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第1回

第25回新風舎出版賞、最終選考落選作品(笑)

 俺の部屋のテレビは、成人式の式典で市長のスピーチの最中に暴れて騒ぐ20歳の男達の姿がニュース映像として流され、取り上げられていた。

 お前の話が長げーからこうなんだよ。そもそもお前の話なんか誰も聞きたくねーし、誰も聞いちゃいねーんだよ。

 そんな事を思いながら、二ヤリと、男達が次は何をするのかと画面を観ていた。

「この子達は大人になりきれていない子供ですよ」

 画面はスタジオに戻され、その際映し出された何かの肩書きが付いたおっさんが、静かに笑いながらそんな事を言っていた。

「じゃー、大人ってなんだよ...」

 俺は小さく口に出してそう呟いていた。

 今日は成人の日だ。そして19才の俺は、来年成人の日を迎える。

 去年、高校を卒業したが、就職活動をする訳でもなく、自らフリーターの道を選んだ。何かやりたい事や夢がある訳じゃない。むしろそれとは逆に、やりたい事がなく、夢がないだけだ。

「キエチマエ…」

 俺はそう言葉にしながらテレビのリモコンの電源のスイッチを押した。うざったいおっさんの姿が消え、テレビ画面が暗くなると、その画面のガラスに反射し、今度は自分の顔がうっすらと写し出され、俺は自分の姿から顔をそらした。

 ビデオデッキの時刻を現しているデジタルの数字は、『19:03』を示していた。

 トットットットットと、自分の部屋のある2階へと小走りで階段を上がってくる足音が部屋のドアを隔てて聞こえてきた。

 俺は立ち上がり、扉の方へ向いた。

 ガッチャッっと部屋の扉が開かれ、母親が顔を覗かせた。

「あっ、ゆい、ごはん。降りてきて」

「....」

 足音が母親のものである事、そして夕食を呼びに来るものである事は直ぐに分かった。時間的にもそうだし、何より母親が2階の俺の部屋を訪れるのはその時だけだからだ。

 俺は部屋を出て扉を閉めると、気だるく階段を下りて行った。

 父親は単身赴任で月に何度かしか家には帰って来ない。しかし、それは俺にとっては好都合な事だった。

 キッチンには、いつのもように2人分の食事が用意されていた。母親といえば、俺にリアクションするでもなく、キッチンに備え付けられているテレビに夢中になっていた。  

 そんな母親を横目に、自分の分の食事を食べ始めた。うまい、まずいはどうでもいい。ただそこにある物を片付けるだけ。そんな食事が終わると、再び自分の部屋へと階段を上がって行った。

 俺は何もしていない訳ではない。一応バイトはしている。それは郵便局の仕分けのバイト。そのバイトを選んだ訳は単純な事で、人と関わらなくてよさそうなバイトだと思ったからだ。週に2、3回出ればよく、特に仕事のノルマはないから、自分のペースで仕事が出来る。それもそこを選んだ理由の一つだ。年末年始だけの期間限定で、年賀状の仕分けを主としてのバイトで入った。まー、『金がない』それだけの理由で、仕方なしにバイトをしているのだけの話だが...。

第2回へ続く...

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