第1話 始まり
初めての投稿です。
••••••長い夢を見ていた気がする。
月明かりの下で彼女───イスリはぼんやりとした意識を覚醒させた。
ここはどこだろうかと辺りを見渡してみる。目の前には湖があり、それを囲うようにして木が生い茂っている。背中には硬い感触があり、振り向いてみると1本の大きな木が生えていた。どうやらこの木を支えに眠っていたらしい。おそらく森のようだが、イスリにとっては知らない場所だった。
しかもそれだけではない。自分の名がイスリという事以外何も思い出すことができなかった。
記憶に霧がかかったようなそんな状態だった。
「どうしよう...。」
思わず不安の声を出してしまったが、何か自分に関する手がかりがないかと湖に反射する自身の姿を見た。
目の色は双眸とも青くガラス玉のように輝いており、鼻梁や唇といった顔のパーツも綺麗に整っていた。
また、月明かりに照らされる長く肩まで伸びる白髪は自分自身だと思っても美しいと感じてしまう程だった。
服は髪の色に合わせたような白と黒のツートンを基調とした動きやすいドレスのようなものを着ていた。
腰には小さめのポーチが付いており、その反対側には短剣が鞘に収まっていた。
ふと、ポーチに何か入っていないかと中を見てみると、中は真っ暗で何も見えない状態だったが、手を入れると1枚の紙切れが入っていた。イスリは紙切れの中身を見てみる。
「記憶を取り戻したいなら大陸の中央にある祭壇を稼働させろ」
紙切れには一言だけそう書いてあった。もちろんイスリには何のことかさっぱり分からないし、嘘かもしれない。
だが、イスリにはこの言葉を伝えた人物が信用できるという謎の自信があった。
イスリは大陸の中央にあるという祭壇を目指すため、ひとまずこの森を後にした。