第7話 馬車を求めて
僕たちは、馬車を求めてハーマルの町に来ていた。
一緒に旅するパーティーを5人以上にするためだ。
例によって、頭の上に星印のついている町の人を探す。
「いたネ。あの商人ネ」
ヤオが言う。
なんか、胸に食い込んだカバンの紐がエッチだ。
そう思いながら、僕はその商人に話しかけた。
「あの、僕たち馬車が欲しいんだけど、売ってくれませんか?」
すると、その商人は答えた。
「うーん。お願いを聞いてくれたら、考えてあげるけど」
「お願い?」
「うん。ここから北にあるハヌマーン山脈を越えて、イータの町に行きたいんだけど、山脈に強いモンスターが現れてね。山を越えられずに困っているのよ。そこで、護衛をして欲しいの」
すると、リッカが言う。
「まぁ、引き受けないとストーリーが進まないしな」
「ありがとう! 私はナルマ。よろしくね。 頼まれてる商品も運ばないといけないから、この馬車で行くわよ。向こうに無事にたどり着いたら、この馬車を売ってあげる」
馬車があれば、みんなでハヌマーン山脈を越えられる。
と、そのとき、メッセージが現れた。
<戦うメンバーを4人選んでください>
すると、ジャンヌが言う。
「どういうことですの?」
「そうか。馬車があっても、外で戦えるメンバーは4人までなんだ。今は僕、ジャンヌ、リッカ、ヤオ、ナルマの5人だからね」
「誰か1人は、馬車で待機と言うことですの?」
「そうなるね」
するとジャンヌが言う。
「じゃあ、私が馬車に入りますわ。私、ずっと戦い続きですもの」
「いや、僕たちはナルマの護衛なんだから、馬車に入るのはナルマだろ」
するとナルマが言う。
「ううん。私は外でいいわ」
「え? でも」
「私、乗り物酔いするのよ」
「あ、そう」
こうして僕たちは、ハヌマーン山脈に向かった。
山脈ではモンスターが現れたものの、リッカとヤオの敵ではなかった。
僕とナルマは何もしていない。
ナルマが言う。
「すごい、頼りになるわね」
「まあな」
「チョロいアル」
「ところで、その強いモンスターはどんなヤツなの?」
「大きな鳥よ。頂上付近にいるわ」
そして頂上に近づいた。
「気をつけて。もうすぐ現れるわ」
すると、ナルマの言った通り、大きな鳥が現れた。
頭の上に<ハヌバード>と書いてある。
「ギャース!」
ハヌバードは、空中から尖った羽を打ち込んできた。
リッカは羽をかわしながら言う。
「おいおい、あの高さにいる鳥を、どうやって倒すんだ?」
「私に任せて!」
ナルマはそう言うと、カバンの中からたくさんの爆弾を取り出し、着火してハヌバードに投げつけた。
え? ナルマに任せていいなら、護衛は何のため?
すると。
ヒュルルル、ドガーン。
爆弾はハヌバードまで届かず、地面に落ちて爆発した。
「ちょっと! 何してるネ!」
「おいおい!」
ヤオとリッカの服がボロボロになっている。
「ふぐぅぅ」
ナルマの服もボロボロになっている。
もしかして。
「じゃあ、これでどう!?」
ナルマは今度はカバンからロープを取り出して、ハヌバードに投げつける。
やはり届かない。
「だから、何してるネ!」
ヤオがロープでグルグル巻きになっていた。
「はわわ」
ナルマもロープでグルグル巻きになっている。
間違いない。
ナルマはドジっ子だ。
「全く!」
ナルマのロープ攻撃をかわしていたリッカは、ダガーでヤオとナルマのロープを切る。
さらに服がボロボロになる。
「ふぁぁ!」
「リッカ、切りすぎネ!」
「贅沢言うなよ! それで、どうすんだ」
「僕の出番かな。フライダー!」
すると、僕たち4人の体が浮かび上がる。
浮遊させる補助魔法だ
ん?
ヤオの下に赤い布が落ちている。
ひょっとして。
「よっしゃ! いくぜ!」
リッカのキックがハヌバードを蹴り上げる。
「これでどう!? 銭投げ!」
ナルマが金貨を手裏剣のように投げつける。
「とどめネ! 登昇拳!」
ヤオの拳がハヌバードに直撃する。
「ギィィィア!」
<ハヌバードを倒した!>
そのとき、空中にいる、ヤオのスカートの中が見えた。
やっぱりノーパンだった。
さっき、リッカがヤオに絡まったロープを切ったときに、赤い紐パンも切れたのだ。
「きゃあああ!」
ヤオはそれに気づいたらしい。
「ヒロト! 見たネ!?」
「み、見てない見てない!」
「じゃあ、それは何アルか!」
ヤオは、大きくなった僕の股間を指差す。
「こ、これは…」
「問答無用ネ!」
ヤオが僕の股間を蹴る。
「ぐはぁぁ!」
すると、白い光がヤオの脚に移っていく。
え? そういうのもあるの?
「精脚! スペリアレッグ!」
ズドーォォン!
僕は蹴り飛ばされ、山脈の向こうに消えていった。
なので、ここから先は後から聞いた話だ。
リッカが言う。
「ちょっとやり過ぎじゃないか?」
「一応、死なない程度に手加減はしたね。それに、フライダーがあるから落下死もしないネ」
「そういう問題か?」
「ヒロトなんか放っておいて、山を越えるネ」
そのとき、ジャンヌが馬車から出てきた。
「うるさいですわね。お昼寝もできませんわ。あれ? これは何ですの?」
そこには、ナルマが投げた金貨が落ちていた。
「私の必殺技、銭投げよ」
「攻撃でお金を投げるなんて、お金持ちですわね」
「何言ってるの? あなたたちのお金よ?」
「はぁ!?」
ステータスを見ると、お金はスッカラカンになっていた。
リッカが怒鳴る。
「おい! どういうことだ!?」
「だ、だって、今は私もパーティーメンバーなんだから、当たり前でしょ!?」
「ドジっ子にもほどがあるネ!」
「馬車を買うって言ったって、これじゃ買えませんわ!」
「お前! 投げた金を返すまで、パーティーから外させないからな!」
こうして、ナルマは僕たちの仲間になったそうだ。
僕はいないけど。