第五章⑤ 焼殺公爵
汽車に揺られながら景色を見ているが今日も湯気がたくさん立ち上ってるな、ドアの窓からメディちゃんが見える…今日もかわいい、隣に見たこと無い黒服のお姉さんがいるな…なんかコソコソ話してる……あっメディちゃんと目が合った!満面の笑みで手を振ってきた!愛おしいぞ!
メディ「マンダ君!新しい焼殺公爵の情報が諜報員さんから届いたんだよ!」
マンダ「おっ!待ってました!正直どう殺せるかが思い付いて無かったんだよな!何か突破口になるような情報お願いします!」
メディ「それじゃあ1つ目の情報なんだよ!焼殺公爵の身体的特徴から!身長は2m前後を行ったり来たり、体表は溶岩石で覆われていて身体の内部は血液の代わりにマグマが流れているのさ!」
マンダ「んんっ!?身長が行ったり来たり?なんだそりゃ!溶岩石でマグマ?歩く活火山って事かぁ?」
メディ「噴火はしてないけどとっても熱いのさ!」
マグマが身体の中に流れてるって…そりゃ宿とかご飯屋さんを火事にするわけだ…
メディ「2つ目の情報、焼殺公爵は水浴びが日課なんだよ!」
マンダ「キレイ好きって事か?溶岩石で出来た身体でも清潔にしときたいのか?」
メディ「どうやら内側のマグマが外に溢れてほっといておくと身体がドンドンと大きくなるから、池に入って急激に冷やす事で表面の熱々の溶岩石を温度差で壊してるらしいのさ!」
マンダ「だから身長が2mを行ったり来たりなのかぁ…そんな事してたら身体がバラバラに砕け散りそうだけどな…」
メディ「池の水くらいじゃぬるいとか?内部はマグマがあるから思ったより奥まで壊れないとか?なんだよ?」
マンダ「今までで1番の化け物具合だな…」
メディ「3つ目は人類にそこまで敵対的では無いんだよ!と言うか熱いものにしか興味が無いみたいなんだよ!」
マンダ「んん?人類殺さないのか?それじゃあヒューマナタイトの摂取はどうしてんだ?マグマを内包してるなら燃費が相当悪そうだけど…」
メディ「焼殺公爵は色んな熱さを求めて徘徊放浪お散歩をして熱を蓄えてるお陰でヒューマナタイトをそこまで必要としていないのかも?なんだよ!」
マンダ「熱さを摂取してるから身体のマグマを冷やさないで活動出来るとかか?」
メディ「そんな感じなのさ!きっと!植物が根っこから栄養摂取以外に日の光で光合成が必要だったり、人類が経口摂取しなくても点滴で栄養を摂取したりとかと一緒なのかもなんだよ!」
マンダ「つまり辛いもの食べてソル山のマグマ浴びて人類の熱い思いを受けるのが点滴って事かぁ!?」
メディ「ズバリ!そうなのさ!たぶん!」
マンダ「たぶん!?」
メディ「そして最後の情報は…右手の方向ご覧なんだよ!窓の外にたくさんの湯気が見えるのさ!その中でも1番大きな湯気をご覧なんだよ!」
一際湯気が上がっている所があるな、双眼鏡で見てみるか…
メディ「今!まさに!そこに焼殺公爵がいるのさ!」
マンダ「ホントだ!湯気の中にマジで人影が見えるぞ!さっき言ってた水浴びで溶岩石剥がしてるところか!」
モクモクどころかヴォワヴォワと湯気が噴き出してるぞ…トンでもない熱量だな…近付くだけで湯気で火傷しそうだ
メディ「いや~実際に見るとスゴい景色なんだよ!」
マンダ「ちょっとやそっとの池の水くらいじゃ冷え固まらない位の熱さなのは分かったな、じゃあ氷の中にでも突っ込んで冷やして凍らせるか?う~ん…」
メディ「氷でも水でもマグマを冷やすには莫大な量が必要だしそれに焼殺公爵をどうやって誘きだすんだよ?」
マンダ「そうだよなぁ…焼殺公爵が殺人に積極的じゃないなら話くらいは聞いてくれそうだし、なんか魅力的な提案をして誘い出して有利な状況で公爵殺しをしないとだよなぁ…」
メディ「誘うなら焼殺公爵の好きな辛いものとか熱いもので誘惑なんだよ!」
マンダ「食べ物には疎いからなんか熱い物を発明するか?この世界で熱い物って言ったら何があるんだ?」
メディ「う~んとね…先ずはロウソクの炎かな800℃位~1000℃位の温度かな?次に溶岩は800℃~1200℃で、ガスバーナーになると炎の色で温度は代わるけど大体1500℃を越えるかな?なんだよ!」
マンダ「桁が違い過ぎて想像出来ないな…けど焼殺公爵の身体は少なくとも1200℃以上にはならないんだな、前に指からバーナーで炎を出すって言ってたけどバーナーがそんなに温度高いなら指先が溶けちゃいそうだな」
メディ「少しの間、炎を出したくらいじゃ溶けないんだよ!溶鉱炉に鉄とかアルミ入れてもすぐには溶け出さないのさ!」
マンダ「そりゃそうだよな!俺は発明家の端くれなのに細かぇ事はあんまり考えないからメディちゃんの知識にはいつもいつも感謝だ!」
メディ「ふふん!どんどんと質問してれたまえなんだよ!マンダ君!」
溶岩って1000℃前後くらいだったのか…てっきりもっと熱いもんだと思ってたぜ、世の中にはもっと熱いもんがあるんだな…それじゃあ焼殺公爵の体内のマグマも1000℃くらいって考えていいだろな
マグマ「メディちゃん先生!質問です!もっと熱いものはありますか?」
メディ「ふっふっふっ!質問にお答えしようなんだよ!それは………溶鉱炉さ!様々な溶鉱炉のタイプがあるけどものによっては2000℃まで温度が上がるタイプもあるのさ!」
マンダ「へぇ!鉄とか鋼を溶かすならそんだけ温度が高くないといけないんだなぁ」
メディ「鉄道の汽車やレール作りの為に各領域で工場を建ててたから溶鉱炉もたくさん作ったのさ!今向かってるナバ街の郊外にも工場があるのさ!」
マンダ「へぇ!見学してみたいな!工場ってやっぱりワクワクのロマンの塊だからな!」
メディ「ナバ街の工場では最新式のディーゼルエンジンの機関車も試作してるのさ!」
マンダ「ディーゼルエンジンの機関車?あれか!潜水艦で使ってたエンジンか!」
メディ「そうさ!石炭の汽車よりもはるかに効率的に列車を動かすことが出来るのさ!」
マンダ「ますますロマンがいっぱいだぁ!」
おっと…ロマンに心が奪われたが焼殺公爵の殺し方をちゃんと考えてなきゃな…マグマがどれだけ熱くたってそれよりも熱いもんはいっぱいある、汽車が機関車になるみたいに上位互換のもんなんていくらでもあるからそれをぶつけちまえば焼殺公爵もただじゃすまないはず…だったら2000℃の溶鉱炉にでもぶちこめばドロドロに溶けちまうんじゃないか?バーナーで炙るくらいじゃ溶岩石の身体は溶けないけど溶鉱炉に突っ込んだらさすがに焼殺公爵も身体が溶け出すはず…だよな?きっと…たぶん…じゃないともう作戦が思い浮かばないぜ…
そして焼殺公爵を誘きだす方法は1つだけ思い浮かんだが…ちょっと自信がない…まぁ俺の秘めたる熱い心で呼ぶしかないな…あとは溶鉱炉にぶちこむ方法か…これももう口八丁しか無いよなぁ…これも自信がないぜぇ…もう自信が無さすぎて俺の気持ちの方がドロドロに溶けちまいそうだ…




