第15話 アルベルトとアレックス
「まったく、手の掛からない女性になったと思っていましたが…… とんだ御転婆娘になってしまったようですね……」
そう言った、アルベルトの手にはアレックスの腕が握られている。そして、当のアレックスの手の平は俺の目と鼻の先でビタリと止まっている。
と言うか、アルベルトが止めてくれている。
「ア、アルベルトさん!?」
思わず驚きの声が腹から飛び出す。
そして、それと同時に腰が抜けたかの様になり力が抜けてしまい、そのまま地面に腰を抜かしてしまうかと思った時、アルベルトが俺の腰を抱いて立たせてくれた。
「大丈夫かい。御転婆聖女様」
「は、はい。申し訳ありません……」
俺がそう言うとアルベルトは一度だけ微笑む。そして、笑顔から硬く口を引き締め視線をアレックスへと向けてた。
「アレックス。彼女が酷い態度を取っていた事は間違いない。だが、それは今さっき謝っただろう? 勿論、それで許せとは言わない。しかし、彼女の先程の態度に対する答えが“コレ”だと言うのなら、僕は容赦しないぞ……」
そう言うとアルベルトは、その手に握ったアレックスの腕を握りギチギチと痛々しいまでの音を鳴らす。どうやら、アレックスの腕を潰さんかと思う程の勢いで力を込めているみたいだ。
アレックスを見ると、鬼の様な形相で俺とアルベルトを睨み付けている。
「テメェ、アルベルト…… 随分とアルエと仲良くなってるみたいだな。なんだ? アルエとそう言う関係にでもなったのか!? ああん!?」
「確かにアルエは可愛いからね。そう言う関係になれるものならなりたいと思うのが当然だろうね。特に今の彼女はとても輝いて見えるからね……」
そう言うとアルベルトが爽やかな笑顔をコチラに向けてきた。
そして、それどころでは飽きたらず俺を身体を引き寄せ、俺を自らの鎧に押さえつける様に抱き込みやがった。
思わず呆れてしまう。
そう言う事するから勘違いされるんだよ……
て言うか、他の女の子とかにもこういう態度取ってんの? ヤバくない、流石は王子様。コミュニケーションのスタイルがつよつよだね。
「アルベルトさん。もう大丈夫なんで、離してください……」
取り敢えず、俺はアルベルトから離れようとするが、当のアルベルト本人が俺を離す気が無いらしく全然離れられない。流石は騎士と言うべきなのか、俺の腕力が生粋の女の子だからなのか押しても引いてもビクともしない。
その時、アルベルトが俺の耳元で小さく囁いた。
「余り動かないでアルエ。君を守れない……」
「?」
見るとアルベルトの頬から一筋の冷や汗が垂れている。ふと、アレックスの方を見ると凄まじい形相でアルベルトを睨み付けている。
まさに今にも切りかかって来そうな程の気迫だ……
それにアルベルトは何時どうなろうと対応出来る為にか、俺を抱居ていない方の手を剣に掛けている。
この時になって初めて俺は気が付いた。
思ったよりも、空気がピりついている事に……
しかも、悪いのは完全に俺である……
ど、どうしよう……
そう考えている最中、突然まったく違う人物の声が俺の耳に飛び込んできた。