第18話 四鬼神(シキガミ)
僕たちはイケニエさんを連れてサイガの村に戻った。
預言の書によれば、この村で出会うはずの精者は3人。
今、仲間になったのはナターシャ、ヒカルの2人。
もう1人、この村で精者に出会うはすだ。
「それにしても、ヤマタノオロチが2体いたとは驚きでござった」
「こっちには魔王軍の手下もいたしな。けっこうヤバかったぜ」
「ヒカル、他の精者に心当たりありませんの?」
「あるでござるよ」
「本当ですの?」
「先にヤマタノオロチを倒す必要があったでござるが、このメンバーなら、会えるかもでござる」
「会えるかも?」
僕は訊ねる。
「いかにも。かのものの名は、アオイ。陰陽師と呼ばれる一族の生き残りでござる」
陰陽師。
僕の世界では確か、安倍晴明が有名だ。
「アオイどのの能力は四鬼神と呼ばれる4つの神を召喚する能力。おそらく、ヤマタノオロチを1人で倒せる力の持ち主でござる」
「あいつを1人で!? だったら、なぜアオイさんに倒してもらわなかったの?」
「会ってすらもらえないからでござるよ。アオイどのに会うには、その4つの神を全て倒す必要があるでござる。それが陰陽師の一族の掟。その強力すぎる力を安易に世に出さないためでござる」
「それが、僕たちなら」
「うむ。ヤマタノオロチを倒した拙者たちなら、あるいは」
ライオがつぶやく。
「むう、陰陽師。スタディアの図書館の文献にはあったが、まさか実在するとは」
ヤオが訊ねる。
「そのアオイさんは、どこにいるネ?」
「ショウニュウの洞窟。そこに東西南北4つの入口があり、それぞれを1体の四鬼神が護っている。それぞれの入口から入り、全てを同時に倒さねばならぬ。その奥で4つの道はつながり、そこにアオイどのがいるという」
「4体同時。ということは、またパーティーを分けるがあるのか。えっと、今のメンバーは…」
僧侶のヒロトこと僕。
剣士ジャンヌ。
盗賊リッカ。
格闘家ヤオ。
商人ナルマ。
学者ライオ。
踊り子フレカ。
風水師ミリア。
銃士ナターシャ。
忍者ヒカル。
10人か。
「じゃあ、4つのパーティーに分けよう。どうするかな」
ナターシャはまた、ジャンヌと一緒がいいと駄々をこねたが、リッカからナターシャの精力発動の経緯を聞いたジャンヌが拒否した。
「許せませんわ」
「はぐぅぅ…。お姉さまぁ…」
フレカは、
「わたしぃ。人間相手じゃなければぁ、踊っても恥ずかしくないんですぅ」
とのことだった。
じゃあ、ヤマタノオロチ戦でも別に一緒である必要はなかったのか。
それに。
「わたしにぃ、いい考えがあるんですぅ。だからナルマさんと一緒がいいですぅ。え、何かって? うふふ、内緒ですぅ」
だ、そうだ。
ヤオは、ライオとヒカルのペアを提案した。
「ヒカルには悪いけど、犠牲になってもらうネ」
とのことだった。
何も知らないのに、かわいそう…。
その他、近接戦闘と、遠距離または支援系の組み合わせを考慮して、以下のように組んだ。
第1部隊、僕、ジャンヌ、ミリアは、東の入口から。
第2部隊、リッカ、ナルマ、フレカは、西の入口から。
第3部隊、ライオ、ヒカルは、南の入口から。
第4部隊、ヤオ、ナターシャは、北の入口から。
どうしても2人組は不安に感じるが、やむを得ない。
「さあ、行きますわよ」
「御意!」
それぞれの入口を目指して分かれた。
・・・・・・・・・・
僕とジャンヌ、ミリアは東の入口から入った。
青い空飛ぶドラゴンが現れる。
「我が名は青龍。さあ、その実力を示してみよ」
ゴォォォ!
青龍から青い炎が吐き出される。
「アース…シー…ルド…」
地面が隆起し、炎を防ぐ。
ミリアの風水術、大地の力だ。
「やぁぁ!」
ジャンヌのジャンプ斬り。
しかし、青龍か身をひるがえしてかわす。
さらに、しっぽでジャンヌを攻撃。
「くぅ!」
ジャンヌは弾かれ、アースシールドに激突。
シールドは破壊される。
ゴォォォ!
再び、青龍の炎。
「ぐぅぅ!」
「ヒロト! なんとかしなさいですの!」
「で、でも風魔法じゃ、炎を逆に強化してしまう」
「役立…たず…です」
ジャンヌよりミリアに先に言われてしまった。
「仕方ないですわね」
そういうと、炎の中、ジャンヌは僕に近づいてくる。
「ヒロト。私、聞きましてよ」
「え? 何を?」
「私の知らないうちに、ずいぶんみなさんと、いろいろイイコトしてきたらしいですわね」
「そ、それは…」
「私とは長い付き合いで1回だけですのに、フレカと2回、ミリアとも2回ですって?」
「そ、そんなこと、誰から…」
「…私…」
ミリア。
君は無口なのか、おしゃべりなのか、どっちなんだ。
「しばらく使い物にならないようにしてあげますわ」
ジャンヌはそう言うと、僕の股間から精剣スペルミウムを抜いた。
さらに。
「まだまだぁ、ですわ!」
プシュゥゥゥ!
左手にも、精剣スペルミウムを発動させた。
僕は、ぐったりと倒れる。
「今日のところは、これくらいで勘弁してあげますわ。さて」
ジャンヌは青龍の方を向き、2本のスペルミウムを構える。
「あなたも運がなかったですわね」
青龍に向かって飛び上がった。
「真空連牙斬!」
「ギャァァァァ!」
<青龍を倒した!>
「まぁ、ざっとこんなものですわ」
「す…ごい…」
「うぐぐ」
「さぁ、奥に進みましてよ」
・・・・・・・・・・
「ツインスラッシュ!」
リッカさんの2本のダガーは空を切る。
「ちっ! 速い!」
私ナルマ、リッカさん、フレカさんの3人は、西の入口から入り、白い虎、白虎と戦っていた。
白虎の爪が、リッカさんを引き裂く。
「くっ! おい、フレカ! 何か考えがあるんだろ!?」
「はいぃ、任せてくださぁい」
フレカさんはそう言うと、私の方を向いて踊りはじめた。
すると、不思議な感覚が私を覆う。
「ラッキーダンスですぅ。幸運がアップですぅ。これでナルマさんのドジっ子は解消ですぅ」
そういうことね。
ドジっ子はわざとだけど、ここは乗らないと不自然。
「ありがとう! フレカさん!」
私はカバンからロープを取り出す。
「ホールディング・バインド!」
ロープで白虎を拘束する。
すると、フレカさんが叫ぶ。
「いきますよぉ、剣の舞!」
フレカさんは短剣を取り出し、白虎の周りを華麗に踊る。
「グガァァァ!」
白虎は全身から血を噴き出して倒れた。
<白虎を倒した!>
リッカさんは言った。
「おいフレカ…。これがお前の実力かよ…自信なくすぜ…」
「うふふ、ですぅ」