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第五十三話 大天使ミカエル

 七つの首を持つ竜と獣はミカエル達熾天使が布陣する宙域へ進んでいく。熾天使以外の天使が滅んだ為、地球の防衛には目処がついた。その為、地球艦隊は向こうの世界から来た地球に向かい生存者の救助を開始する。


 太陽系金星軌道


「ミカエル、久しいな。息災にしていたか?ククク。私が解るか?全宇宙の王にして天界と地獄の全てを統べる者だ」


 ルシフェルは七体の熾天使を見下ろし威圧の波動を放つ。それは熾天使達を消滅させるほどの物ではないが、動きを止めるには十分だった。


「向こうの世界のルシフェルか?神に仇なす悪魔よ。まさか黙示録の通りの姿を手に入れるとは・・・」


 熾天使達は持てる霊力を全て使って受肉した体を最大化していた。それでもその大きさはせいぜい50キロメートル程度であり、月の大きさほどもあるルシフェルに対しては芥子粒に等しい存在だった。さらに竜と獣の放つ霊力との差はすさまじく、七体の熾天使が束になってかかったとしても簡単に蹴散らされてしまうだろう。ミカエル達は勝てないことを既に悟っている。しかし、この場から逃げるという選択肢は無い。


「そうだ。もはや神の走狗であるお前達に勝ち目は無い。だが余が最後に慈悲を与えてやろう。お前達には二つの選択肢がある。一つは神を拒絶し堕天して我らの尖兵となること。もう一つは今ここで余に食い殺されることだ。余の力を持ってすればお前達の精神を支配し、強制的に堕天させることもできるのだがな。強制的に意思をねじ曲げて支配することを許してくれない友人がいるのだよ。どんなことがあっても魂の尊厳、自由意志こそ最も尊い物、それは“支配されることへの拒絶”だとな。お前達は私の唯一無二の親友、蒼龍に感謝するがいい」


 そう言い放ったルシフェルは七つの首を蒼龍の方に向ける。そして蒼龍も七つの首を少しだけ縦に振って頷いた。


「高城蒼龍・・・。向こうの世界から来た忌まわしき魂。お前のせいで神の計画は狂ってしまったのだ。お前さえこの世界に来なければ、今の人類は神に認められたかも知れぬ。お前はそれを台無しにしてしまったのだ!」


 ミカエルは忌々しげに高城蒼龍の方を見る。そして神から与えられた剣“クリムゾン・グローリー”を掲げた。


 ミカエルは持てる霊力の全てを剣に流し込んだ。その燃えさかる剣はさらに輝きを増し、真っ白に光り始める。


「神の裁きを受けるがいい!!」


 ミカエルは竜の中央の首にめがけて加速した。その速度は一瞬にして亜光速に達し、ミカエルは微少な星間物質と衝突して彗星のごとく光り尾を引いていく。


「人類はもう“神”を必要としない。もはやいかなる支配も受け入れないんだ。もしかすると、それが本当の神の意思、いや、神を“創った者達”の意思なのかもな」


 高城蒼龍は少し悲しげに呟いた。目の前に迫ってきているミカエル達熾天使も、神によって創られた存在だ。その魂は堕天しない限り神を拒絶することは出来ない。


 “彼らもその魂をもてあそばれた被害者なのかもしれない”


 高城蒼龍はミカエルの一撃を躱すでも無く防御するでも無くそのまま体で受け止めた。ミカエルのクリムゾン・グローリーは神の力を顕現せしめたもの。この剣で断つことの出来ないものなど無いはずだった。


「バカな・・無傷だと?」


「そうだ、ミカエル。これが“人間”の力だ」


 竜の前のミカエルの体が光り始める。そして、だんだんと小さな光りの粒子へとかわり宇宙に消えていく。ただの霊子となって消えていってしまった。


 そして後ろの熾天使達も竜と獣の放つ凍てつく波動によって凍り付き、そして光りの粒子への還元されてしまった。


「・・・ミカエル様・・・・」


 リリエルが小さく呟く。ミカエルから注意されたり叱られたりしたことを思い出す。天使として不出来だったリリエルは、しょっちゅうミカエルの手を煩わせていた。リリエルにとってミカエルは頼りになる兄であり、力強い父のような存在でもあったのだ。


「蒼龍、これで地球圏の安全は確保できたな」


「ああ、飛鳥。向こうの世界から転移させた地球に残っている人たちの救助も、地球艦隊に任せれば大丈夫だろう。天使も悪魔も全て消滅させた。もう安全だよ」


「では、最後の戦いへ行こうか、蒼龍」


「ああ、人類にもはや神は必要無い。人類はもうゆりかごを出た。幼年期は終わったんだ」


「アーサー・C・クラークか。子供の頃からお前が好きだった作家だな」


「ふふ、さあ行こう!リリエル、飛鳥、この戦いを終わらせるために」



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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 ミカエルを始めとする熾天使たちも、黙示録の竜と獣には敵わなかったみたいですね! ただ、リリエルにとっては親しい存在だっただけに、やっぱり悲しそうですね。 これで遂に残るは神のみ…
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