18話 冒険者組合
-----(大島視点)-----
「登録だけなら……」
罠にかかった清みんを連れて、デスエへ。
ここニッポンからデスエは通路を徒歩で1時間もあれば着く。
「車とか無いのかなぁ」
清みんの声にふと我に帰る。確かに地球に居た時は1時間の距離を『歩く』と考える事はなかった。こっちに来てからは当たり前だったので忘れていた感覚だ。特に引きこもりだった清みにはキツイ距離だよな。
「避難民の中には車で転移してきた者がおりましたが、車は動かなかったらしいです」
ガソリンもダメなのか。よくわからんな。
「せめて自転車が欲しいぃ」
「そのうち誰かが作ってくれるさ、きっと」
知らんが。
宥めつつ出発した。
迷宮『ニッポン』から都市『デスエ』までの地下通路は、まさにファンタジー小説に出てくる迷宮通路だ。清みんもキョロキョロしながら楽しそうに歩いていた。
デスエに到着した。
人が多いせいか清みんが俺か自衛官の背中に隠れて出てこない。
そう言えば引きこもりだっけ。もう引きこもりではないよな。ただの引っ込み思案だな。
けど『冒険者登録』は興味津々のようで、俺の背に引っ付いて冒険者組合まで来た。
今回来た自衛官も全員登録する事になっているらしい。洞窟の都市はちょっと想像外だったが、冒険者組合はまんまアレだった。アレ=小説や漫画で見たやつとほぼ一緒。
そんなに大きくない建物(石造り)で、中に入ると壁やテーブルは木で出来ている。壁にはよく神社で見る『絵馬』のような者がそこらにぶら下がっている。
「あれが依頼らしいです。紙じゃなくて木なのか」
「何度も使えるからじゃないか?」
うん、この世界、使い捨てに出来るほど物は溢れていない。溢れているのは迷宮から出た要らんスキル石や関係アイテムらしい。
この地下都市でも植物や果樹がなる木はあるらしいが、地上のような木材に出来るほどの木は取れないらしい。
それにしても地球人が珍しいのか俺たちは結構見られているよな。今日は変な服(清みんとこの和服)は着ていないし、髪や目の色、肌の色も似たやつは普通にいる。何が珍しいんだ?
「大島さんのスキルが話題になっているらしいですよ」
ちょっと!この世界って個人情報ダダ漏れなんかよ!
普通スキルなんて秘密中の秘密じゃないか? マジやる気なくなるわぁ。
その後に奥の部屋に案内されて全員の冒険者登録が済んだ。
小さなメダルのような物が付いた鎖を渡された。メダルが登録証だそうだ。
清みんは嬉しそうに首に下げた後、すぐに隠すように服の中へと仕舞い込んでいた。俺も。
どうせ俺のスキルはバレバレなので、冒険者組合の人に聞いてみた。
「あの、俺のスキルって珍しいんですか?」
組合の人はブンブンと頭を縦に振って話してくれた。
大昔に似たスキル(石)を手に入れた者が居たが石の取り合いが起こり、結局スキル石は不明になった。
しかもそのスキル石を出した魔物はかなり深層のボス級らしい。
うん、無理だね。
神様、これをタダでくれてありがとうございます。