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13話 建物の引越し

 -----(大島視点)-----


 5日すぎたあたりから迷宮『ニッポン』に続々と人々が到着し始めた。


 そして迷宮内を住めるように、生活出来るように、最低限を整えていく。

 同時にその地上でも産院と仏間の周りの森を切り開く。


 主に産院を使い木を薙ぎ倒す。倒れた木は隊員達が力を合わせて寄せて行く。残った木の根や岩はスライム達に消化して貰う。




 いっぽう、遺跡跡地にはまだ沢山の避難民達と病人、怪我人、乳幼児、子供ら、保育園、キッチン、トイレ、風呂、機体が残っている。


 健常な避難民達は続々と地下を通り『ニッポン』へと向かい出発している。ニッポンでの作業に人手がいるからだ。


 『ニッポン』の態勢がある程度整うまで病人、怪我人、子供、乳幼児は遺跡跡地の建物内に残されたが、自衛隊や大人がかなり減った事で不安を覚える者も多かったそうだ。


 逆に『ニッポン』では人手が増えた事で、地上の産院・仏間からの荷物を螺旋階段に並んだ人達がバケツリレーの要領でどんどんと地下10階層へ降ろしていく。


 石壁で仕切られただけの迷宮に物が運び込まれると、何となく生活空間が出来上がってくる。

 居住区の区分けも出来たあたりで自衛官が最後の人達を運ぶために遺跡避難所へと向かった。


 病人、怪我人、子供、乳幼児はダイソナーの乗せられたり彼らに担がれ、背負われ、運ばれたそうだ。



 残ったのは保育園、キッチン、トイレ、バス、機体の建物と、空間スキル持ちの母親と少数の自衛官だけだ。


 建物は危険な地上を移動する。

 わかっている、俺のボックス防御が必要だ。最低でも3日間の距離。往復で6日。


 何往復必要だ?

 保育園、キッチン、トイレ、風呂、機体の5建物か。しかも保育園と機体はそれなりの大きさがある。


 最低でも3往復……18日間は必要かも知れない。


 実は話し合いで少し揉めた。産院の個室にはトイレやシャワーがある。トイレと風呂を遺跡に置いていっても良いのではと意見がでた。


 置いていけば通えな行くなるのでいずれスキルは消えるだろう。  

 持ち主もそれでもいいと言っている。ふたつを置いて行けるのなら残りは保育園、機体、キッチンの3つだ。2往復で済む。


 それでも2往復か。


 その話し合いの時に『ニッポン』の10階層に来ていた清みんが、珍しく手を挙げた。



「あの、あのさ。トイレと風呂のスキルが消えるの前提で置いて行くつもりなら……、あ、これ、独り言です。さらっと聞き流してください」


「清見君、続けてください」



3佐が先を促した。



「あの、どうせ消える、捨てていいもんなら、持って行けるとこまで持っていってダメな時に手放せばいいんじゃないかな」


「大島君のボックスに建物を持って入れるのは左右、つまり一度に2人が限度だ。しかも保育園や機体のような大物の移動なら尚更、スキル持ちが前後に並ぶのは無理だ」


「ええと、それは、危険な場所でみんながくっついて歩くなら、ですよね」


「ああ、清みんは安全地帯はバラバラに動いて危険な所だけ俺のボックスに入るって事を言ってる?」


「ですが、今回のニッポンへの地上の道のりは危険地帯が長く続く場所が何度もあります」


「18日間往復するよりは、その間その場で待っていてもらい2、2、1で危険地帯だけの往復か。確かにそれもありか」



「しかし、待つ間も危険ではないですか?」


「そこは空間スキルの持ち主だ。他の人を森で待たせるのとは違う。恐らく空間内はセーフゾーンだと思う。機体が落ちた場所もかなり危険だったがやつらは入ってはこなかった」


「なるほど、運んでいる自分の空間に入って待って貰うという事ですか」



 皆が頷く中、更に清みんが小さく手を挙げた。



「あの、あの、それと、空間持ちはスライムも居るから結構安全だと思うんです。あの、俺、ニッポンの地上で木の残ったやつとか片付けるのに仏間忘れて森に居たんですが……」



 ちょっ、清みん、危ない事すんなよ! 今ここに居るって事は無事だったんだろうけど、怖ぇなぁ。



「そんで、変な顔ゴリラな木に襲われて……」



 変な顔ゴリラで、皆がハテナ顔になり、襲われてで青くなった!



「何やってるんだ! 清見ぃ!!!」



 清みんの兄貴が大声で怒鳴った。うん、気持ちはわかります、ちゃんと叱ってください。



「あ、あ、ごめ……、あの、木だと思ったらゴリラの顔が付いてて……」



 いや、顔はどーでもいいから、そんでどうした!



「ゴリラが歯を剥き出して俺に威嚇? あれ、威嚇なのかわかんないけどガーっとかギィーとか言ったら、どこかからポヨン君が飛んで来てゴリラをノックアウトした。ポヨン君凄いです。って、違う違う、いや、ポヨン君が凄いのは違くないけど、空間スキル持ちさんがスライム連れていたらそこまで危険じゃないかも?」



 看護師長があーそうねーと納得していた。

 そうなのか? スライム持ち。羨ましい。


 清みんの進言で、5人の空間スキル持ちと俺、自衛官2名の8人で一度での移動が決まった。


 何かあった場合、建物を置いて俺を中心に8人が集まる。危険が薄い場所はそれぞれが建物を引っ張り移動する。





 これが実に功を奏した。


 スライム無双…………、いや、ママさん無双か?


 無事に『ニッポン』の地上へと5つの建物が到着した。勿論運んだ人達も無事だ。

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森の中を響き渡る地響きと破壊音 ゴリゴリバキバキぎゃー ゴリゴリバリバリどっっっすん 魔物、逃げる気がする………………本能で木から取り降りちゃった奴ら以外ww
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