第22話 目覚める聖女
目が覚めるとそこは何時もの自室だった。
身体を起こそうとすると凄まじい気だるさが身体に重たくのし掛かる。
なんだろう、昨日飲み過ぎたかな? いや、ここ最近は一滴もお酒を飲んでない。て言うか、元々そんな酒が好きじゃないから、飲み会の機会がなければ、酒なんて飲みもしない。
いや、違う違う。
そうじゃない、確か……
「そうだ、アレックスさんは!?」
意識を失う前の記憶が甦り、アレックスの顔が脳裏に浮かぶ。
一体、どうなんったんだ。アレックスは大丈夫だったのか?
「アレックスさんは無事ですよ。今は医務室で休んでます」
ふと声のした方向に視線を向けると一人の修道女が立っていた。
確か、彼女には見覚えがある。アレックスの傷口を押さえていた人だ。
彼女は俺と視線が合うと軽く会釈をしてニッコリと優しげにお微笑んでくれ。
ほんのりと緑色を含む様な長い金髪。同じような色をした大きなタレ目が可愛らしい。そして、特筆すべきは彼女の放漫なボディ。そして、そのボディラインが良くわかる修道服を纏っていると言うことだ……
彼女の顔はそんなの気にすることもない様な純粋そうな表情を浮かべている。
きっと、自分がボディライン丸出しのスケベな格好をしていることも、それを男性からはどう見られているかも自覚していないのだろう。
これが前世の俺ならば何かしら股間がバッチコイしていたのだろうが、悲しいことにバッチコイする物が無いからか全然バッチコナイ。
物凄く悲しい……
彼女は一体何者なんだろうか……
「あ、あの貴女は?」
「私はエクレアと言います。どうぞよろしくお願いします、聖女様」
そう言うとエクレアは仰々しく御辞儀をしてみせた。取り敢えず、俺もベットの上で身体を折り畳む様にして御辞儀をする。
「よ、よろしくお願いします。ところで聖女って……」
「もちろん、アルエ様の事ですよ。もう教会内では噂の種ですよ」
そう言うとエクレアがニコニコと屈託の無い笑みをこちらに向け、パタパタとこちらに近寄って来た。
そして、目を爛々と輝かせながら俺の両手を握り締め、鼻息を荒くしながら口を開いた。
「わ、私。感激しました! 正直、もう駄目だと思っておりました! でもアルエ様は奇跡を起こしアレックスさんを救って下さった! あの時の光景は忘れません!」
「は、はぁ……」
そう言うとエクレアは鼻息を荒くしたまま部屋をクルクルと回りだした。
さながら、幼稚園生のバレエの発表会の様なクオリティの回転を見せながらエクレアは芝居めいた口調で口を開いた。
「部屋を埋め尽くす黄金色の光! そして、その光を纏い出すアルエ様とアレックスさん! そして、みるみる内にキズが塞がっていくアレックスさん! あれはまさしく奇跡! 奇跡以外の何物でもありません!」
「は、はあ……」
思わず、溜め息に似た声を漏らしてしまう。
彼女は本業で言ってるのかな? それとも狂信者かなにかなのかな? もしかして、他の修道女達もこんなやかましい感じなのかな?
そうだとしたら、この先が思いやられるな……