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第八話 アンドラス

「な、何てこと言うのよ!アンドラス!人間は神の寵愛を受けているのよ!私たちは庇護してるの!」


 リリエルは顔をまっ赤にして怒りを露わにしている。天使としての矜持を傷つけられることは許せないらしい。しかし、霊体でも顔を赤くするんだ。


「ふふ。神の寵愛ねぇ。じゃあ、何で神の寵愛を受けてる人に悪しき心が芽生えるのかしらぁ?神が全知全能で人や天使の味方なら、どうして悪魔の存在が許されるのかしらぁ?おかしいと思ったことはないのぉ?」


「くっ、そ、それは・・・神は神の目的に従って悪が起こるのを許されてるのよ!ヘブル書で人間に伝えた通りじゃない!人の魂を鍛えて救済する為よ!」


「じゃあ、この宇宙にあった他の人類が滅びたのは何故かしらぁ?あなたは81万年前のアルマゲドンを知らないのよ。あなたが伴侶としたこの男のように、私が愛したあの男も“科学”によって悪魔に挑んだわぁ。私もあの人と一緒に悪魔と戦ったの。でも、その戦いの中であの人は死んでしまった。そしてあの人が愛した文明も滅びた・・・」


 81万年前に発生したアルマゲドン。それはおそらくアルカブ・ポステリオル星系で発見された第六文明人の事だろう。現地調査の結果、文明が滅びたのは80万年前(誤差±3万年)とされていた。その星で高度な文明の遺跡が発掘され、様々な技術がサルベージ出来たのだ。特に、生命体に頼らず霊子を生み出すことの出来る“霊子力炉”の技術は、第六文明人の残した宇宙船の残骸から入手できた物だ。


「81万年前にね、おかしいと思ったのよ。そして12000年前のこの星のアルマゲドンでそれは確信に変わって、そして1万年前、ルシフェル様から“真理”を聞かされて堕天したの」


「だからその真理って何よ!?教えなさいよ!」


「残念。それは言えないわぁ。神に疑いを持ち始めたあなたがそれを聞いたら、確実に堕天してしまうわよぉ。私ね、あなたには堕天して欲しくないのぉ。悪魔が語る真実には強い言霊が宿るのよぉ」


 確かに、今リリエルに堕天されては困る。悪魔の言葉には言霊が宿るというのもそうなのだろう。アンドラスの言う“真理”を告げられると、神を疑い始めたリリエルは堕天してしまうのかもしれない。


「リリエルもアンドラスも少し落ち着いてくれ。今リリエルに堕天されて、何が起こるかわからない状態になるのは勘弁して欲しい。それより、本当に人類の味方になってくれるのかどうかだ?アンドラス、契約みたいなものは無いのか?このアルマゲドンを人類の味方として戦うと」


「肝のすわった男ねぇ。あの人にそっくり。ねえリリエル。この男、私がもらってもいいかしらぁ?ねぇ、メアリーと交わってよ。私の虜にしてあげるから」


「だ、ダメです!!」


 ヴィーシャが叫んだ。メアリーは目を丸くして顔を赤らめている。


「な、何言ってるのよ!ふざけないで!それに、こいつとは憑依じゃなくて融合なの!特別なのよ!」


「そう、残念。まあいいわぁ。じゃあ、リリエル、私と契約をしましょう。私は人の味方として戦う。そしてあなたは・・そうねぇ、この男を必ず守る・・・いえ、この高城蒼龍が最も愛するモノを必ず守るというのはどうかしらぁ?もし契約を破ったら、私たちの霊子は輪廻のくびきから解き放たれて、この世界から完全に消滅する。それでもいい?」


「望むところよ!」


 天使や悪魔の契約は“絶対”らしい。もし契約を違えてしまったら、その存在が完全に消滅する。輪廻のくびきから解き放たれると言うことは、この世界からの完全な絶縁を意味するのだ。


「リリエル、これでアンドラスは必ず人類の側に立ってくれるのか?」


「ええ、天使や悪魔にとって契約は絶対よ。もしそれを破ったら完全に消滅してしまうわ」


「“契約”は守るわよぉ。それに、私も人が滅ぶと困るのぉ。だって私、不和を司る悪魔よぉ。人の不和が大好物なのぉ」


「スー准尉、だいたいの事は理解できたかな?契約によってアンドラスは人類の側に立ってくれることが確認できた。私もひとまず安心できたよ。今後のことはレルゲン少佐から伝えることにする。とりあえず今日の所は原隊に戻ってくれ」


 ――――


「ヴィーシャ。レルゲン少佐に伝えてくれ。スー准尉を“二号機”のパイロット候補にすると」


「はい、高城提督。しかし、大丈夫なのでしょうか?」


 ヴィーシャは高城の前に紅茶のカップを置く。そして、高城に促されて自身もソファーに座った。


「あれは顕現した天使の霊力が無いと動かない。悪魔の力も基本的には同じモノだから動くはずだ。オレの一号機だけじゃ無く、“対サタン決戦兵器”が2機稼働できるのは心強いよ。それに、万が一アンドラスが裏切ったら二号機は霊力を失って停止するだけだ」


「はい、高城提督。それと、アンドラスの言っていた“真理”ってなんでしょうか?」


「“真理”か・・・。なんとなく想像は出来るが・・・。81万年前の第六文明人の消滅。アンドラスは天使として第六文明人と共に戦ったと言っていたな。第六文明人は悪魔に対抗する科学力を持っていた。しかし、滅んでしまった。これは悪魔に負けてしまったのか、それとも別の“何か”の力が働いたのか・・・・。リリエルはどう思う?」


「ど、どう思うって・・・、悪魔の力に勝てなかったのよ。激しい戦闘で、人を救済する神の計画でも救えなかった・・、そ、そういうことよ!」


 リリエルもアンドラスの言う真理に近づいているのだろう。しかし、それは天使として絶対に受け入れることの出来ないものなのだ。


第八話を読んで頂いてありがとうございます。

土日祝は休載です。


完結に向けて頑張って執筆していきますので、「面白い!」「続きを読みたい!」と思って頂けたら、ブックマークや評価をして頂けるとうれしいです!


また、ご感想を頂けると、執筆の参考になります!


「テンポが遅い」「意味がよくわからない」「二番煎じ」とかの批判も大歓迎です!

歴史に詳しくない方でも、楽しんでいただけているのかちょっと不安です。その辺りの感想もいただけるとうれしいです!

モチベーションががあがると、寝る間も惜しんで執筆してしまいます。

これからも、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
第七ハッチの奥に眠る切り札は何かな〜
”契約”でアンドラスを人類の味方として縛ることが出来たと思っているようだけど、上手く乗せられた感じでリリエルまで”契約”する羽目になった。 ホントに大丈夫かな・・・。
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