転生王子2
気づけば俺は何処とも知らぬ場所に寝そべっていた。
仰ぎ見る空はどこまでも突き抜けるような青空をしている。
爽やかな風とほのかに香る草木の香りが鼻をくすぐる。
ここはあの世だろうか。
もしそうだとしたら、少なくとも地獄ではない。よかった、よかった。今まで地味ながらも誠実に生きてきた甲斐があったと言うものだ。
取り敢えず、身体を起こし辺りを見渡してみる。しかし、これと言って、ここがどこかを断定する物は別段見当たらなかった。
綺麗にはえる芝は絨毯のように地面を覆っており、少しばかり遠くには木々が見える。
と言うより、俺のいる場所が木々に囲われているみたいだ。
鬱蒼としげる森。と言うよりは、輝く太陽の光が心地よく射し込む爽やかなで暖かな森。と言った感じだ。
太陽の光で暖められた芝の絨毯に心地よい青空。正に昼寝日和を絵に描いたような情景だ。まさに天国と言ってもいい。
送迎バスの予約してない、とかそんなことがどうでも良くなってしまう程の穏やかさだ。
不意に自分のかたわらに置かれた物が目に入った。
それは明らかに剣だった。それも酷く長くデカイ。なんだろう、だんびら、とでも言うのだろうか。それが鞘に納められた状態で置かれている。
少なくとも刀身の長さは一メートルはある。こんな代物、何処の誰が使えると言うんだ。
思わず、その剣を手に取り鞘から引き抜く。そこからは鏡のように磨きあげられた刀身が姿を表した。とても良く手入れされているのだろう、もしかしたら鏡の代わりにすらなるかもしれない。
それにしても思いの外、軽い。
これなら別に振り回すことも出来なくはなさそうだ。
その時、意図せず自分の腕が視界に映った。
そして、俺はその腕を見た瞬間、自分の正気を疑った。
とても逞しい腕。綺麗とさえ言えるほどの美しい筋肉。流線型を描くように膨らむ前腕と太い二の腕。そして、その二の腕からは力強さを見せつけるかの様に血管が浮き出ている。
「なんじゃこれは!!」
その声に驚いたのか森に潜んでいた鳥達が一斉に空へと飛びたった。
それに一瞬、ビックリはしたがそんなことより今は自分の身に起こっていることの方がビックリ仰天なのである。
思わず自分の腕に触れる。
まるでゴムボールの様に弾力性がある。それでいて、ゴムボールよりか感触は柔らかく温もりを感じる。
しかし、そこに力を込めれば筋肉は一瞬にして硬い鋼の肉塊へと感触が変わる。
なんだこれは!? と、取り敢えず。俺の腕でないことだけは間違いない。どうして、これが俺にくっついてるんだ?
その時、先程持っていた剣が脳裏に写った。
その瞬間、急いで剣を手に取りその刀身が見つめる。
先程も確認したが剣は良く手入れされており、さながら鏡の様に磨かれている。その刀身に俺の顔が写るように角度を変えて行く。
まるっきし、鏡とまではいかないがそれは充分に鏡の役割を果たしてくれた。
そして、剣に映った顔は見知った自分の顔ではなく、全くの別人の物だった。
「これは、まさか……」
そして、それは奇しくも俺に取ってはよく知った人物の顔だった。彼は『ウィッチナイト』と言うゲームの登場人物だ。