19話 迷宮とランク
-----(大島視点)-----
迷宮……まだ踏破されていない生きている迷宮について色々と話を聞いた。
階層が深くなるほどに『強い魔物が出る』わけではないそうだ。
倒されなかった魔物は地の魔力を吸い続けて成長するそうだ。なので都市と繋がっている通路のある階層、だいたい10階層あたりは冒険者も頻繁に出入りするので魔物も幼くて弱い。魔物が発生してもすぐに倒されるからな。
「地下8〜12階層が冒険者で賑わっていますね。それより上か下へ行かれるならかなり慣れてからをお勧めします」
「冒険者ランクで入れる階層とか決まってないの?」
俺の背後から清みんが顔を覗かせる。
「そう言えば俺達は冒険者になりたてなのでランクも底辺ですよね?」
「俺ら何ランクなの? FとかGとか……」
説明をしてくれていた冒険者組合の人が不思議そうな顔になった。
「えふ……とか、じーですか? 冒険者にランクはありません。強さで言えば、初心者とかプロ、アマチュア、中堅などと言います。ですがランク付けは行っておりません」
そうなのか。
そう言えば石版で表示されたステータスにもランクやレベルは載っていなかったな。
「あ、じゃあ俺達は初心者冒険者なんだ。ん?者がダブってるな。初心冒険者……冒険初心者……どっちで呼ばれるんだろう」
「呼ばれませんよ? 聞かれた時に答える事はあるでしょうが、期間で答えていらっしゃる方がほとんどですね。12階層にひと月潜ってる、とか」
確かにそうだな。日本でも『自分は◯◯建設レベル3です』とか『◯◯銀行ランク2です』と名乗るやつはいなかった。
『◯◯銀行入社2年目です』とか答えるよな。
俺達ちょっとファンタジー小説に染まりすぎだ。反省。
清みんを見るとぶつぶつ言いながら考え事をしていた。と思ったら鼻息荒くのたまった。
「俺は冒険者は趣味を目指す!」
すまん。冒険者の趣味ランクがよくわからん。後でゆっくりと確認しよう。まぁ俺もプロ冒険者になるつもりはないからな。清みんと一緒に『趣味』を極めるのもいいな。
「あれ? じゃあ魔物は? 冒険者にランクが無いなら魔物にもランクやレベルは無いの?」
清みんの言葉に俺含む自衛隊員たちもはっと息を飲んだ。
「ええ、ありません。同じ種類の魔物でも強さはピンからキリまでいます」
「この世界でもピンキリって言葉あるんだ。ピンとキリってどっちがどっちだっけ?てか、ピンって何だ?」清みんが小さく呟いた。
え、そっち?
いや、似た言葉に自動翻訳されているだけだから。『ピン』も『キリ』ないぞ?ないよな?思わず気が逸れたが自衛隊員の次の言葉に我に返った。
「つまり、同じ魔物でも強さはそれぞれ。実際に戦うまで強さが測れないと言う事でしょうか」
それ……は、かなりまずくないか? 弱いと思って近づいたらメチャクチャ強い事もあるんだよな?
「そうですねぇ。地下10階層で見た魔物と同じ魔物を地下15階層で見かけても突っ込んでいかない事をお勧めします。上もですが、同じ魔物が6階層にいたとしたら我らなら撤退しますね。魔物は放置されるほどに地の魔力を吸い成長します。見た目の成長ではなく強さの成長です。あなた方もこの先、◯◯が成長しても見た目はかわらないでしょう? それと同じです」
何だ?
聞き取れ無かった。
力……とか、コアとかそんなイメージの言葉だ。
清みんを見てもポカンとしているので聞き取れなかったのだろうと思ったら叫び出した。
「えっえっ、何が成長するの? そんで何が成長しないの? もしかして俺の身長が2mくらいになるのか? ああ!だから外の魔物が巨大化してるのかぁ!」
見た目は変わらないって言ったよな?
地上にいると巨大化するのか? 俺たちこの世界に来てしばらく地上にいたから実は地球にいた時より巨大化してたのか? まわりの虫がデカすぎて気が付かなかった。
「いえ、地上の魔物はまた別の影響を受けています」
冒険者組合員は笑って俺たちを流したが、その別な影響って何だ……俺たちがそれを受けていないと断言出来るのだろうか。
「ニッポン街へ戻ったら国民全員身体測定を行いましょう!」
自衛隊員達も慌てていた。
次回、俺たちが巨大化した件




