは倒すのも一苦労。
スキル石は持ち帰り一定時間置かないとスキルの内容が現れない。なので不要なスキル石でも持ち帰る事になるそうだ。そしてゴミ迷宮へ捨てられる。
この都市の周りにはまだ未踏破の迷宮がいくつもある。迷宮はある日突然発生して踏破しないと増えていく。
怖いな。安穏とした生活は送れないって事か? だって常にダンジョン……迷宮を踏破し続けないとならないだろう?
この世界は地上には出られず地下で生活をしている。だが地下こそが未だ発展しつつある大迷宮じゃないか。
つまり人々は迷宮内に街を作り住んでいるようなもの。
自衛隊員達はさっそく迷宮の浅い階層でレベル上げをしていくそうだ。『レベル』と言う概念もないが、翻訳が難しい『何か』は成長していくらしい。
「試しに一度潜ってみませんか?」
これは組合員ではなく自衛隊員からの進言だ。俺に向けてではなく清みんに向けて放たれた言葉だ。
俺は前にちょこっと覗かせてもらったし、自衛官達も様子見で足を踏み入れている。とは言え今いる自衛官全員ではない。入った事がない者もいて彼らは目を輝かせている。
清みんはダンジョンを恐れているのか即答せずに悩んでいる。しかし、地上であれだけバリバリに動いているのだから迷宮の魔物なんて小物じゃないか?
「ポヨンさんは連れてきてるんだろ?」
頷く清みん。
都市の人が怖がる困るので街に入ってからは花笠から背中の小さなリュックへと移動させていたようだ。
「…………行って、みよ、かな」
俯いてはいたが期待満面な表情をしていたのを俺は見逃さなかった。
異世界ファンタジー好きが、異世界でダンジョンに入らないなんて事はない。しかもポヨンさんと言う最強護衛付きだ。一応俺(完全防御)も居るしな。
冒険者組合で準備をして迷宮へと向かう。俺と清みんは武器はいらない。後衛だから。念の為のアーマー(革製)を着せてもらった。
ダイソナーに乗り街中を通り抜ける。途中の道標に『フォソーン』と書かれた方面へと向かう。
現在踏破中の若い迷宮でフォソーンと呼ばれているらしい。
「ふお、ほ、ほそぉん、ほすぉーん」
清みんが頑張って発音をマスターしようとしていた。ホソンでいいと思うぞ?
「ねぇねぇ大島氏、武器はともかくさ、回復薬とかポーションは欲しいよね。ギルドで売ってたのかな?」
ギルド? 冒険者組合の事か。どうだろな。あそこ、買取窓口みたいのはあった気がするが、販売窓口はあったかな?
「ほら、俺さ、回復魔法……まだまだじゃん? あ、一応消毒液と絆創膏は持ってきてる」
「……消毒液ってどこから取ってきたんだよ」
「あ、病院で貰った。よく飴くれる怖そうな美人看護師長さんにデスエに行くって言ったら持って行きなさいって、くれた」
あー……看護師長な。清みん、可愛がられてるよなぁ。羨ましいようなそうでないような。あのくらいの年配女性をオバサン呼ばわりしないところが清みんが可愛がられる所以かもな。
「戻ったら組合でポーションの事を聞いておこうぜ。異世界ファンタジーには必須だからな」
「だよね、だよねー」




