頑張ってる形跡がある。でもこれじゃあ駄目だよ、カ○ジ君。ダメダメだぁ!!下手くそだぁ!!
この世界には『騎士』と言う職業がある。
彼等の役割とは私達が『魔女』を守る為の『騎士』だ。
正直、単体で全線に出れる『魔女』は少ない。殆どが皆無と言っていい。
私はかなり稀少な存在になる。
多くは、楓さんの様に空を飛ぶことしか出来なかったり。何かを作ったり、修復したりすることしか出来ない。
闘うことが出来る『魔女』も『魔術』一つを行使するのに面倒な手順を踏まなくてはならないのが常だ。
魔方陣を書いたり。長い呪文を唱えたり。
つまり『魔術』一つを行使するのにも時間がいる。そんな時に『魔女』の盾となるのが『騎士』の役目である。
その上で『騎士』が『魔力持ち』である場合。ある特定の条件を満たせば『魔女』と『騎士』同士で魔力の補助を行うことが出来る。
これは単純に魔力の出力が上がるので良いことしかない。戦闘だけでなく。魔術の実験スピードも上がる。
欲しがる『魔女』が大勢出てくるのは自明の理だ。そうなってしまったら大変。下手したら、本部の勢力図とかも変わってしまうかも。
「……はぁ、本部が滅茶苦茶になるのも頷けますね」
「まあ、私は運搬係ですし、知ったこっちゃ無いですけどね」
そうなるかな?
「……一気に沢山運べるようになったりしないんですか?」
「そんなに沢山『遺物』は出ませんし。巨大な『遺物』が出たら複数人で運ぶのが前提なんで大してかわりません」
ああ、なるほど。
確かに、それだと『魔力』の供給は大して関係無いのか。元々、お互いに協力関係が出来てるんだから、わざわざ『騎士』を欲しがる理由もないのか。
「……じゃあ、運搬係達は高間の見物ですね」
「これが、そうでも無いんですよ。現れた『騎士』達がこれはこれは美少年達でね。運搬係も血眼になってますよ」
馬鹿馬鹿しい。
私は思わず溜め息が漏れてしまった。
「本当に、はぁって感じですよ。戦闘班からは運送班はすっこんでろって言われて。コッチも売り言葉に買い言葉で大喧嘩になっちゃってるんですよ」
「……どこもかしくも、そんな感じですか?」
私の問いに楓さんが溜め息を吐きながら頷いた。
「だから、有栖ちゃん。本部に戻ってきてよ~ あの大惨事を納めてよ~」
「いやです。そう言うのが嫌で巡回係になってるんですから」
楓さんが腕を絡めながら私にすり寄って来たが、それを押し退けて彼女の持つタオルを奪い取る。
「……一応『騎士』と言う人材は貴重なので、ろくでもない事にならないで欲しいですけどね」
「へへへ、そうですけど。多分、ろくでもないことになりますよ。ろくでもない奴等が彼等に目を着けてますので」
見ると、楓さんが私の裸体をろくでもない眼差しで眺めている。
とりあえず、スケベ女は無視して、ささっさと身体を拭いた。
「……それじゃあ、ぬいぐるみの件は頼みますからね」
「はい、確かに承りました」
そう言うと彼女は箒杖に股がると、フワリと浮かび上がり、大空へと飛んでいった。




