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夜を待つ  作者: 斎藤海月
プロローグ
1/8

0.

 ――東京地方裁判所・第六刑事法廷にて。




 十一月四日。開廷時刻は午後一時三十分。

 東京地方裁判所、第六刑事法廷の周辺には報道陣が群がり、警察官が交通整理に当たっていた。

 事件の被害者が著名な元モデルの娘であり、また本人が子役であることや、容疑者が死刑囚の息子であることから、注目は全国区となっていた。

 法廷内は傍聴希望者であふれ、立ち見が出るほどの混雑ぶりだったが、事件の性質上、多くは非公開とされ、限られた関係者のみが入廷を許された。




 被告人、冬木透。十九歳。都内の大学に在籍する学生。

 彼は細身の黒いスーツを身にまとい、証言台に立った。

 彼の視線は床を向き、表情は冷静で淡々としていた。

 感情を押し殺したような声で、尋問が始まる。




「あなたは、少女を自宅の前から連れ去りましたか」


「はい」




「家族に連絡をせず、所在を隠していましたか」


「はい」




「少女を東京都内のあなたのアパートに匿っていましたね」


「はい」




「少女の体に複数の傷が確認されています。それはあなたによるものですか」


「……はい」




「あなたは、少女に対して愛情を抱いていましたか」


「はい」




「その感情は、社会通念上許されるものではなかったと理解していますか」


「はい」




「逃げずに、自ら警察に出頭したのはなぜですか」


「……わかりません」




「あなたは、自身の行為が犯罪であると認識していましたか」


「はい」




「それでも少女を手放せなかったのですか」


「はい」




 法廷内は静まり返っていた。

 被告の言葉を聞く者はただ書記官のタイピング音だけを耳にし、冷たい蛍光灯の光が揺らめいていた。

 感情の動きは一切見えず、ただ淡々とした事実の羅列が続いた。




 その少年には、懲役十年の刑罰が下された。

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― 新着の感想 ―
はじめまして。コメント失礼します。 こういった話は興味深いのでゆっくりになりますが拝読しますね。 応援しております。
あらすじを見て んっ?目の付け所が良きと読ませて頂きました。 題名が気になる題材で続きが気になります。 応援しています。
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