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転生王子10

 夜の暗闇を照らす篝火が騎士達の鎧を照らす。揺らめく炎の瞬きと共に光沢を帯びた鎧もゆらゆらと瞬く。

 美しく、光沢の有る鎧。とても細かく手入れをされている。しかし、それはある意味ではその鎧が新しく騎士が新人で有ることも意味する。


「それにしても、若様はよく御無事でしたな……」


 俺の横に座っていた騎士が不意に俺に話しかけてきた。その方向を見ると先程までは兜に包まれていた顔を露にした男いた。

 男は自らの兜を、まるで赤子を抱くようにして抱えている。そして、その兜を短刀の柄でコツコツと叩いている。


「ええ、なんとか生きてますよ」


 そうやって、兜の歪みを矯正しているんだ。兜は言わば急所を守る命綱。僅かな歪みはそこから亀裂を産み兜を被る者の命を容易く奪う。


「盗賊や荒くれ者も多かったでしょうに。よくぞ御無事でいらした。その上に私達を助けに来てくださるとは。このアルザック、感服致しました」


 そう言って、アルザックと名乗った男は深く頭を下げた。

 綺麗に禿げ上がった頭部に良く蓄えた顎髭が目につく。年の頃は四十から五十と言った所だろうか。かなり年期の入った騎士に見える。

 彼の鎧もそれを見た目で表すかの様に光沢は剥げており。所々に歪みやへこみが見える。しかし、それを細かく矯正し元の形に近い状態に整えているのも見て取れる。

 きっと、歴戦の騎士なのだろう……


「いえ。こちらこそ、妹を助けていただきありがとうございました」


 そう言って、俺も頭を下げる。


 王族だから「大義であった」とか言った方が良いのかもしれないけど。正直、突然王族の態度が取れる訳もないので普通に接することにした。

 俺のその様子を見て思うところがあるのか、アルザックは少し微笑むとおもむろに口を開いた。


「若様は城を出て変わりましたな。昔は豪快で猛獣のごとき性格をしておりましたが、今はその姿は成りを潜めましたな……」

「ははは、そんな時もありましたかね……」


 確かにルクスはそんな性格だったな……

 確か、荒武者みたいな性格をしていた気はする……


 思わず恥ずかしくなる。全然、ルクスに成りきれてない。既に原作との差違が産まれ始めている。もっと、彼らしく成らなければならないのだろうか……


 そう思い。無意識に頬をかいてしまう。

 そんな、俺の様子を見ながらアルザックが微笑む。


「なに、悪いことでは御座いません。昔の若様は若かりし頃の陛下にそっくりでいらっしゃった。しかし、何処か危うさを孕んだ様な所も似ていらっしゃった。ですが、今はそれも成りを潜めた。大きな成長で御座います」

「……はあ、そう言って頂けると心強いです」


 俺がそう言うとアルザックは満面の笑みを浮かべ大きな笑い声を挙げた。


「何をおっしゃいますか若様! 剣を抜けば昔の猛獣のごとき様は今尚健在! 心強いのはこちらで御座いますよ!」


 その時、向かいに座っていた若い騎士達が身を乗り出して来た。


「そうですよ王子! あの力強い剣裁き、竜巻の様に舞う血飛沫と敵の亡骸! まさに猛獣のような力強さ!!」

「我々を追っていた奴等も恐れを成して逃げて行きましたよ! まさに痛感でした!!」

「まさに一騎当千とはこのこと! 王子が居ればきっとこの難局も乗りきれますよ!!」


 三人の騎士が身を乗り出しこちらを熱い視線で見詰めてくる。良く見ると三人とも若い。鎧の光沢もまだ美しく輝いている。

 恐らく、新人なのだろう。あまり現在の状況がわかっていないと見える。


 まあ、実際は俺も状況を理解しているとは言えないが、少しずつだが現在の状況はわかってきた。そして、現在も物語の進行状況も……

 

 恐らくは、この世界は『ウィッチナイト』の物語。つまり本編が始まる少し前の状態にあるらしい。

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