第4話 俺は私で私は天使?
「聖女アルエよ」
「……はい」
思わず返答する口が重くなる。
だって、そうでしょ?
瓦礫に押しつぶされた事は覚えてるんだ。覚えてるんだけど、その先がさっぱり意味不明、訳ワカメ。
転生したってのもわかる。意味わかんないけど、わかる。もうこの際、そこはわかったと納得する。
しかし、何故に女の子に転生してしまったんだ。しかも、聖女とか言われてるし。意味わかんないですし。お寿司。
「聖女アルエよ。記憶が無くなってしまったのは仕方ない事なのだ。聖女としての力に魂をその身に宿す時。元の人格や記憶の変異は珍しくない。勿論、記憶が無くなってしまう事もな……」
「……は、はあ」
もうわかんないんだけど。
わからん殺しもいい加減にしろよ?
て言うか、それよりもこの屈辱的な構図はなんだ?
現在、すっぽんぽんだった俺は取り敢えず着替える事になったのだが、このジジイはなんの抵抗もなく同じ地下室の同室にいるし。
俺は俺で女の子の身体の恥部を晒しながらジジイの目の前でお着替えと言う地獄絵図を顕現してしまっている。
転生して数分で脱衣プレイならぬ、着衣プレイを体験するハメになるとは……
今回の人生の難易度は相当、変な方向にハードな様だ……
「はあ……」
思わず溜め息が漏れてしまう。
まさか、ジジイの前でパンツを履く事なるとは……
しかも、女物。白のパンティ……
「そう溜め息を吐くな。見事に聖女としての魂をその身に宿すことを成功したんだ。女神メティアナも祝福してくださる。きっと、素晴らしい人生が訪れるはずだ……」
「……はあ」
くそ、ジジイの前でブラジャーをつける日が来るなんて思いもしなかったぜ。男ならブラジャーをつけて挙げるか、外して挙げる立場になりたかったよ。
「ところで私は聖女として何をすれば良いんですか?」
「そう焦るな。お主は記憶を失っておるのだ、当面はこの環境に慣れる事に努めてくれ。聖女としての勤めはそれからだ……」
不便どころか、滅茶苦茶爽快感マックスですよ。肌はピチピチだし、良いニオイするし。身体は柔らかいし、腰も痛くないし。膝も痛くない。肩こりも無い。
記憶もあるっちゃあるし。
この世界の記憶じゃないけど……
取り敢えず、当面は様子見出来そうだし、その間になんとか順応するしかあるまい。
まあ、わからん事だらけだけど。どうにか、こうにか、やるしかあるまい。取り敢えずさっさと服を着てしまおう。
あらま、可愛いワンピース。
純白ですわ!!
清楚な感じが気に入りましたわ、おじ様!!
こんなモンを俺に着せるつもりなのかよ、ジジイ……
いい趣味してんじゃねぇか。いつかそのワシッ鼻を引っこ抜いてやるからな。
「どうだ? その服、君にピッタリだろ?……」
いやいや、そういうことじゃないんだけど……
て言うか、なに当たり前かの様に女の子のお着替えを眺めてるの? 変態なの? 感性ブッ壊れてんの?
もうこの際、どうでもいいか……
俺は取り敢えず、頭から被ってワンピースを被って、袖を乱暴に通してみせた。
……よし、こんな感じで良いだろう。
そんなことを思いながら服を手の平で軽く叩いてみせる。
「うむ、よく似合っている。よし、着いて来いお主の部屋まで案内する。そこで普段は生活しるがいい。後に世話係を寄こす。そいつに細かいことは聞くがいい……」
「……はい」
なんか、よくわからんが、その世話係に色々聞くしかないか。接しやすい人だと助かるんだけどな~




