第2回
第25回新風舎出版賞、最終選考落選作品(笑)
21時を廻り、出掛ける支度をすると、自転車で郵便局へと向かった。郵便局へは決まった同じコースを自転車で必ず行く。そしてそれがある意味日課のようになっていた。
郵便局には裏口から入る。特に入局許可証などはなく、そこには警備員も居ない。入ろうと思えば誰でも入れる環境だった。
一度3階へ上がり、バイトの待合室に荷物を置くと、主な仕事場である2階へと下り、タイムカードを押した後、毎回変わる役割分担表から自分の名前を探し出し、そこに判を押す。そして仕事前の郵便局員の決まった挨拶の後、名前を呼ばれて返事をすればそれで良い。バイトの人数は20人程いる訳だから、他の誰かにタイムカードを押してもらい、他の誰かに自分の判を押してもらい、他の誰かに返事をしてもらえば、当の本人が居なくてもバイト料がもらえるといった可能性が無い訳ではなかった。すなわち、他の誰でもよく、俺でなくてはならない理由などどこにもないのだ。
今日の役割分担表の自分の名前は、小型郵便の所にあった。といっても、小型郵便と大型郵便のどちらかなのだが。仕事内容もさほど変わりなく、どちらが良いというものもなかった。仕事時間は21時30分〜5時30分。内、0時〜1時までは休憩時間となり、実質の労働時間は7時間だった。
21時35分、郵便局員の挨拶が終わった後、俺を含めたバイト達は、それぞれの持ち場へと移動し、作業を開始する。周りの連中はもう知った顔だが、名前は誰一人と知らない。当然、あちらも俺の名前など知る由もないのだろう。しかしそれでも仕事が成り立つのだから笑える。
仕事は腹が立つ程単純で、郵便物の郵便番号別に仕分ければいいだけ。ただそれだけだ。作業が退屈なだけに、時間が過ぎるのがとても長く感じる。わずか一時間の間に、郵便局内にある掛け時計をいったい何十回と見ていただろうか。
第3回へ続く...




