第4話 盗賊との闘い
「で、この村で何をするんですの? 国王から行けと言われましたけど、何をしたら言いかは聞いていませんわ」
「大丈夫。星があるから」
「星?」
「ストーリーの進行に関係がある人の頭には、星マークがついてるんだよ。ただのモブにはついてない。昔はしらみつぶしに話かけなきゃいけなかったけど、最近はユーザーに甘いからなぁ」
「よくわかりませんけど、星ってあれですの?」
目の前で、頭の上で星がピカピカ光っている男の子が僕たちを見ていた。
「僕たちに何か用かな?」
「盗賊に盗まれた村の宝を取り戻してほしいんだ」
序盤が盗賊退治というのもテンプレだ。
「わかった。盗賊のアジトはどこにあるの?」
「村の西のほうだよ」
「よし、じゃあ僕たちが取り戻してくるよ」
こうして、僕とジャンヌは盗賊のアジトに向かった。
途中、モンスターたちが現れる。
さすがにジャンヌも、くだものナイフ1本では苦戦している。
僕もこん棒で加勢する。
こうして、盗賊のアジトに到着した。
次々とモブの盗賊が現れるが、順当に倒していく。
そしてとうとう、盗賊のボスとの闘いになる。
「ふん。ここまで来るとはな。しかしオレは倒せんぞ!」
盗賊は2本のダガーを構える。
そして、ジャンヌに斬りかかる。
「くぅ! 速い!」
盗賊は、目にもとまらぬ速さで斬撃を繰り出す。
どんどん追いつめられるジャンヌ。
「ダガー2本に対して、くだものナイフ1本では分が悪いですわ!」
「まかせろ! スピーダ!」
すると、ジャンヌの体が淡く光る。
「速度を上げる魔法だ! 10秒しかもたないから、早く!」
「たまには役に立ちますわね! いきますわよ! 疾風斬!」
ジャンヌのナイフによる斬撃は盗賊のダガー2本を吹き飛ばし、さらにマントも切り裂く。
すると、そこに現れたのは。女の子だった。
まぁ、よくある展開だけど。
「ふん、やるな。しかし宝は渡さん」
そう言うと、盗賊は何かを投げた。
すると、モクモクと煙が立ち込める。
煙玉だ。逃げる気か。
「そうはさせない。エアリア!」
今度は風圧を起こす風魔法だ。
さらに、風の刃で切り裂く。
盗賊はどこにいるかわからないので、範囲は全体に設定した。
「くっ!」
煙は吹き飛び、盗賊の姿が現れる。
ダメージは浅い。
「ちょっと! 何するんですの!」
「え?」
振り返ると、ジャンヌの服がボロボロになっていた。
というか、ジャンヌのほうがダメージが大きい。
しまった。
魔法を全範囲に指定したときに、ジャンヌまで巻き込んでしまった。
体を隠すため、ナイフを落としてしまっている。
「チャンス!」
盗賊は、ここぞとばかりに格闘術でジャンヌを攻撃する。
くそ! ならば。
「デバリア!」
敵の防御力を下げるデバフ魔法だ。
これで、ジャンヌも少しは楽になるはず。
と思っていると
「きゃああ!」
なんと、盗賊の服がどんどん減っていく。
あ、防御力を下げるって、そういう感じ?
「ひゃぁぁ」
盗賊はうずくまっている。
ピロリロテッテテッテーン♪
経験値とお金を入手し、僕はレベルが上がった。
まさか、補助魔法で決着がつくとは。
「さあ、村の宝を返してもらおうか」
「くっ! 殺せ!」
これまたベタなセリフだな。
すると。
ヒュン!
くだものナイフが飛んできた。
「ちっ! 外れましたわ」
「ななななっ! 何するんだ!」
「殺せって言いましたわ」
「ジャンヌ。こういうときは本当には殺さないんだよ」
「そうなんですの?」
「さて、どうして村の宝を盗んだりしたんだ?」
「オレは親父から、男として育てられた。一人前の盗賊になるためにな。けれど、親父は死んだ。魔王の部下に殺されたんだ。オレは盗賊団を率いることになった。それでまず手始めに、近くの村の宝を狙ったんだ」
「僕たちは、魔王を倒す旅をしている。よかったら一緒に来ないか?」
「ちょっとヒロト。何を言ってるんですの?」
「いやまぁ、なんというか、そういうもんなんだよ」
「いいのか?」
「うん。一緒に魔王を倒そう」
「わかった。オレの名前はリッカ。よろしくな」
こうして、リッカと共に村に戻り、宝物を返した。
すると子どもたちは、リッカのほうを見て言った。
「ありがとう! おねえちゃんたちが取り戻してくれたんだね!」
「ま、まあな。たいしたヤツじゃなかったよ」
いや、盗んだのお前だろ。
こうして、新たな仲間が加わったのだった。