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転生王子6

「おっと、動くんじゃねぇぞ。もし変な真似をしたら、そのままこれがお前の喉をズブリってやっちまうかもしれねぇぞ」


 公衆便所みたいなログハウスから出た瞬間にそう言って盗賊の一人が俺の目の前に達のナイフをちらつかせた。

 回りを見ると、他に三人の盗賊がこちらを囲っていた。


 と言うことは合計で四人と言うことか……


「へへへ、兄ちゃん。いい剣を背負ってるじゃなねぇか。先ずはソイツを渡して貰おうか……」


 いい剣ね…… 確かにルクスの装備してる大剣を初期の店では売ってないんだよね。しかも、売ると1500タスクになる。結構高いんだよね。因みに普通の剣は700タスク位。剣が二本買えるし、お釣りで薬草とかも買えちゃう。

 RTAとかだと、ルクスの武器を売っ払って主人公の装備を整えるなんて手法もある。因みに見にゲームで釣れる魚が20タスク位。

 

 この金銭バランスがそのままなのかわからないが。この剣はそこそこ高くはある。


「おい! テメェ! 話聞いてんのか!」


 そう言うと、盗賊が俺に一歩近付き喉元にナイフを突きつけて来た。


 その瞬間、俺は口に含んだ水を勢い良く盗賊の顔に吹き付けた。


「ぐえっ!? な、なんだ!?」


 盗賊が怯んだのを確認すると、瞬時に背中に背負った大剣を引き抜き、勢いをそのままに盗賊に思いっ切り振り下ろした。

 意図も容易く、振り下ろされた剣は勢いを止めることなくそのまま地面へとめり込み、一瞬遅れた様に血飛沫が宙を舞った。


 我ながら、自分が恐ろしい程に冷静で有ることに驚く。普通は人一人を殺したら、もっと動揺すると思っていたが存外そうでもない。

 それよりも今は自分が殺されない為に、と言う思考に脳内で埋め尽くされている。


 すると、目の前で二つに別れた人の死体は地面に倒れた込み、血の水溜まりを造り出した。

 その光景を目の当たりにした盗賊達が騒ぎ立て何か言葉を発している。しかし、その声も俺の耳には届いてこない。

 何かを騒ぎ立てていることだけはわかる。

 

 コイツらをどう殺すか、自分はどう生き残るか。

 まるで思考がそれをだけをする為に動いている傾様にすら感じる。


 俺は大剣を持ち上げ、おもむろに居合いの構えを取る。


 何故だか、わからないが自然とそう言う構えになった。

 肉体がそうしろと言ってるかのように身体が自然に動く。


 その時、視線の端で何者かが飛びかかって来た。盗賊の一人で有ることは間違いないが、そんな細かいことは関係ない。そのまま、居合い切りをするかのように剣を横凪ぎに思いっきり振り切り、そのまま円を描くように大剣を振り回す。


 その瞬間、血飛沫が竜巻のように舞い、辺り一面が血に染まった。


 それに遅れる様にして、盗賊達が地面に倒れる音が耳に届く。その音に釣られ後ろを振り向くと、初めて自分がしでかした惨劇を目の当たりにした。


 縦に真っ二つなった死体が一つ。横に真っ二つなった死体が一つ。腹を切り裂かれこぼれ落ちた内蔵を押さえ込む様にして倒れた盗賊が二人。

 後者の二人は息も絶え絶えたが、まだ息がある様だ。

 だが、恐らくこれはもう助からない。


 その時、思わず「大丈夫か」と声を掛けそうになっている自分に気が付く。自分がしでかした惨劇の癖して、何を言おうとしているんだと自分の無責任さと恐ろしさに生唾を飲んだ。


 何故だろう、凄まじく喉が乾く。腹の底から吐き気が込み上げてくる…… 今すぐこの場から逃げだしたい……


「こほっ……」


 その時、乾いた咳が耳に届いた。


 見ると盗賊の一人が血の海に溺れているかのように、苦しそうに咳と血を吐いていた。吐く血が泡立ち、息を吸うにも血が口を塞ぐのか息も出来ないのか苦しそうにもがいている。

 やはり、その瞬間にも「大丈夫か」と声を掛けそうになる自分がいる。


 もう、この人は助からないと言うのに……

 俺が出来ることなんて、もう殆ど無いと言うのに……


 だけど、そう……

 まだ、俺に出来ることがあるなら、それはするべきだ……


 俺は重く鉛のようになった足を上げ、彼の元へと歩みを進めた……

 そして、剣を振り上げ、俺は彼の首を落とした……


 俺は今日、四人の人を殺した……

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