第3話 埋もれるような地下室
それは胸筋と言うにはあまりにも柔らか過ぎた。
程良く大きく形も良く心地好く重く。
そして美しい過ぎた。
それはまさにおっぱいだった。
恐らく、Eカップ位だった。
取り敢えず、このおっぱいの事は敬意を込めて“童貞殺し”と名付けよう。
よし、我ながら下らない事を脳内で呟いたからか、少し落ち着いて来たぞ。大丈夫、おっぱいがあれば男は生きて行ける。
因みに男の勲章は影も形も無くなっていた。
いたが、心の中に折れない一本の刀的な物があると信じて自らは男であると銘打って生きて行くしかあるまい。
銘は珍宝刀とかで良いだろう。
そんなことを思っているとカーディナルと名乗った老人が心配そうな表情で俺に話し掛けてきた。
「どうした、まさか記憶だけでなく、身体に異変でもあるのかね?」
正直、肉体に問題って言われても。俺には翼がはえてるのと記憶がない時点で大問題だと思うんだが……
まあ、そこはまるで気にしてないから問題とはならんのだろうな……
となると……
「いえ、身体には問題ありません。と、取り敢えず着る物が欲しいなと……」
取り敢えず、すっとぼけとく。
この流れで実は私は中身は男なんです~ オッサンなんです~ 違う世界の記憶があるんです~ と言った所で話が鬼の様にややこしくなるに決まってる。
長い物には巻かれろと言うし。この流れには身を任せることにする。だって、めんどくさそうなんだもん。
「ハッハッハッ!! 身体に問題が無いならなにより! だが、服を着るにも、その翼を仕舞わんと着れるもんも着れんぞ!!」
そんなことを考えていると、カーディナル枢機卿がそう言って笑い声を挙げた。
なんだ、このジジイはやかましいジジイだな……
「なら、この翼はどうやって仕舞うんですか?」
「それは知らん、気合いだ気合い」
意味がわからん。
気合いで出来るもんか!!
思わずそう叫びたくなる。だが、そこは取り敢えず、その場の空気的にそんな事を言える雰囲気ではないので取り敢えず気合いでチャレンジしてみる。
長い物には巻かれろ。流れに身を任せろの精神である。
結果、出来た。
何故か出来ましたわ。
スルスルスル~ キュポン! って感じです背中の中に翼が収まっていった。驚きの収納性である。
「ほれ、出来るではないか」
老人が当たり前かの様な口調で口を開く。
いやあや、なんで出来るんだよ……
もう訳わかんねぇってばよ……
「よし、では服を着てくれ。話はそれからだ……」
「は、はあ……」
どうしよう、全然状況がわかんないや……
ちくしょう、勝手に話を進めやがって……