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転生王子4

 とても可愛らしい少女が目の前で花を摘んでいる。

 金髪の緩く波を描いた髪に金色の瞳。その優しい瞳は笑みを浮かべながらこちらを見る。


 そして、今しがた摘んだ花で作った冠を嬉しそうな笑顔で俺に見せてくれる。

 俺はおもむろにそれを手に取ると、優しく彼女の頭の上にその冠を乗せてあげた。すると、彼女は恥ずかしそうに笑った。


 その光景を見た俺は思わず頬が綻んだ。

 そして、その瞬間、覚醒する。


 そう、夢の世界から覚め現実の世界へと……




 酷く肌寒い風に身を震わす様にして俺は目を覚ました。突き抜けるような青空は全てを吸い込むかのような夜空に姿を変え、そこには幾千幾万の星が浮かんでいる。


 夢を見た。そして、起きたらまだ夢の中だった。今の俺の感情はそんな所だ。決して、自分が異世界に転生してしまった。しかもゲームの世界になんてことを信じるつもりはない。

 

 もしかしたら、自分はあの瓦礫に潰されたが命辛々救出され。今は緊急治療室の中で、沢山の管に繋がれ眠っているのかもしれない。

 そして、その眠っている俺が見ている夢がこの世界なのかもしれない。


 まあ、だからと言ってどうすることも出来ない。


 この世界で死ねば俺は目覚めることが出来るのか。それとも最後の命の灯火が消え現実の世界でも死んでしまうのか。

 それとも、もはやこちらが現実なのか……


「それにしてあの夢は……」


 自分で呟いて不思議な感覚に襲われた。夢の中で夢を見る。なんだか不思議な感覚だ。それにあんな光景はゲームの中で一切出てこない。


 俺による完全なる妄想の産物。

 あるいはこの肉体が見せた何かか……


 恐らく彼女はルクスの妹。推測するに現在は『死の聖歌隊』に政権を握られた王宮で軟禁されている。正直、彼女についてはよく知らない。なにせストーリー上では主人公の前に姿を見せることがないのだ、だから知るよしもない。


 いや、彼女の事を知らない所か俺は何も知らない。


 今がストーリー上ではどの段階なのか。ここが何処なのか。俺は何処に行こうとしてるのか。俺は何処をするべきなのか。


 それとも俺はこのまま何もしなくていいのか……

 何もわからない……


 えもいわれぬ不安感が一気に背中にのし掛かる。思わず、これは夢なんだと頭を揺さぶってみる。

 しかし、それと同時にこれがもし夢でなかったならと言う不安に襲われる。もしかしたら、俺にはなにか、出来ることが有るのではないか? なにか、俺がやるべきことがあるのではないか? なにか、やらなければならないことがあるのではないか? 


 そう言う考えが頭から離れてくれない。

 なんなんだこれは……


 思わず俺は立ち上がった。何の宛もない。どこに何があるかも知らない。それでも何かをせずにはいられない。

 

 これが夢であろうと関係ない。

 何もせずに終わるくらいなら、せめて何かしでかしてやろう。


 宛がなくともきっとどうにかなる筈だ……

 だって、冒険ってのはそう言うものだろ?

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