第5回
第25回新風舎出版賞、最終審査落選作品(笑)
次の日、複雑な心境でバイト先に向かった。いつものようにタイムカードと役割分担表の自分の名前の所に判を押す。そしていつもの仕事前の郵便局員の挨拶。全て普段通りに事が進み、俺は作業を始めた。ただ違うのは、その時、俺は顔がニヤけるのを必死に押さえていた事だろう。
休憩時間に入る0時までの退屈な2時間半を乗り越え、俺を含めたバイト達は待合室へと移動した。いつもの俺なら椅子に腰掛けるなり小説を読み始めるが、その日は、椅子に腰掛けたままただボーとしていた。別に疲れた訳ではない。次に起こそうとしている事に対して考えていただけだった。そう、俺の考えに間違いはない。そしてそれを今から証明してやる、と...。
あっという間に時刻は0時57分を過ぎ、バイト達は仕事を再開する為、2階へとそれぞれ階段を下って行った。それを尻目に、俺は2階を通過し、更に1階へと階段を下りて行った。そしてそのまま郵便局の外に出ると、暗闇の中を自転車で駆け抜けた...。
5時25分、そろそろだろうと再び郵便局に戻り、局内へと入ると、2階へと階段を上がった。5時30分にはまだ2、3分ある。俺は2階の部屋の扉の前で身を潜め、頃合いを見計らった。
5時30分、扉を隔て、少しだがざわめく物音が聞こえたのを確認し、俺は扉をそっと開けると、そこにはバイトの連中がタイムカードを押している、いつもの5時30分の風景があった。俺はそいつらに紛れ込み、自分のタイムカードを押すと、家へと自転車を飛ばした...。
翌日もバイトが入っていたが、構わずシカトした。その次の日も、更に次の日も。そしてあれから郵便局に訪れる事は二度となかった。
第6回へ続く...




