第35回
第25回新風舎出版賞、最終審査落選作品(笑)
1月、年が明け、人それぞれ新しい年に思いをよせるこの季節、俺は、あのガソリンスタンドに居た。といってもお客としてではなく、そこのアルバイトの一人としてだ。このアルバイトが大変なのは、端からみても分かっていた。しかしなぜこのアルバイトをしてみようと思ったのは、自分のこの内向的な性格を変えたかったからもある。入ってまだ数日だが、大変さは元より、とてもやりがいのある仕事だと気付いた。
「いらっしゃいませー!」
「お兄さん元気いいねー」
「ありがとうございます」
こうしてお客さんに言われる事が、とても嬉しく感じた。
青山さんの奥さんと一緒に来た時に担当したあの若い男はというと、俺と同い年の大学生だという事が話してみて分かった。同い年という事や、俺の目指す大学の学生という事もあり、とても話が合った。
免許を取り、自分で車を運転するようになってから気付いた事だが、ガソリンをカラの状態から満タンに入れると、およそ40リットル入る。しかし、あの時、奥さんは、満タンに入れても8リットルしか入らなかった。これは俺の憶測だが、もしかしたら、奥さんはここのガソリンスタンドの雰囲気を俺に見せる為にガソリンを入れる必要もないにも関わらず、あえてガソリンを入れに来たのではないかという事だ。もしそれが真実で、奥さんの俺に対する優しい気持ちならば、俺はその行為をとても感謝したい。
第36回へ続く...




