第4話「悔しい過去」
「先に言っておくけど、あたしヒカルには全くドキドキしてないし、キモって思ってるくらいやから。それにあたしはメジャー再昇格を目指して今、ここのトリプルAにいるわけやから。」
その話を聞いて僕はマリーアイリン選手に驚きの表情をしながら話していく。
「女性史上初のメジャーリーガーで2番キャッチャーで出場して確かホームランも打たれてたよね?テレビで見たけど、すごい選手だなって思ったよ。」
マリーアイリン選手は、すごく悔しそうな表情をして下を向きながら小さな声で今の心境について語り始める。
「全米でドラフト5位指名で、昨年9月にメジャー初昇格したわ。代打でレフト前ヒットを打ってから今年は5月と6月途中まで2番キャッチャーでスタメンだった。ものすごく夢のようで嬉しかった。だけど28試合で100打数29安打、打率.290。32三振と三振も多かったけど11本のホームランと打点も20まで伸ばしたわ。でもピッチャーの抜け球とかを体で上手くストップさせたりすることが出来なかったり、得点が入るかどうか際どいホームベースでの相手選手に対するタッチが遅かったりしたね。あとはボールを落としてしまったりすることもあって、トリプルAに落とされたわ。だからめっちゃ悔しいし、自分に対してイラつく事は正直めっちゃある。少なくとも2カ月くらいはメジャー再昇格は、させるつもりはないってボスが言ってた。」
その話を聞いて僕はマリーアイリン選手に優しそうな感じで自分の気持ちについて話していく。
「僕もこれまで以上に頑張るからアイリンさんも一緒にここで頑張りませんか?トリプルA止まりの僕がこんなこと言うのは失礼だし間違ってることくらいは理解してます。でも僕はアイリンさんがまたメジャーのバッターボックスに立つ姿を見たいです!」
マリーアイリン選手は、不器用ながらも返事してくれる。
「まぁ、このままじゃヒカルのメジャー昇格がないまま解雇、戦力外になるだろうし、あたしが助けてあげる期間として前向きにこのトリプルAで、やってやるわ!」
素直でないところは、なんともいえないがこの時僕は、すごく嬉しかったのは確かであった。
しかし僕はマリーアイリン選手とバッテリーを組むことが増えて渡米して2年目のシーズンはトリプルAで先発中心で15登板、6勝3敗、防御率2.35で結果を残している。
フォアボールの数も毎試合5つ、6つでてしまうもののピンチの場面で三振を取れるようになっておりマリーアイリン選手のおかげであると感じている。
その一方でマリーアイリン選手はトリプルAで29本塁打、打点68をマークしたがメジャー再昇格には至らなかった。
翌年、僕が渡米して3年目のシーズン、マリーアイリン選手はオープン戦でメジャー再昇格して守備で良いところを見せ、バックネットのスレスレ部分の打球をホームベースからスライディングキャッチするなど輝きを見せた。
一部の現地メディアの間では開幕メジャーは、この守備力の高さについて高く評価を根拠に、ほぼ間違いなしと伝えているところもあった。
このまま開幕メジャーと言う可能性もあったが打撃でなかなか打てず8試合で打率.143 打点1にとどまってしまい開幕はトリプルAで迎えることになってしまう。
打撃フォームの見直しや変更および調整にも積極的に取り組み、僕と同じシーズン3年目でトリプルAの試合で経験を積み重ねていった。