16話 ママさん会議
-----(清見視点)-----
「こた君ママにも声をかけてくるわぁ」
そう言ってキチママさんがどこかへ走り去った。コタ君ママは機体持ちママさんだ。
ちょっと待って、うちでママさん井戸端? 俺ちょっと居づらいんですが。
兄貴がペットボトルの水を配りクラッカーをお茶請けに出した。
「こんなもんしかなくて申し訳ない」
「いえいえおかまいなく〜」
「すみません、いただきます」
そう、建物が無いと当然だが物もない。避難民の方々の気持ちが今更ながらにわかった。
不便だ。俺たちは畳の横の地面にブルーシートを敷いた上でお茶を(茶はない)していた。気がついて畳の上で遊ぶ子供らにもクラッカーを渡す。
「でさぁ、さっきの話だけどあの広さの石階段ならトイレくらい降ろせそうじゃない?」
「そうそう。お風呂もいけそうよね。問題は宙に浮かさないと階段を壊してしまう危険があるって事」
「うん。広さだけなら問題ないのよ。持ち上げもスキル持ちなら重さはほぼ感じないでしょ?」
「腕を下げないように自衛隊の人に補助してもらえばいいんじゃない?」
なるほどなぁ。いけるな、全然いける。だったら……。
「あの……螺旋階段って真ん中の空間がかなり広いですよね。石段と比べ物にならないくらい」
「それって!」
皆がハッとした顔をした。
「はい。階段の空間側に建物を持った手をつき出せば、大きな建物も運べるんじゃ……」
「いける、いけるわ! トイレ、バスルームだけじゃなくてキッチンも仏間も!」
「保育園はどうかしら……ちょっとギリギリのサイズね」
キチママが機体ママを連れて戻ってきた。
「何何? 何の話?」
皆が代わるがわるに説明をした。
「飛行機と病院は無理だわねぇ」
「でも飛行機って今は翼が取れちゃってるのよね。イケルんじゃない?」
「待ってください。重大な問題があります」
ママさん井戸端に果敢にも大島氏が突撃した。
「地上から地下1階層の通路、螺旋階段までの通路を建物が通るのは無理です」
あー、それがあったか。
そうだった。地下1階の螺旋階段までの通路は結構狭い場所があったんだ。
広い場所でも保育園は無理。勿論、機体も病院も無理。キッチンと仏間も厳しいぞ。
皆が意気消沈したが直ぐにママさん達は復活した。
「ねぇ、トイレとお風呂はいけるんじゃない? 狭い洞窟は掘ればいいのよ。うちのバブル君なら掘れないかしら?」
「そうよねそうよね? うちのバスグリーンちゃんにも聞いてみようかな」
そう言いながら皆が俺を見た。…………はい。
「あー……ポヨンさんにも聞いてみます。まぁ、聞かなくてもいけると思います。地上の森をバリバリいってましたから……」
「ポヨンさんは今?」
「あ、ご飯食べに外に行ってます。ふるふる君とぷるん君も一緒。ぱみゅんちゃんが残ってる」
呼ばれたと思ったぱみゅんちゃんが俺の寝床の穴からパミュンと出てきた。
「あー、まずは本部に話を通そう」
兄貴が腰を上げてうちの裏手の本部へと向かっていった。




