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俺たちYOEEEEEE?のに異世界の迷宮に居るっぽい  作者: くまの香


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10話 建物出陣

 -----(大島視点)-----


 俺は自衛隊の人達と地上の移動ルートの探索に出かける事になった。


 ここ『遺跡避難所』から俺たちの新しい地、踏破済み迷宮『ニッポン』への地上の最短ルートを探る事と、周りの危険地帯などの地図作成だ。



 実はあの地下都市デ・スェ・ヒンイーンから乗り物を借りる話も出ていた。

 ここから近い街で借りたダイソナーだが、あの街は小さいのでダイソナーの借りっぱなしは無理という事だった。なので、返却をした。


 ただ、今後の事を考えると急ぎのやりとりをデスエとしたい時など、やはり乗り物、ダイソナーは貸して欲しい。

 デスエに行った時に3佐はそのあたりの相談もしたそうだが、断られた。


「現時点でダイソナーをお貸しするのはできません」


「現時点? 資金の関係でしょうか?」


「違います。今、あなた方がおられる場所、そしてお使いになる用途です」


「遺跡……あの場所が?」


「今回、乗ってこられたダイソナーは戻り次第、街へお返しください。あの街は小さい。移動手段がないとかなり困っていることでしょう」


「それは、知らないとは言え申し訳ない事をいたしました。ではこのデスエでダイソナーをお借りする事は出来ますか?」


「はい。あなた方がお帰りいただく時にここからダイソナーをお出ししましょう」



 俺はデスエから帰還する前夜に3佐から話を聞いて混乱した。



「すみません、ちょっとどういう事ですか? 貸してくれるんですか? ダメなんですか?」


「ああ、すまん。俺の説明が下手だったな。つまり、行きに立ち寄った小さい街で借りたダイソナーは、帰りにそこに返す。あそこも無理して貸してくれたみたいなんだ」



 ふんふん。そこまではわかる。



「でだな、帰りに同じ数のダイソナーをデスエで貸してくれる。行きはぎゅうぎゅうに乗ってきたダイソナーだが、帰りは倍の数がいるわけだ。街で借りたのとデスエで貸してくれるやつだ」



 ふんふん。ん? 貸さないって言ってなかったか?



「最初に貸せないって行ったのは、俺らがこの遺跡付近でも使用するって話をしたからなんだ。ダイソナーは基本、地下での乗り物らしい」


「どう言う事です? 地上では使えない? 明るいとダメとかですか? って地上もそこまでは明るくないですよね」


「明るさじゃなく、魔物を嫌うらしい」


「へっ? 恐竜のくせに?」


「そうなんだよ。見た目あんなに強面なのに、だ。俺らは遺跡周りの森に出る時もダイソナーに乗っていけば、魔虫や獣避けになるんじゃないかって思ったんだよ」


「なので、貸し出すは貸し出してくれるが、地下道でのみ使うのが絶対の約束だそうだ」




 って事で、借りたダイソナーは、地下道のみで遺跡とデスエの行き来に使われている。

 まぁ、この先の移転で怪我人や子供を乗せていけるし、便利ではある。


 だが結局、地上の森の探索は足での移動になるんだ。


 地下は地下で、徒歩移動で5〜6日かかる。むこうでの作業が完了してから数十人ずつの移動だと、全員の移動が済むまでに時間がかかる。


 実は今日、第一陣が出発する前に急遽決まったのだが、後発も、どんどんと出発するらしい。

 一応、2日ずつ間をあけての出発らしい。


 と言うのも、向こう『ニッポン』がここ『遺跡』と大して変わらない状況なら、待たなくてもいいのではという意見が民間人から多くあがった。


 区画整理、居住区域を決めてもらえばあとはおいおい皆で頑張ればいいのではと言う意見に賛同したそうだ。

 ライフラインを整えるわけではないんだから、それもそうだな。それなら早くに都市(デスエ)の近くに行きたいと思う人が多数出たらしい。


 うん、俺もそう思う。早く引越しを終わらせて新しい生活に馴染んだ方がいいと思う。

 デカい虫や攻撃的な獣に襲われて死んでいく人が多い中、守ってくれそうな現地民との出会い、縋りたくなる気持ちは十分わかる。



 そして、俺たちは建物を移動させるために、地上の森を足で歩いて探索しているのだ。


 建物の出発は避難民の移動が全員終わった後だ。2日おきに出発するのだから、時間がありそうでそうでもない。



 ニッポンへ向かい地上を行くにしても直線最短距離で徒歩3日はかかる。

 お試しで何度も往復出来る距離ではない。出発したらもうそのまま進むしかない。


 しかし、森の中を徒歩で進んでいると上から大量の魔虫が落ちてきて俺のボックスは完全に囲まれて進めなくなる。

 ニッポンがある方角は、今まで危険で探索をしなかった地域なんだ。



 ボックスから何とか魔虫を追い払い、遺跡へと戻る。地上を行くのは前途多難だ。

 あの中を、仏間、キッチン、トイレ、風呂、機体、保育園、産院を運ぶのか。



「大丈夫?」



 遺跡の石段に腰掛けていると清みんがやってきて俺の隣に座った。



「大丈夫? 疲れた?」


「いや、疲れてはいない。ただ、地上の森はかなりキツイな」


「そっかぁ」


「今までも結構大変だったが、ニッポンがある方向の森はデカい木も多いんだよ。樹木もかなり生い茂っている。足を踏み入れてすぐに大量の魔虫の洗礼を受ける」


「うへぇ。そんなとこを進むの嫌だなぁ。試練が多すぎだよね。ゲームのラストかと思ったらまだ序盤とか、そんなのの連続だなぁ」


「今度こそ、乗り切ればラストにゴールインだといいけど」


「だよね。あ、そうだ先にフラグ立ててへし折っとく?」


「フラグ?」


「うん、ほら。俺、ニッポンに着いたら結婚するんだ、とか」


「清みん、相手いたんだ?」


「いや、だから! 例えばだって! 俺、ニッポンに着いたら結婚するし、ニッポンに着いたら彼女に告るし、ニッポンに着いたら、ええと大金持ちになって、ニッポンで社長になって、ニッポンで美味しい物食べて、ニッポンで冒険者になって、ニッポンでラスボス倒すからね! どう? こんだけフラグ立てたら、運命もどのフラグをへし折っていいかわからないだろう! ふはははは」


「…………そうだな。ツッコミどころはあったが、確かにこれだけフラグがあったらどれが折れても問題ないな。いやでも、どうしてもツッコミたいのがあったぞ? 結婚後に告るのか? それとすでに俺らは冒険者だからな」


「あはは、まあいいじゃん。だからこれ以上はもう大変な事はないと思うよ」



 それ、フラグにならないか? と思ったが口には出さないでおく。元気付けようとしてくれている清みんの心づかいが嬉しい。



「森の探索さぁ、しなくていいんじゃない? だってどうせ進むのは決定だし。大島氏のボックスは必須になっちゃって申し訳ないけど、落ちてきた虫はポヨン君たちに食べてもらうし。俺らはもう、一心不乱に進めばいいのかなぁ。あ、方向の指示は欲しいけど」



 そうなんだよな。結局そうなるんだ。建物の移動なら危険な道、安全な道の見極めはそこまで必要ないかもしれない。


 清みんの言葉に背を押されて、現在遺跡に残っている自衛隊や空間スキル持ちと、急遽会議を開いた。



「無理なら、建物は置いていくべき」


「スライムありきで、進めるなら森を進む」



 皆もこのふたつで合意だ。『ニッポン』へ向かっている3佐達にも連絡用で残してあるダイソナーで追って伝言してもらった。

 ダイソナーで絹田3佐が戻ってきた。



「そもそも建物は個人の持ち物です。我々はその恩恵を受けているだけです。個人の裁量にお任せすべきですね。ただ、移動の際は自分も同行いたします」



 地下を避難民達が時間差でニッポンへ向けて移動するように、地上もニッポンへ向けて建物を一部移動させる事になった。



「ぶっつけ本番で、森をゴリゴリ移動させたらいいんじゃない?」



 そう言ったのは清みんだ。言い出しっぺという事で、最初の出発は清みんの仏間になった。

 ここで産院の移動を看護師長が申し出た。



「大きな物で森を突っ切りましょう。そのほうが、後に続く者がラクです。ただ、産院だけでなく仏間も一緒にお願いします。清見君はスライムを多数お持ちでしょう? やはり戦力は多いに越した事はありません」


「は、はい」



 清みんが慌てて返事をした。言い出しっぺとして緊張していたところに看護師長が同行を申し出てくれてホッとしたように見えた。



 移動の体勢としては俺の右側に看護師長、左側には清みん。勿論産院と仏間持参でだ。

 俺らの後ろに自衛官が2人。看護師長と清みを背後から守るように、と言うか狭い空間に大人5人になるな。



「こんなに早くに出発になるとは……」



 清みんが何かぶつぶつと言っていた。


 清みんは頭に花笠をかぶりその花に埋もれるようにポヨンさんが鎮座している。



「清みん、他の護衛さんは?」



 清みんは斜めがけした鞄をポンポンと叩いた。



「全員?」


「うん」


「私もですよ」



 右側から看護師長が頭を指差した。

 あれ、珍しい。看護士長がナース帽をかぶっていた。それ前からかぶってたか? と言うか最近ナース帽かぶっている看護師さんはみた事がない気がする。


 いや、そんなに頻繁に病院に出入りしていないから想像だが。



「ナースキャップをかぶるのは何年振りかしら。何年か前からうちの病院では廃止になったんですよ。でも取って置いてよかった。うちの子が入るのにちょうどいいサイズなの」



 ナース帽って謎の作りをしてるよな……。スライムどこに乗っているんだろう。清みんみたくてっぺんに鎮座ではない。


 看護師長の背後にいた絹田3佐が「ああ……」と、背後から納得をしていたが、横からは見えない。

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看護師長の頭にパイルダーオンww
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