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第10回

第25回新風舎出版賞、最終審査落選作品(笑)

 その日の午後、その食堂のテレビのニュースで再び憎悪を触発された俺は、衝動的にあの事件以来、初めて警察署に一人で行ってみる事にした。いや、行ってみると言うよりも、乗り込むと言った方が正しかったのかもしれない。

 警察署にやってくると、入口の自動ドアは機能を停止させている状態で開け放たれており、腹が立つ程開放的だった。それならばと、構わず中へと一直線に入って行った。

 周りを見渡すと、中には5〜6人の警察官がディスクで何か仕事をしているのと、20代の一般の奴らだろう男2人が中央にある長椅子に座っているのが目に入った。一瞬、警察官の数人が俺にチラッと視線を送ったが、特に気にする訳でもなく、再びディスクの仕事に戻った。

 受付らしい受付はなく、〜課というような物が書かれた看板がいくつかあったような気もするが、俺は一番手前のディスクで仕事をしていた若い警官に声をかけた。

「あの」

 若い警官は、不意を付かれたかのように瞬時に首をあげ、俺の姿を確認した後、「はい」と答えた。

「あの、一昨年の10月に起きた事件について、今はどうなっているのか調べてほしいんですけど」

「...えっ、あ、はい。あのー、失礼ですが、被害者の方か何かで...」

「そうです」

 俺は詳しい事を説明すると、その若い警察官は動揺しながらも席を外し、年輩の警察官のディスクに小走りで向かった。そしてその年輩の警察官と少し話した後、今度は別のディスクに移動し、何やら資料をまさぐり始めた。そして次の引き出し、また違う引き出しと資料をまさぐった。その時間は5分、10分、いや、もっと長い時間に感じられた。俺は、そのあたふたしている若い警察官の姿を見て、次第に、もうどうでもいい気持ちになった。 

「もー、いいですよ」

「...少々お待ち下さい」

 若い警察官はそう言って、更にあたふたしながら資料をまさぐった。

「もー、いいですって」

 そいつは俺の言葉を聞き流すかのように資料をまさぐった。

「もー、捜査はしてないんでしょ?打ち切ったんでしょ?」

「いや...」

 そいつは俺のその言葉で資料を探す動きをようやく止め、顔だけをこっちに向けてなんとか口に出したという感じでそう言った。

「だって...だってあれから一度だってこっちに連絡してくれた事なんてなかったじゃないかー!!」

 俺はそう叫ぶと、勢いよく警察署を飛び出し、ひたすら走り続けた。

 もういい、警察を少しでも当てにしていた俺がバカだった。あいつらは俺が必ず見つけだして俺の手で殴り蹴り殺す!あの時俺がやられたのと同じく、ゆっくり、ゆっくり、何度も同じ所を、何度も...。

 俺はそう考えるといくらか落ち着き、笑みを浮かべた。

第11回へ続く...

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