第10話 本当に嫌われ者聖女様
散歩をするのは良いが俺は思っていた以上の現状に頭を悩ませられる事になった。
すれ違う騎士や修道女達が皆して「うわ、アイツいるよ」「ハイハイ、またアイツね」みたいな呆れた表情を向けてくる。これは嫌われてるを越えて呆れ果てられている。
遠目から俺を見てソロソロと逃げていってしまう人達も居る程だ。
こうも露骨に避けられていると痛感するが、俺の前世はそこそこ人付き合い上手く出来てたんだなと思わせられる。
ぶっちゃけ、人付き合いが得意と言う訳ではなかったが、こんなんになるまで避けられた事はない。
て言うか、こいつはどんだけ好き勝手やってたんだよ……
「これまた随分と嫌われてるみたいですね。私は……」
「ははは、そう言う割りには冷静だね。まるで他人事のようだ……」
そう言うとアルベルトは苦笑いを浮かべ、こちらを振り替える。
他人事ねぇ。まあ、アルベルトの言う通り極論を言ってしまえば他人事なんだよね。だって……
「まあ、他人が私をどう思おうと他人の勝手ですからね……」
「ははは、まあ、確かにそうだね……」
こちらを眺めていたアルベルトは更に苦笑いを浮かべる。
何か思う所があるのかアルベルトは少しの間でこちらを眺めると、再び歩き出した。
まあ、そら嫌われてた女が突然性格変わったら思うところもあるわな。俺だったテコ入れでも始めたのかと思うわ。
俺はそんな事を思いながらも、取り敢えずはその背中を眺めながら散歩に精を出す事にした。
石造りの壁。肌触り良いように研磨されているのか表面はサラサラとしている。
床に敷き詰められた石達も同じように加工されており、所々装飾を施す為か異なる色合いの石を使って模様を造っていたりしている。
かなり手の込んだ造りになっている様だ……
とても綺麗だ……
もし、後の世界までこの教会が残っていたら世界遺産とかになるだろう……
「アルエさん。薄暗いですから、足元を気を付けてください……」
そう言うとアルベルトは階段に足を掛け、こちらに手を伸ばしている。
その格好は正に騎士様。あるいは、まさに王子様と言った所だろうか……
全く、俺も生まれ変わるならそんな王子様みたいな感じで生まれ変わりたかったよ。
「そこまでされなくても大丈夫です。お気になさらず……」
そう言うと俺は階段に足を掛けた。こう言うのを断るのは無礼になるんだろうけど、知ったこっちゃない。階段くらい一人で登れんだよ~だ。
俺の悪口言ってた癖に、なめんのもいい加減にしろ。王子様みたいな顔してるからって調子に乗んなよ~だ。思わず、舌でも出してやろうかと思ったが、流石にそれは止めておいた。
「それなら結構……」
アルベルトはそう言うと笑顔を見せ、そそくさと階段を登り始めた。
て言うか、何処に向かってんだよ。とは思う物の俺は観光気分で辺りをキョロキョロと見渡しながらもアルベルトの後を着いていった。