第3話「99.9%」
僕は約1年半前に出逢ったメジャー昇格経験もある女性捕手のマリーアイリン選手と出逢った時の頃について思い出していた。
マイナーリーグのトリプルAの公式戦で僕が3回に制球に苦しんでキャッチャーがマリーアイリン選手に代わって、あたしの胸に向かって投げてくるように言われた。
3人の打者に続けて三振をとって大ピンチをしのぐことが出来たのである。
その後、1つのフォアボールは6回に出してしまうものの三振やフライアウトなどで4回以降ヒット1本すら与えない投球で6回投げて3失点、球数109球と好投し打線の援護はあまりなかったため勝ち負けはつかない結果になった。
試合後、誰もいなかった投球練習場であるブルペンで僕はマリーアイリン選手に呼ばれてブルペンに向かうと少し見直してくれた感じで僕にこう言ってくれる。
「キャッチャーがあたしになってからアッブー(危ない)投球がほとんど無かったじゃん。ただのノーコンピッチャーだと思ってたけど、まぁまぁやるじゃん!おつー(お疲れ様の意味)!」
僕は少し恥ずかしそうにしながらもアイリン選手に突っ込むように返事をしていく。
「ぼ、僕だって一応日本でプレー出来るように、それなりに努力してるからな。でも胸に向かって投げてこいって言ってくれたお陰で立ち直ることが出来たって思ってるから感謝してる。」
そしてマリーアイリン選手は、早くもあることに気づかれてしまい僕に怪しそうな表情をしながら言ってくる。
「あたしのプレーが無かったら99.9%3回途中で5失点、最悪の場合7失点で降板せざる得なかったでしょうね。ただ、あたしはあの時コントロール修正方法の一つとして、あたしの胸に向かって投げるように言ったんだけど、一球一球けっこう見られてた感じがしてヤバヤバ(やばすぎる)って思った。完全にあたしの胸を性的な感じに思われてるって。」
自分なりにごまかすかのように必死に僕はマリーアイリン選手に説明していく。
「別にそんなことないって。それは考えすぎでしょ?そんな性的になんて見てないし、あの場面でそんなふうに思えるシチュエーションじゃないでしょ!?」
しかし全く通用せずマリーアイリン選手は、ここでハッキリとストレートな感じでこう言った。
「必死に説明しようとしたってノー・ノー・ノー!それは投げた後の球速が証拠になってくるから。平均93〜94マイルのピッチャーが急に98とか99マイルのフォーシームを継続したんだよ!どう考えても、あたしの胸を性的に見てしまってそれが投げる時のエネルギーに繋がっていったんだよ。」
これ以上誤魔化すわけにもいかないと判断した僕は小さな声でマリーアイリン選手に正直に話していく。
「98とか99マイルも計測されてたなんて分からなかった。とにかく一つ一つアウトをとっていかないとって思ってたから。ち、ちょっとは性的に見てしまってました。すいません。」
するとマリーアイリン選手は、このあとすごくハッキリととある事を言ってくる。