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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔女な師匠と転生者が全てを蹂躙す〜神から貰った祝福は呪いでした〜

作者: たかたけ

あいあむじゅけんせい。受験終わったら定期的に投稿するかもしれませんが今の状態だと不定期的な投稿になるかもしれません。ご了承ください。


──少年は転生者だった。


 日本で死んだその青年、神崎幸は自身を女神を名乗る女から2度目の人生を貰った。


 その魂に女神の祝福を宿した少年は生まれた家であるアルバート家でスクスク育ち、5才を過ぎた頃にはあらゆる分野で頭角を表す麒麟児として注目されていた。


 剣を使えば騎士すら伏せ、魔法を使えば周りが目を見開く…大人たちは彼に期待し、将来この国で名を残すであろう少年を持ち上げた。



 だが、その幸せが長くは続かない。


 14歳の誕生日、この世界では成人として認められる年齢になったその日に事件が起きた。


 その少年の体に複数もの黒い斑点が生まれた。その斑点を見た瞬間周りの人間は少年への態度をガラリと変えてしまった。


 今世の母は泣き崩れ、それを父は支えながらその少年を睨みつけた。兄は恐怖をない混ぜにした瞳で後退り、妹はあらゆるものを投げつけるという明確な拒絶。彼の専属メイドだった少女もその日に辞表を出して辞めてしまった。


 その少年に現れた黒い斑点は言わば“呪い”魔力を蝕み、果てには身体さえも蝕み始める解呪不可の呪い。


 世界中に勢力を伸ばす聖協会ではその呪いは“特級”認定されており、見つかれば抹殺対象という慣例が出されている。


 家を追い出されなかったのはまだほんの少し残っていた親から子への愛か、はたまた哀れみかともかく家を追い出されること自体はなかった。


 だが家族は全員目を合わせることすらなくなってしまったし、生まれてから続けてきた魔力操作すらも出来なくなってしまった。

 少年はまた何もできない前世の自分へ戻ってしまった気がした。前世では大して努力もせずに簡単な方へと流れていき、目立つ挫折もなく死に、転生してから貰った才能を活かすことしか出来なかった少年は人生初めての挫折をした。


 少年は縋るように何度も魔力を動かそうとした。だが、魔力はもう動くことすらない。何故ならもう動かせる魔力すら無くなっているのだから。


 呆然と、未だ状況すらうまく飲み込めていない少年は剣の鍛錬をしようとした。剣を持ち上げ、振ろうとしたところで、


─激痛


 その少年の手のひらには激痛が走った。思わず剣を手放して蹲る、そしてゆっくりと手のひらを確認すると皮が捲れ上がり、血だらけとなった手のひらがあった。


 少年はひっ…という悲鳴を上げ、尻餅をついてしまう。貴族の家でぬくぬくと育った少年は未だ大量の血すら見たこともない子供だった。


 メイドに頼み事さえできなくなった少年は血濡れた手のひらを下手くそな手つきで包帯を巻く。応急処置がなんとか終わった少年は夕食を食べる気すら起きずにそのまま眠ってしまった。



 少年の日々は輝かしいものから酷く醜い怠惰なものへと変わってしまった。だがその生活を責めるものは誰1人もいない。誰1人少年に関わろうとしないのだから。


 そして何日か過ぎた日たまたま少年は両親の会話を聞いてしまった。

 その内容としては少年のことを教会に引き渡すというものだった。つまり、少年を見捨てる…という会話だった。


 初めは耳を疑った。あんなに自信を愛してくれた両親が少年を殺そうとしているなんて誰でも初めは疑うだろう。だがその話を聞いているとだんだん現実味を帯びていく。


 何日後、いつの時間帯、規模は、家への影響は…などの様々な話が交わされている。


 少年は思わず走り出した。


 今はとにかくその家から逃げることだけを考えていた。だからだろうか、単純なことすら忘れて彼は森の中へと駆けていく。


 木々が少年の邪魔をするように聳え立っている。だがそれは決して動いてはいない。走り続けたことにより酸欠を起こした少年の視界が歪んでいるのだ。


 だが少年はそんなこと関係ないとばかりに走り続ける。それは生きたいという心の渇望か、はたまた両親からの愛はもう自分へ向けられていないということを知ってしまったことによる現実逃避か。


 自身の心境すら把握できない少年は走り続ける。森の木のみを食べて空腹を紛らわして進み続ける。とっくの前に足の感覚なんてなくなってしまった。


 ふと、少年は自身の腕を見る。いや、見てしまった。


 少年の腕はもはや斑点があった頃が懐かしいと言えるほどに真っ黒になっており、肌色が覗く…ということもないほどに黒い。


 少年は慌てて自身の体を確認する。するとその黒いものは上半身を埋め尽くし、今もじわりじわりと肉眼で確認できるスピードで下半身にまで迫ってきている。


 少年はまた走り出した。今回の理由は簡単だ。自身を蝕む黒い何かを追い出すためにがむしゃらに走っているのだ。少し冷静になればそんなの無駄だとすぐわかる。だが少年にそんな思考猶予は残されていない。


 少年にあるのは『逃げなくちゃ』という心のみである。


 家を出て太陽が沈み、月が昇るのを何度経験したか…。少年にとってはもうそんなことすらわからなくなってきた。視覚が蝕まれてきているのだ。


 なんとか足を前に出すという行為を繰り返しているが少年の体はあっさりと限界を迎えた。ぱきりという音を立てて少年はその場に崩れ落ちる。


 何事かと自身の足を見てみると黒くなった足が脛の辺りで90度に曲がっており耐性がないものには直視すら難しい惨状が広がっていた。


 完全に骨折だろうが、蝕まれた触覚と足の麻痺によって痛みを感じることは一切なかった。そして、少年がそれを見て慌てるということさえもなくなった。


 少年の意識は凪を作り出しており、何も感じないままに木を背もたれにして座った。


 少年は自身の死をなんとなくではあるものの感じていた。人間は一度経験したものを感覚的に覚えているもので自分は眠った後、2度と目が覚めることがないと察知した。


─サク


 突如、前触れもなく現れた影は少年の正面に立ち、どこか興味深そうな面持ちで少年を見つめている。


 少年の視界で見えたその人影から少年は女性であると察した。


 どうしてこんなところに?という疑問などが普通は浮かんでくるだろうが、今の少年の状態ではそんなことを考えることすら無い。出来ない。


「……酷い呪いね」


 どこか蠱惑的で静謐さを醸し出すその声は憐れみを含ませ、その少年に向けられた。


 すると次の瞬間、地面から青白い粒子がフワフワと舞い上がる。魔力だ。それも、魔力を持っていない人間が可視化できるほどに凝縮された魔力。


 その魔力は少年の周りで円環を描いて思わず目をつぶってしまうほどの光を放つ。すると先ほどまでぼやけていた視力が戻っていることに気づいた。


「一時的なものよ。でも、お話くらいはできるでしょう?」


 少年はその声の主人へと改めて視線を向ける。黒いドレスを着ている事がわかるその女性はそのまま話を続けた。


「あなたには今呪いが掛けられているわ。それを解くには…そうね、まあ面倒だけどできるわ」


 少年はそれを聞いて喜ば……なかった。なぜなら少年には戻る場所がないから。自身の家族には拒絶され裏切られた。それが酷く醜いものに見えてしまったのだ。戻ってもどうせ始まるのはお互いの顔色を伺い続ける家族ごっこ。そんなの失ったも同然であろう。


「あら…?喜ばないのね。家族の元に戻りたくないの?」


 少年は首を縦に振る。あそこに自分の居場所はない。


「ふーん……じゃあ、貴方はどうしたいの?」


 どうしたいの。そう聞かれて少年は初めて心の奥底にあったものに触れ出した。



──生きていても意味がない。/じゃあ何故逃げ出した?


──大事なものも全て失った。/じゃあ俺は何に縋りついているんだ?


──もう死んでしまおうか。/じゃあ、何故ここまで来たんだ?



……簡単だ。


─俺は、



「─生きたい…」


 みっともなくても、醜悪でも、意味がなくても、裏切られても、悲しくても、苦しくても、全てが嫌になっても、体がボロボロでも、泥水を啜っても、這いずってでも、何があっても…。


 俺は…!


「俺は、生きたい…!!それが、どんなに醜くても!恥晒しでも!生きていたい!!!」


 陰で顔が隠れた女は笑う。何か面白いオモチャを見つけた子供のようにどこか無邪気ながらも蠱惑的な微笑みは少年に寒気を与えるには十分だった。


「……貴方、良いわね」

「……」

「気が変わったわ。貴方、私の犬になりなさい」

「……。犬…?」


 予想外の女の言葉に少年は思わず復唱する。


「そう、犬。真っ黒の私の“番犬”よ。貴方は番犬として私を守りなさい。そうしたら、この私が“飼い主”として貴方を守ってあげる。どう?」


 真っ黒というのは少年を蝕んでいる女が呪いと言ったアザの事だろう。そこから連想したと言うのはなかなか縁起が悪そうだ。


 少年の答えは決まっていた。どうせ、このままだとのたり死ぬだけだ。

 ならば、握ろうではないか。例えそれが悪魔や邪神の手であろうと手を取って生き延びてやる。


「答えは決まっているようね。それじゃあよろしくね?“私のわんちゃん”」


 彼女の顔に刺していた影が月明かりによって鮮明になっていく。

 その少女はまだ少し幼さを残しつつも将来を容易に想像できる美しい美貌を持ち、鮮血よりも濃い紅の瞳を少年へ向けてくる。差し出された手の反対の手で、絹糸のような濡羽色の髪を耳へかける仕草は妖艶だ。


「…ああ、よろしくお願いします。“俺のご主人様”」


 

 その日が後に世界すら、否、神すら揺るがす事になる2人の男女の出会いであった。




 魔女な師匠と転生者が全てを蹂躙す〜神から貰った祝福は呪いでした〜



 


 


 


 




 魔女で師匠でご主人様なヒロインを書きたいと言う欲望から始まったこの小説。


 完全に見切り発車です。企画もクソもありません。

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