第16回
第25回新風舎出版賞、最終審査落選作品(笑)
次の日の土曜日、朝の9時にセットしておいた目覚まし時計が鳴る5分前になぜか目が覚め、俺はベットから置きだした。
一階へと階段を下りると、キッチンで洗い物をしている母親の後ろ姿が見えた。キッチンへ歩いていき、俺が冷蔵庫を開けると、その音でそこで初めて俺の存在に気がついたのか、「あっ、結、おはよう」と母親が驚きを隠しているかのようにそう言った。
俺は無言で茶だんすからコップを取り出すと、そこに牛乳を注いだ。
母親が驚いたのは、音もたてずに突然現れた俺に驚いたのと、午前中に一階へ下りてくる事は滅多にない俺が、こんなに朝早く起きてきた事、ましてや2日連続なんて今までありえない事だったからだろう。
「トーストにする?」
牛乳を飲んでいる俺に母親が食パンを手にしながらそう言った。
「自分でやる」
俺はコップをテーブルに置き、そう言った。
「あ、目玉焼き焼きましょうね」
「いいから」
冷蔵庫を開けながらそう言う母親に、俺は強い口調でそう言った。
「...愛はね、ついさっき出掛けたのよ。友達と遊びに行くって...。でもね、最近の愛、なんか怪しいのよね...。お母さんが思うに、あれは彼氏が出来たのよ。同じ女だからなんとなく分かるんだー...。だから正直に言ってくれても、お母さんは全然OKなんだけどなー。うちに連れてきて、紹介して...」
その話を聞いて、そういえば学生は今日は休みなんだと気がついた。
トーストが焼け、椅子に腰掛けそれを無表情に食べていると、居間に歩いて行ったと思った母親が、手に何かを持ってキッチンに戻って来た。
「あのね、これ、どうかなー?」
俺の手元に差し出された長方形の紙。真ん中に車の走る写真が載っている。
「うん。自動車教習所のパンフレットなんだけど、やってみたらどうかなって...」
「なんで?」
俺は母親を見上げた。
「いや、持ってても損はないじゃない。それに免許持ってれば何かと便利でしょ?」
母親はそう言って笑顔を見せた。
「就職に役に立つって事でしょ?遠回しに俺に就職しろって言う圧力なんだろ!?」
「違う!違うのよ、結」
俺は立ち上がり、かじりかけのトーストを残し、浴室へと小走りで向かった。そして頭上から降り注ぐ熱いシャワーを浴びながら、何もかも、何もかもがムカつく。そう心の中で呟いていた。
第17回へ続く...




