第十四話 攻撃空母ガタマザン(2)
「アンドラス、あそこを見て。あのドアの横。何かディスプレイの様なものがあるわ。光ってる。文字みたいね。何て書いてるか解る?」
格納庫の片隅に、高さ2メートルほどの出入り口があった。その横に何かを標示している15インチほどのディスプレイが見える。
メアリーはカメラをズームして拡大表示した。
「グズラウ歴7688年・・・・・。メアリー、この船、81万年前のアルマゲドンから130年しか経ってない・・・・」
「どういうこと?故障とかじゃないの?」
「わからないわぁ。でも、艦橋に行けば今までの記録があるかも・・・。メアリー、艦橋に行きましょう!」
「そんな事言っても犬神中尉の指示に従わないといけないのよ。どうするのよ?」
「このミョルニルのカメラデータはリアルタイムで艦隊に送られてるんでしょぉ?じゃあ、すぐに指示が来るわよぉ。あの高城って男、私のギゼくらい頭が切れるわぁ。ねぇ、メアリー、本当にあの男と交わってみない?リリエルがいても問題ないわぁ」
アンドラスはメアリーを見て舌なめずりをしている。こういう所はやっぱり悪魔らしい仕草だ。
「あ、私、おじさん無理。マジ無理」
「・・・・・・」
「みんな聞いてくれ」
強襲揚陸艦イカロスから新しい命令を受信した犬神が指示を出す。
「高城提督から新たな命令だ。あそこのディスプレイに表示されている文字は日時を示しているらしい。80万年前に滅んだ第六文明人の歴だと、その時から地球時間で130年ほどしか経過していないそうだ。これは明らかにおかしい。そこで、なぜそんな事になっているか調査する必要が出てきた。これより203臨時小隊は艦橋を目指す」
第六文明人の遺跡の調査で、彼らが使っていた文字の解読はほとんど出来ていた。その為、急遽作成した自動翻訳プログラムが転送される。第六文明人の文字をヘルメットのカメラに捉えると、そのヘッドマウントディスプレイに翻訳された文字が表示されるようになった。
犬神中尉は日時が標示してあるディスプレイに近づきミョルニルを降りた。そして、ディスプレイにタッチをして表示を切り替える。
「よし、思った通りだ。この艦のマップが表示できたぞ。スクロールさせるから各自記録しておいてくれ」
格納庫から各重要施設までは、ミョルニルが通ることのできる程度の大きな通路が通っている。これは、物資の搬入などのために、トラックのような大型機械が利用していたようだ。ただ、艦橋までその通路は繋がっていないので、近くでミョルニルを降りて歩かなければならない。
3機は慎重に通路を進む。バラノドンのお出迎えがあるかと思ったが、今のところ動く物は皆無だった。
「ここからミョルニルを降りて歩くぞ」
歩くと言っても無重力なので、実際は宇宙遊泳と変わらない。犬神達の戦闘服には、宇宙で移動するための簡易な化学スラスターが装備されている。
タチバナ中尉は超小型ドローンを出して宙に浮かせた。進行方向の曲がり角の向こうなどを確認するための物だ。ドローンからの映像でも、特に変わった物は映らない。自動ドアも問題なく動作をしていて、近づいただけですぐに開く。セキュリティらしき物は一切かかってなかった。
「ここが艦橋か。何があるか解らん。警戒を厳にしろ」
犬神中尉は艦橋入り口の前に一瞬立って、すぐに移動した。自動ドアのセンサーは犬神中尉を感知して扉を開く。そして、超小型ドローンが艦橋の中に入った。
「特に異常はなさそうだな」
安全を確認して3人は艦橋に入った。そこは体育館ほどもある大きなスペースで、200くらいの席がある。外を直接見ることの出来る窓は無く、壁と天井には所狭しとディスプレイが設置してあり、様々な情報が映し出されていた。
「持ち帰れる資料や端末を探せ。ただ、不用意に操作はするなよ」
3人は手分けをして資料や端末を探した。データをダウンロード出来れば一番良いのだが、インタフェースやプロトコルが解らないのでさすがに無理だ。パソコンのような端末があれば、持ち帰って解析が出来るだろう。
「アンドラス、情報を再生できるような物は無いの?」
「どの席でも基本的な情報は見えるわ。でも、無制限で見えるのは艦長席ね。行ってみましょう」
メアリーはアンドラスに案内されて艦長席に移動した。アンドラスはこの攻撃空母にも乗ったことがあるらしい。
艦橋の一段高くなった場所に艦長席はあった。シートのヨレ具合から、かなり使い込まれているのがわかる。5枚のディスプレイに囲まれていて、各ディスプレイにはシグロッグの損害状況などが表示されていた。システムも問題なく生きている。
「パスワードがかかってるわね」
犬神中尉から不用意に操作をするなと言われているのだが、アンドラスの指示でコンソールを操作する。しかし、パスワードがかかっていて開くことが出来ない。
「大丈夫よぉ、メアリー。私はたくさんの人間を見てきたわ。この程度のパスワードならすぐに解除できるわよぉ」
アンドラスは自信たっぷりにふんぞり返っている。
「すごいわね、あなたがいればどんなハッキングも出来るって事?じゃあ、お願いするわ」
「ふふ、こういうときはねぇ、ここよぉ。コンソールの下側を探ってみてぇ」
メアリーはアンドラスに言われるまま、艦長席の座席を引いてコンソールの下側を探った。すると、一枚の紙が貼り付けてある。そこにパスワードが書かれていた。
「異星人でもおじさんのする事って一緒なのね・・・」




