Episodes of ”Laziness”
めんどくさい
傘をさして歩きながらそうつぶやいた俺の背後に、ソレは現れた
なにが面倒なの?
やけに響く声でソレは問う
仕事さ
俺はけだるそうに、振り向くこともせずに答えた
つまり、労働?面倒なのに、働くの?なぜ?
ソレは不思議そうに俺に問う
生きていくために、金が必要だからさ。
答えて、不審に思った俺は、ようやく振り向いた
ソレの髪は、先が赤い紫色
ソレの翼は、先が黒い純白
ソレの瞳は、赤で青
頭上に浮かぶ光の輪は、点滅している
異質だと、一目見ただけでわかるソレに、俺は返事をしてしまっていた
ねぇ、なんで生きるの?
ソレは問う
日々生きることで必死だった俺は、その質問に答えられなかった
ねぇ、なんのために生きるの?それすらわからず生きるために働いて、何になるの?
ソレは雨なんてないと錯覚するほどはっきりと見えた
めんどくさーいなー
はたらきたくない ´Д`
めんどくさーいなー
でもはたらくよー`・ω・´
めんどくさーいなー
なにをするにも @ー@
めんどくさーいなー
おかねはひつよう ¥▽¥
本来、恐怖を覚えるはずだったのに
マヌケな歌を歌い始めたソレに、俺は笑みを浮かべた
見えなかったはずの顔から、表情を感じ取れた
めんどくさーいなー
でーもときどき ?~?
めんどくさーいなー
つかれちゃうよね ´・ω・`
今思うと、ここで走って逃げるべきだったのかもしれない
生きていくのに
必要なモノは?
色々あるけど!
その言葉と共に、俺の住んでいるアパートの扉、クローゼット、冷蔵庫が脳裏に浮かんだ
3つの扉が徐々に開き、光が差し込んでくる
ここでようやく、俺は恐怖を覚えた
背を向けて走って逃げる俺の前に、ソレは再び現れた
ねぇ、なんで生きるの?
ソレは再びそう問う
正面にソレ、背後と左右に扉があり逃げる事すらできなくなった俺は、やけになって叫ぶ
知らねぇよ
強いていうなら、死にたくないからだ
その答えは間違っていたのだろうか
次の瞬間、光が満ちて、ソレも扉も消えていた
ホッとため息をついて取り落とした傘を取りに戻ろうと振り向いた俺の目の前に、ソレはいた
キミの望みは、働かずに生きて、生きて、そして死ぬこと、そうだよね?
目が合った瞬間、ぶわっと冷や汗が出て、全身の鳥肌が立つ
先ほど、瞳は赤と青と言ったが、間違っていたようだ
今までの瞳はピンクと水色で、今が赤と青
血のように鮮明な赤と、深海のように深い青
俺はそれに飲み込まれるような錯覚を覚えた
フッと笑ってソレは消えた
世界に大きな影響を与えて
だから俺は、誰よりも早く、そして誰よりも深く潜った
幾度の死線を乗り越えても、あの瞳の赤を超えない
人に知られていない、海中にあった最後の一つに、俺は潜っていた
どんなに深く潜っても潜っても、あの瞳の青を超えない
俺が、最後のダンジョンの最奥で見たのは、あの時のソレだった
傷だらけの俺に、それは問う
ねぇ、なんでここまで来たの?
俺は胸を張って答えた
お前に再び会うためさ
ソレは首を傾げた
ねぇ、なんで生きるの?
俺は笑みを浮かべて答える
お前に再び会うためさ
それは不思議そうな表情で問う
ねぇ、ダンジョンは面倒?
俺はフッと笑って答える
あぁ、面倒さ
ソレは、悲しそうな表情をした
だが
俺の言葉に、ソレは首を傾げる
退屈では、無かったぜ
そう言って剣を抜き、切りかかった俺を、ソレは容易く上下に真っ二つにした
倒れ伏した俺は、最後に一言、つぶやいた
だから、もうダンジョンは要らない
その後は知らない
死んだからね
一つ言うとしたら・・・口は災いのもと、かな?
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