第1話「スーパーキャッチャーとの出会い」
なぜか乗客が少ないアメリカから日本行きの飛行機に乗って座席に座りながら、両耳にイヤホンをしていた。
そして右手片手にスマートフォンのМNNニュースの動画を見ていた。
なんと速報で取り上げられているスポーツニュースで、女性の浅田アナウンサーが説明している。
「先ほど入ったニュースです。プロ野球界全体が驚くことでしょう。神戸ドリームベイスターズの先発でエースの望月勝投手が契約更改で1年契約を結びました。1年間でありながら2億5000万円との推定年俸なのですが、投手としてではなく野手重点とした契約であることが分かりました。これまで投手としては249勝を記録しており、MAX164キロのストレート、さらには魔球とも言われているジャイロボールで、日本とアメリカで人気の実績を得ました。一方で時々、代打や指名打者、外野手で野手としても日米ともに出場し、プロ野球通算199本のホームランを打っております。長年チームの打撃力の低迷が続いていることなどから本職のピッチャーではなく、ベテランで引退の話も出ている望月勝選手は、今後バッター中心で打撃力向上の戦力になっていく方針です。」
そしてニュース動画の記事には、超速報と記された上で短文でありながらこう書かれていた。
『望月勝、会見で引退を決意した上での1年契約!さらにドリームベイスターズ異例のチーム新体制を西村オーナーが発表で、攻撃力と守備力を向上へ!』
僕は神月光。右投げ右打ちで、小学5年生から野球を始めて、リトルに入った。
中学と高校では野球部で、日々練習や特訓を行ってきたが成長しにくいタイプなのか、高校3年の夏の県大会までずっと補欠だった。
ベンチ入りすら出来ない日々を送り、高校3年の夏の県大会では初戦で先発登板し、当時MAX144キロのストレートと超スローボール、唯一習得していたツーシームの変化球のみで9回を2失点に抑えた。
しかし打線の援護がなく、1対0で負けてしまったのである。
当然ながらスカウトからも注目されておらず、県大会後に母親が病死、父親は幼い頃に交通事故で死んでしまったため、両親ともに不在である。
それでも諦めずその後色々悩んだ末、渡米しトライアウトに参加し、全力プレーでなんとかロサンゼルス・ジャイローズの傘下のマイナーリーグ入団した。
1年目はシングルAでスタミナと球速アップのトレーニングに励む。
2年目は投手コーチのアドバイスなどもあり制球力向上と共に球速もさらに向上しダブルAに昇格。
さらに6月くらいからダブルAからトリプルAに昇格し、トリプルAではメジャーリーグ史上初となる女性捕手が誕生し話題にもなった。
女性捕手とはマリーアイリン選手とことで、この時に初めて出会った。
ここで今から約1年半前からの出来事について僕は目をつぶりながら、ゆっくりと振り返りつつ思い出していた。
そして現在、僕はトリプルAの試合で先発登板していて2回まで3つのフォアボールをだしつつも無失点で切り抜けている。
しかしコントロールの悪さは長年の課題で3回にノーアウトから3者連続で1球もストライクゾーンにボールが入らない状況でフォアボールが続き、満塁のピンチを招いてしまう。