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転生王子14

「国には父も母もいるんだ!! 見捨てられる訳があるものか!! そんな、判断を出来る者がいるとすればそれは人ではない!!」


 ラッドは切っ先をこちらに向け、今にも切り掛かってきそうな形相を浮かべている。


 その余りの剣幕に思わずたじろぎそうになる。


「この大馬鹿者がぁ!!」


 その瞬間、アルザックの怒号が夜空に響いた。

 その余りの怒号に剣が、大地が、身体が震えた様にすら思えた程だった。しかし、当の本人であるアルザックは尚も関係無しにと口を開いた。


「家族がいるのは王子も同じだ! しかも、王子は陛下を、父上を失っておるのだぞ!! その上で出した答えを貴様は人ではないと愚弄するのか!!」

「……!!」


 思わずラッドがハッと表情を変える。そして、俺も自分の事の癖して、今頃確かにとハッとしてします。そう言や、陛下って事は俺の親父なのか……


 そんな、頓珍漢な事を考えているとアイリスがアルザックと共に諭すようにしてラッドに語り掛けた。


「誰が本物か、誰が『黒の刃』か、真偽を判断するのはこの状況から見ても非常に困難です。今、戦をすれば、これに似た状況が戦場で起こります。そうなってはこちらにも大きな被害が出てしまう」

「だが、それでは国に残された騎士達は皆、『黒の刃』に取って代わられてしまうではないか!!」


 そう、確かにその通り。普通ならばそうなる。しかし、こと騎士国家レイムロックは一味違うのだ。そこが一縷の望みにして、最後の希望なのだ。


「ラッドさん。レイムロック騎士はそれ程、弱くはありません。『黒の刃』の凶刃を退ける強者もいるはずです」

「お、王子?」


 ラッドが俺を見て、眉を顰める。今までの冷静さを欠いた表情ではなく、しっかりと冷静さを取り戻した表情をしている。


 大丈夫だ、これなら話が俺の考えが伝わるはずだ……


「恐らく、一月程で大きな人事が有るでしょう。多くの有力者や強者が辺境へ追いやられるはず……」

「……なるほど、仕留められなかった者は外に追いやると言うことか……」


 アルザックが納得したように声を挙げる。俺はアルザックの言葉に頷き、更に言葉を紡いでいった。


「俺達は辺境へ追いやられた者を味方につけ、城を取り戻します。それまでの間、俺達は仲間を募るのです」


 俺の言葉を聞いていく内にラッドの構えていた剣が徐々に下げられていく。見るともう一人の若い騎士は既にその剣を下ろしていた。


「先ずは『白の師団』。彼等に助けを求めます。『黒の刃』と敵対する『白の師団』ならば、手を貸してくれる人間がいるやもしれません」


 いるやもしれないどころか、主人公達と言う心強い味方がいるんですよ。何を隠そう『白の師団』は主人公達が所属する組織ですからね。

 俺の答えにラッドは苦虫を噛み潰したよう顔を浮かべながらも剣を下ろしてくれた。


「ラッドさん、ありがとうございます。必ず、国は取り戻します」

「……約束ですよ、王子。私や家族は最悪どうなろうと構いません。ですが、国と国民達はどうかお救い下さい」

「ええ、この身に代えても必ず……」


 やはり、彼もレイムロックの騎士だ。

 高潔なる魂がその身に間違いなく宿っている。


 一触即発の緊張感が過ぎ去り、一同がほっと胸をなでおろす。そして、暫しの間に気まずい空気が流れる。しかし、そんな気まずい空気をものともせず、アルザックが声を挙げた。

 

「若様。本当に御立派になられた。昔の若様なら、それこそ剣を片手に城に乗り込み、その命を無下に散らしていたでしょう……」

「……そうですかね」


 アルザックは恐らく誉めてくれているのだろうが、正直な所あまり喜べない。どちらかと言うと本来のルクスよりも、臆病な腰抜けになってしまった自覚しかない。


 こんな自分が果たしてルクスとしてやっていけるのだろうか。そう言う考えが頭を過ってしまう。


「現在の状況を理解し。先に起こる出来事を予測し。未来に備える。陛下が持ち合わせて居なかった稀有な才を開花させた。若様が居ればこの闘い十二分に戦えるやもしれません……」

「……必ず、勝ちます」


 そう『ウィッチナイト』の世界では勝った。

 だからきっと、この世界でも勝てる。

 いや、絶対に勝つ。


 そう、俺はルクスの様にはなれない。

 だから、責めて俺のやり方でこの物語を終わらせる。


 思わず、自らの拳に力が入る。


「必ず、勝ちます」


 俺は誓う様にそう呟いた。

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