第四十八話 悲しき再会
大日本帝国宇宙軍 第二巻の発売日が決定しました!
諸事情で遅くなり申し訳ありません。
2025/12/4発売です!
アマゾン等で予約が出来るようになりました。
是非ともよろしくお願いします!
地球連邦軍参謀本部月面基地
天使の攻撃によって月が大きく抉られはしたが、月面基地から遠かったのと参謀本部は地下5kmの所にあるため現在のところ被害は無い。
「全方位から天使が顕現するぞ!穴を作るなよ!一匹残らず消し去れ!!」
ドレーク参謀総長の怒号が木霊する。モルガン(アナスタシア)がこれまでの悪魔や天使の行動パターンから導き出した予測によれば、数百万の天使が一斉に顕現もしくはワープアウトしてから飽和攻撃を仕掛けるだろうということだ。ハイパー化した力天使ですら完全に消滅させることの出来る地球艦隊に対して、戦力の逐次投入は無意味である事が解ったはずだ。時間稼ぎをしてアンドラスを消耗させたとしても、それだけでは人間には勝てない。ならば、天使達の総力をもって挑んでくるだろう。
「こと座方面70万キロ地点に重力震多数!50万、60万、まだ増えます!」
「アンドロメダ座方面にも重力震です!あ、へびつかい座、はくちょう座方面にも・・・全天が重力震に覆われています!」
参謀本部にある天球型三次元レーダーには、観測された重力震が光点として表示されつつある。それは指数関数的に増加し、瞬く間に全天を埋め尽くしてしまった。
「重力震から発光を確認!宇宙が・・・埋め尽くされています!宇宙が黒く見えません!黒が1に光が9です!」
◇
「メアリー准尉。ロキ二号機はこと座方面の迎撃をお願いします。現在の観測からこと座方面が天使の主力だと思われます」
スキーズブラズニル艦橋のヴィーシャから指示が伝えられる。アナスタシアの能力によって、最適な布陣が計算されていた。その指示に従って地球艦隊も布陣を整えていく。
『アンドラスさん、スー准尉、現在顕現しつつある天使は800万。まだ増え続けています。もう、ロキ二号機の霊子力炉の事を心配できる戦力差ではありません。全力で迎撃してください。最後まで私がサポートします』
さらに現在の戦況をアナスタシアが伝えてくる。いつものように淡々とした声なのだが、どことなく悲壮感のある声色だ。アナスタシアの能力を持ってしても、確実に人類が勝利できるシミュレーション結果が出ていないのだろう。
「ええ、アナスタシア。信頼しているわ。私もギゼの作ったこの心臓(霊子力炉)が動く限り戦う。でも、メアリーだけは必ず守ってあげてね」
「アンドラス、さっきも言ったでしょ。神を斃す前にあなたが犠牲になったら、どっちにしても人類は生き残れないわ。必ず勝利して、生きて帰りましょう」
メアリーは緊張も無く穏やかな声でアンドラスに語りかける。やるべき事はわかっている。霊子力炉の限界が来る前に、天使達を全て倒し、そして神を殺すのだ。メアリーはとっくに覚悟を完了させていた。
『ヴィーシャ、アンドラスさん、メアリー准尉。必ず人類は勝利します。現在、向こうの地球に残っていた観測データとルシフェルの記憶情報を精査しています。地球上にある全てのコンピューターを私の支配下に置いて計算しているので、必ず勝利条件を導き出すことが出来ます。私を信頼してください』
向こうの世界でルシフェルと同期したときに取得した情報と、向こうの世界の地球の観測機器に残っていた天使や悪魔の情報をアナスタシアは全力で精査していた。そして、人類が勝利できる方法を探しているのだ。
◇
ミョルニル部隊
「タチバナ中尉、巡洋艦エルブスビュンの後方で防御線を突破してきた天使を迎撃する。お互い、サポートできる距離を離れるな」
「ええ、犬神中尉もね。背中は預けるわよ」
「なあ、タチバナ中尉。この戦いが終わったら中尉に言いたいことがあるんだけど・・・」
「はぁ、なによ、こんな時に。それに、そういうのって“フラグ”って言うのよ。知らないの?」
「あ、いや、知ってるんだけど、まあ、全くそれらしいことも伝えられずに死ぬのはちょっとな」
「ふっ、残念ね。私は私より弱い男には興味が無いの。私になにか伝えたかったらちゃんと生き残りなさい。あなたがマザーファッカーじゃ無いことを祈ってるわ」
「なんだよ、中尉ってそんなに口が悪かったか?」
「ん?ほんとね。なんでかしら」
◇
「ドレーク参謀総長。艦隊の布陣が完了しました。天使の顕現完了まであと40秒です」
「うむ、間に合ったな。では、これが人類にとっての最後の戦いだ!全火力を持って敵を殲滅する!全艦砲撃開始!!」
◇
こと座方面 ロキ二号機 アンドラス
「撃破70万!この方面の天使はあと50万ね!このまま行くわよ!メアリー!」
「アンドラス!後ろ!」
「チィッ!!」
アンドラスは後ろから振り下ろされた剣を振り向きざまに右手で掴む。70万もの天使を屠ってはいたが、数に物を言わせた天使達に接近を許しつつあったのだ。
そこにはアンドラスの半分くらいの体高で、白銀の鎧を身につけた緋色に輝く髪の天使がいた。
「来ると思っていたわ、リリエル」




