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転生王子15

 悪夢のような夜が明けた。


 一行の心情とは裏腹に空は雲ひとつ無い快晴。それと打って代わり、俺達は何をすれば良いかと言明するばかり。

 白の師団に助けを求めるとは言った物のどうすれば良いのか、何処に行けば良いのかさっぱりわからない。


 だが、仕方無い。黙っていても何も始まらない。恥をかこうがなんだろうがやってみなければ。


「すいません、アルザックさん。白の師団の拠点への生き方ってわかりますか?」


 こう言うのはアルザックさんに聞いた方が良いだろう。年長者だし、この分知恵も経験も豊富だろうから。

 

 見ると、アルザックさんはおもむろに地図を取り出してこちらに見せて来た。そこには大きな大陸が描かれていた。

 見覚えがる『ウィッチナイト』の舞台となっている大陸。《アイゼン大陸》だ。


「我々が居るのがここです」


 そう言うとアルザックさんが大陸の真ん中辺りを指示した。そして、その指はゆっくりと下へと移動していき大陸の一番端まで辿り着いてしまった。

 つまり……

 

「ここが白の師団の総本山『ホワイトロック』のある地です。徒歩で少なくとも半年は掛かります……」


 思わず苦い顔をしてしまう。


 半年も掛かる。それは致し方ない。しかし、問題はその半年の間にどれだけの仲間を集められるかが問題なんだ。

 生き残った騎士達と連携する為にも色々と動かなければならない。『ホワイトロック』まで行って、助けを求め、生き残った騎士達とも協力関係を築く。


 俺一人ではどうにもならん。


「王子…… 王子が『ホワイトロック』へ向かって下され」


 アルザックさんが不意に口を開いた。


 俺は思わず「え?」と言いそうになったが、それよりも先にアルザックさんが口を開いた。


「生き残った騎士達との連携は私にお任せ下さい。この老骨、騎士として長く生きただけあって、多くの騎士と顔馴染みとなっています。もし“黒の刃”が紛れていても見抜いて見せましょうぞ。それに王族である王子が『ホワイトロック』へ直々に赴けば彼方も無下には扱わないでしょう……」


「……わかりました。そうしましょう」


 俺がそう言うとアルザックさんは静かに頷いてみせた。そして、俺達は視線を他の騎士達へと向けた。

 一堂は俺達の様子を見ていたらしく、静かに頷いて返答を返したくれた。そして、その様子を満足そうに見たアルザックさんは力強く頷くと騎士達に向かって口を開いた。


「よし、方向性は決まった。次は隊の構成だが。ラッド達はわしと共に生き残った騎士達との連携を進める。そして、王子に

姫様、アイリスは『ホワイトロック』へと向かい。助けを求めに行く。異論ないか!?」


 そうだな、先ずそれで間違いないだろう。


 妹は間違っても戦場に連れていくことは出来ない。出来るものならば『ホワイトロック』に匿って貰いたい。そして、そうなると妹は『ホワイトロック』へと向かわなければならない。必然的に俺と進む道は同じになる。そして、妹の世話を出来るのは誰かと問われるとアイリスにしか任せられない。

 そして、騎士としての力量をバランス良く分けるとすると、結果的にこうなる。


「問題ないでしょう。そうと決まれば直ぐに出立しましょう。アイリスさん、妹を頼みますよ」


「は、はい!! この命に替えても守ります!!」

 

 アイリスが背筋を伸ばしかしこまった様子で答えてみせた。そして、俺はその横にいた妹に視線を向ける。

 こう言う時にどうしたら良いかいまいちわからない。


「妹よ。少しの間、旅をすることになるが大丈夫か?」


 俺がそう言うと彼女は少し不機嫌そうな顔を浮かべてみせた。

 

 なんだろうか。やはり、旅は嫌なのだろう。まあ、仕方あるまい。今まで城で暮らしていたんだ、突然野に放たれれば困りもするだろう。

 

「お兄様!! 私を甘く見ないで下さいな!! 私は国の危機に四の五の言う愚か者ではありませんよ!!」

 

 そう言うと彼女は頬を膨らませて見せた。

 その可愛らしさに思わず笑みが溢れてしまう。


「そうか、それは良かった。では行くぞ……」


 俺は自分に言い聞かせる呟いた。

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