☆ヘルニアの話をしてるから、私が二十にも関わらずぎっくり腰を患った時に書いた小説だと思うけど、日付から察するにちがう、なにこれ?
ーーああ、哀れな魂よーー
ーー起きなさい起きるのですーー
んがッ!? もう朝? ううむ、最近本当に寝付きが悪くなったな。
まったく、寝付きが悪くなったなら悪くなったなで、起きた瞬間身体バキバキで腰が痛いし。
なんか、部屋も臭い! 臭いよ! 死んだ魚の臭いがする! 誰か部屋のどっかでマグロの解体でもした!? 止めてよねもう!
ーーあ、貴方は本当に哀れな魂ですねーー
え? 貴方はどなた?
一体、なにをしている方ですか?
何やら、哀れ哀れと言われ、その方向を見るとそこには絶世の美女がいた。
六つの翼に、まるで後光が射すような神秘的な輝き。て言うか実際に後光が射してる。そして、その後光に負けない輝きを見せる金髪の長く美しい髪。
そんな、彼女は俺を見ると優しく微笑んだ。
ああ、まさに女神だ。これは女神と言っていい。
今年中44才。結婚もしてない、勿論妻子持ちでもなければ、子持ちでもない。なのに健康は損ない。持っているのはヘルニアと痔。最近部屋がマグロの死体の臭いがする。
こんな俺には優しく微笑んむ美女がいるとすれば、それは女神かロマンス詐欺を仕掛けてこようとする詐欺師かのだちらかだ。
流石の射してるも翼を生やすことは無いだろうから、女神だろう。
ーーも、もう止めて下さい!! 聞いてるこっちが辛くなって来ました!! 哀れとか言ってごめんなさい!!ーー
そう言うと、女神はこちらに向かって頭を下げた。
ぶっちゃけ、それはそれで我ながら情けなくて悲しい。止めて欲しい。本当に哀れなんだな、俺。ってなっちゃう。
ーーご、ごめんなさい!! 悪気は無かったんです!! なんか、雰囲気的にそれっぽいこと言って見たかっただけなんです!!ーー
ええ? 本当? ヘルニアだから哀れなとか思ったんじゃないの?
ーーいえ! 違います違います!! 本当に雰囲気とか勢いで言ってみただけです!!ーー
ほーん、まあ、ええわ。それで女神さん、貴女は本当に女神でいいんですか? それと、なんの様なんですか俺ん家で?
ーーここは、貴方の家ではありません。良く回りを見てください。そして、自分の姿、形を今一度確認して下さい。
ん? なにを言ってって……
え? ええ? えええええええぇぇぇえぇ!!
な、なんじゃ、こりゃぁぁぁぁぁ!!
ま、周りは真っ白やし!! 俺は身体が無いやんけ!! やんやこれ!! どないなっとんねん!!
ーーあ、貴方。驚くと関西弁が出るんですねーー
いや、これはなんちゃって関西弁です。驚いた時にこうやって必要以上に大袈裟なリアクションすると、帰って冷静になれるんです。
ーーこ、こわ! い、いきなり冷静になるんですねーー
いや、まあ。ここまで来ると帰って冷静になりますわ。
そんで、ここはなんなんだいビューティフルガール? 俺の夢、マイドリームって所かーい?
ーーなんでいきなり昔のお笑い芸人みたいなしゃべり方になるんですか?ーー
そんな事はいいから、ここはどこか教えてくれよ。そして、一緒にトゥギャザーしようぜ!
ーーそれ、言いたいだけでしょ。トゥギャザーってーー
ばれちゃったかい? ならしょうがない。ならばここがどこか速くティーチャーしてくれるかい?
ーー態々、教えるをティーチャーって言い直さなくて良いですから。それにティーチャーって先生意味で、教えるって今じゃないでますからーー
そんな細かいことは気にするなって! はやく、ティーチャーしてくれよ!! ビューティフルガール!!
ーーはあ、わかりましたーー
ーーここはーー
うんうん、ここは?
ーーここは神界ですーー
ふんふん、神界。なるほど、なにを言ってるのさぁ!! やぶからスティックに!!
ーーいや、これは本当の話です。貴方は大地震により起きた倒壊に巻き込まれ死んでしまったんです。そして、魂のみ、この神界に連れてこられたんですーー
ほほう、やぶからスティックだねー!!
僕がデッドエンドしてたなんてー!!
アンビリバボー、信じられへん!!
ーーこれは、本当です。信じて下さいーー
……ま?
ーーま、ですーー
……ま、まあ。正直、そんな気がしてました。死んだんだろうな~ って。
ーーはい。貴方は死にましたーー
はあ、そうですか。じゃあ、俺はこれからどうなるんですか? 天国に行けるんですか? 地獄に行くんですか?
ーーええ、それが本題なんです。まずは平行世界の話をしましょう。平行世界。ルー的に言えばパラレルワールドですねーー
いや、そこはルー的に言わなくてもわかりますので普通に説明してください。て言うかパラレルワールドは普通です。ルー的に言ってません。
ーー今、平行世界の一つに消滅の危機が迫っていますーー
あれ!? もしかして、無視された?
ーー何者かが世界の均衡を乱し、世界をデストロイしようとしてるんです。そして、今。その影響が貴方の世界にも起きたのですーー
いや、絶対無視したよね?
ーー今、貴方の世界の時間を止め。なんとかデストロイまでの時間を稼いでいますーー
おいおーい! 女神様ー!
無視しましたよね!?
なんなら、現在進行形で無視してますよねー!
ーー貴方には、件の平行世界に行きデストロイの元凶をパージして貰いたいのですーー
ええ!? パージって!? ええ?
ルー風に言ってるから緊張感ないけど、結構凄いこと頼んでますよね!?
な、なんで貴女が行かないんですか!? 貴女がパージすれば良くないですか!?
それに、なんで俺なんですか!? ヘルニア持ちですよ!? 部屋がマグロの死体の臭いがするんですよ? 自分の部屋も救えない奴が世界を救える訳ないじゃないですか!?
ーー私は世界の時を止める為に力の殆どを使ってしまっているのです。なので、私に出来ることはもう貴女に世界の未来を託すことしか無いのですーー
いや、でもヘルニアですし。部屋は死んだマグロの臭いがしますし。
ーーそれは安心して下さい。貴方を平行世界に転生させるにあたり、新たな器を用意します。ヘルニアもマグロ臭いのも無くなりますーー
あ、ああ、それは凄い。異世界転生万歳って奴ですね。
い、いや、でもなんで俺なんですか?
ーーそ、それはーー
な、なんで口ごもるんですか?
ーーいや、その被害を最小限にするタイミングで時を止めたので呼び出せるのが貴方しか居なかったんですよーー
それはどういうこと?
ーーおめでとうごさいます。貴方が第一死人です。そして、今のところ唯一の死人です。ってことですーー
はあ? つまり。どういうことだってばよ?
ーーつ、つまり。初めて死者が出たタイミングで時を止め。その死者の魂を呼び出したんです。それが貴方だったんですーー
ほ、ほほう。
よ、よくわかりましまた。
ーーそうですか。ありがとうございます。では!ーー
ちょちょちょーい!! まてまてまて!! まだやるとは言ってない!! そ、それに万が一、俺が断ったら次はどうするつもりなんですか?
ーーまあ、一旦時間を進めて誰かが死んだタイミングで時を止めて死んだ人の魂を呼び出して。その人に頼みます。ただ、かなり力を消費するので色々と弊害がですーー
弊害ですか。具体的にはどの様な弊害が出るのでしょうか?
ーー世界が滅びますーー
うわ! ズル!! それ言われたらわかりましたって言うしかないじゃん!! なにこれ!! こんな世界なんて滅びちまえ!! って、毎日の様に思ってたけど、いざそのチャンスが来ると気分最悪。
なにこれ、ヤバッ!?
ーーじゃあ、行ってくれますか?ーー
う、ううぅ……
正直ヤダぁ……
ヤダけど行くしかないかぁ……
ーーじゃあ、行ってくれますね!!ーー
あ~~!! はい、わかりました!! 行って来ます!!
ーーはい! それじゃあ、第三世界。白雲の森に行ってらっしゃい!!ーー
ええ~~!?
ノリ軽くねぇ~~!?
ーー女神としての力を貴方に…… いや、貴女に授けます。その力を上手く使い。どうか世界を救って下さい!!ーー
その瞬間、無いハズの身体が浮き上がり、何処かに吹き飛ばされる様な感覚に襲われた。そして、それと同時に意識も何処かへと吹き飛ばされた。