第16話 青い瞳の仲介者
ど、どうしよう……
そう考えている最中、突然まったく違う人物の声が俺の耳に飛び込んできた。
「ほらほらほら!! アレクにアル、二人ともこんな所で喧嘩しない!!」
見ると、アレックス程ではないが背の高い騎士が間に入って二人をなだめていた。と言うより、殆どアレックスをなだめている様に見える。
暫くの間、剣呑な雰囲気が流れたが。仲裁に入って来てくれた騎士のお陰でアレックスは溜飲が下がったのか、一度だけ舌打ちするとアルベルトを睨み付け立ち去っていった。
俺は思わず肩を撫で下ろした、それと同時にアルベルトも臨戦態勢を解いたのか、俺を腰から手を離した。
それにしても危なかった、俺をせいで切り合いとかに発展したらどうしようかと思った……
「ありがとう、レナード。君が間に入ってくれて助かったよ」
どうやら、この仲裁に入って来てくれた騎士はレナードと言うらしい。
確か、その名前には聞き覚えがある、少し前にアルベルトが俺の部屋の前で話してた騎士の名前だ……
ドア越しだったから、顔はわからなかったけど貴方がレナードさんですか。垂れ目と青い瞳がチャーミングですね……
うう、それにしてもアルベルトもレナードも、俺の事が嫌いなのに守ってくれるなんて。何て良い人なんだ。面目ねぇ……
「すいません。御二人とも。私のせいで御迷惑を御掛けして。次からはもっと気を付けて行動します……」
直ぐ様、頭を下げて謝る。
本当に申し訳ない。俺が勝手に息巻いて暴走して、その結果事態を悪化させてしまった。
完全に俺が悪い。
「ははは、良いって事よ。ちょっと前から見てたけどよ。アンタはなんにも悪いことしちゃいねぇよ。そうだろ、アル?」
「ええ、アルエは誠心誠意謝罪しました。悪いことはなにもしていません。だから、そんなに落ち込まないで下さい」
そう言うと、アルベルトとレナード二人が一緒に微笑む。
その二人の優しさに思わず胸が引き締められる。
「で、でも……」
俺がそう言うとレナードが溜め息を吐いてみせた。そして、少し笑みを浮かべると何を思ったのか俺に向かって口を開いた。
「なら一つ。言わせて貰っていいかな?」
「は、はい……」
俺は恐る恐る答えるとレナードを見詰める。そんな俺の事を見て楽しんでいるのか、レナードは楽しそうな表情を浮かべている。
な、なんだろう?
この人も俺の事を嫌いなんだよね、確か……
なんか、罰ゲームとかやらされたりするのかな?
タガメを食べなさい、とか言われるかな?
やだなぁ…… でも、助けてもらったし、やるしかないかなぁ……
そんな事を考えていると、不意にレナードが口を開いた。
「アルエさんよ。助けて貰ったなら、そんな悲しそうな顔はしないで。笑顔でありがとうって言ってくれや……」
はえ? え? この人、本気で言ってる? 貴方も俺の事、嫌いなんだよね? え? 騎士の人達って皆こんな陽キャばっかなの?
思わずアルベルトを見る。すると、アルベルトもこちらを見て微笑みながら頷いている。
ほぇ…… な、なんて良い人達なんだな……
うん、そうだよな……
助けてもらったんなら、ありがとうだよな。
よし……
「二人とも、助けてくれて、どうもありがとうございました!」
俺は出来る限りの満面の笑みだ感謝の言葉を彼等に送った。